Vol.5 No.4 2012
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研究論文:マンモグラフィの安全を支える線量計測(田中ほか)−226−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)び厚み、また、線量計内部の構造の違いに起因している。医療現場では、エネルギー特性が電離箱式線量計よりも大きい半導体式線量計が多く使われていることから、このような線質の違いによる校正結果への影響を心配する声が、国内の産業界・学会から挙げられるようになった。この問題に対応するため、産総研ではマンモグラフィのX線の線質に基づいた線量標準の整備・供給に着手した。3 研究開発のシナリオマンモグラフィの医療現場における線量測定の信頼性の向上には、現場で使われているX線の線質に基づいた線量標準の確立は当然のことながら、線量標準を社会に円滑に供給するための体制作りも必要となる。マンモグラフィの線量測定の信頼性向上のために策定したシナリオを図4に示す。社会的ニーズに素早く対応するため、マンモグラフィ用X線の線質に最適化した国家標準器を新たに開発せず、既存の国家標準器の活用による標準の開発期間の短縮化を図った。標準の主な供給先である医療現場での線量評価の不確かさの低減を図るため、実際のマンモグラフィ装置に近いX線場を開発した。また、標準の国際的な同等性の確保に必要な国際比較に参加するため、IEC規格に準拠したX線場の開発も同時に行った。開発した線量標準の校正能力を検証するため、国際比較への参加に加えて、この標準で校正した複数の線量計で実際のマンモグラフィの線量を計測し、それらの評価を行った。マンモグラフィでは線量評価を含めた精度管理がすでに多くの医療現場で行われていたため、この中で利用されているガラス線量計を評価することにより、迅速かつ広範な標準供給を目指した。そのために、産総研は、精度管理で利用されているガラス線量計をそのまま校正する方式の確立に努めた。また、これまでの線量標準供給体制では、校正事業者が所有する標準線量計(二次標準器)の校正を産総研が行い、この二次標準器を介して標準供給がなされていた。図3 電離箱式線量計のエネルギー特性の例線量計A線量計B線量計C(全て電離箱式)校正定数半価層(mmAI)マンモグラフィで主に使用される領域2.52.01.51.00.50.00.951.001.051.10・標準供給までのスピードを重視(最高精度を目指した標準器の新規開発ではなく、既存の標準器を活用した標準の開発)→マンモグラフィ用X線の線質による既存の 国家標準器の補正係数の評価国家標準器(自由空気電離箱)の開発マンモグラフィ用のX線場の開発産総研の照射施設の利用促進既存のマンモグラフィ検診の精度管理体制との連携マンモグラフィ用X線の線量標準の開発校正能力の検証線量標準の供給体制の迅速な構築医療現場におけるマンモグラフィ装置の線量評価の信頼性の向上・国際比較による国際的同等性の確保・実際のマンモグラフィ装置を用いた検証・依頼照射試験の導入・医療現場で利用されていたガラス線量計の 産総研の線量標準による評価・実際のマンモグラフィ装置のX線場に近い標準場の開発(校正距離、圧迫板の設置など)・国際的整合性のあるX線場(IEC規格に準拠)の開発図4 マンモグラフィ用X線の線量評価の信頼性向上に向けたシナリオ

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