Vol.5 No.4 2012
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研究論文:有害化学物質の環境分析法の標準化(谷保ほか)−276−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)議論4 論文の構成(2)コメント(田尾 博明:産業技術総合研究所環境管理技術研究部門)論文の構成ですが、緒言、分析法開発、標準化、化学物質管理への貢献、結言となっていますが、環境挙動の解明の部分が抜けています。今回、標準化が成功したことの理由として、環境挙動解明に関して論文を発表し、国際的に優れた研究をしてきたと評価されてきたことが挙げられると思いますので、環境挙動の解明に関する章を設けたほうがよいと思います。回答(谷保 佐知)第2章の「国際的有害化学物質規制に対応した環境分析技術の必要性とその標準化」の中で、研究要素やシナリオを説明する過程で、環境挙動の解明について大幅に加筆し、環境挙動解明においてこの研究で達成した成果について説明しました。議論5 標準化の必要性コメント(田尾 博明)各化合物(例えばノニルフェノール)の化学式、物性、用途、どのような環境問題を起こしているかを説明し、この問題解決に既存の標準法では対応できない理由、今回の標準化提案を行った理由を記述すると、理解しやすくなると思います。回答(谷保 佐知)環境分析技術の必要性を説明するうえで重要となる、各化合物の用途、環境問題や環境動態についての背景情報を追記し、「標準化」の経緯をより理解していただけるように修正しました。議論6 規格の内容コメント(小野 晃)この論文では国際規格を作成したことが述べられていますが、規格の内容が詳細には述べられていません。国際規格の中で、「Normativeな事項」には何を選択したのか、「Informativeな事項」には何を選択したのかを記載してください。そしてその選択の理由や背景も記載してください。回答(谷保 佐知)議論3のコメント③への対応と合わせて、規格の内容と制定の経緯や背景を記載しました。議論7 標準化の必要性と標準化プロセスコメント(田尾 博明)国際標準化において、基準認証研究開発事業が果たした役割を説明すると、今後、同制度を利用して標準化を目指す人の参考になります。また、今回はISO化が先行し、後からJIS化していますが、その経緯と問題点を説明すると、通常とは逆のプロセスで標準化を実施する人の参考になると思います。回答(谷保 佐知)基準認証研究開発事業で行った内容について追記しました。またご指摘のとおり、この研究では、ISO化がJIS化よりも先にスタートしたため、また、ノニルフェノールのISO化ではすでにドイツが類似の分析方法の規格の策定中であったことから、幹事国との事前調整等が必要でした。これらの調整についても、規格化において重要な過程ですので、その経緯について加筆しました。また、ISO化やJIS化の過程において議論になった課題点やどのような対処を行ったか分かるように記載しました。議論8 標準化に対する公的研究機関と民間企業の関係(1)質問(小野 晃)環境分野ではありがちと思われますが、ある種の規格の作成に対して、関係する民間企業(あるいは関連業界団体)の関心が高くないという現実があります。査読者は、民間企業が関心をもたない分野(あるいは、もてない分野)では公的研究機関が率先して積極的に動くべきであり、国民が公的研究機関に期待しているのはその点だと考えます。このような公的研究機関の役割を踏まえたうえで、環境分野の規格作成における公的研究機関と民間企業との関係に関して、著者の見解はいかがでしょうか。回答(谷保 佐知)地球環境問題に密接に関係する環境分野の標準化では、産業界からの支援が得られにくいこともあり、ご指摘のように公的研究機関が果たすべき役割は大きいと筆者らも考え、この観点から標準化活動を行ってきました。一方で、環境問題等の課題について、いち早く解決技術を見出すことは、産業競争力の強化に繋がるとも考えています。したがって、環境保全の観点だけでなく、産業界の発展に貢献するためにも、今後は産業界とより緊密に連携して標準化を進めていくことが重要と考えています。議論9 標準化に対する公的研究機関と民間企業の関係(2)コメント(田尾 博明)産業界の支援が得られにくい原因の一つは、環境分析法の開発によって新たな環境汚染防止対策を求められる、すなわち産業界にとって負担増となることだと思います。しかし、最近では、環境問題の解決策をいち早く見出すことが産業競争力の維持にとって重要となっています。この課題解決技術の先行取得による産業競争力強化のための標準化は、環境分析法の標準化に産業界からの支援を得るための希望となると思います。この点についても記述するとよいのではないでしょうか。回答(谷保 佐知)ご指摘のように、規格化により新たな対策の採用というイメージから業界団体からの支援が得られにくい状況にありました。しかし、社会的に大きな問題となる前に、早急に対策を施すことが、環境問題の解決策をいち早く見出すことになり、長期的には産業競争力の強化や産業の健全な育成に繋がるため、今後、産業界と連携した標準化が重要であることを記述しました。議論10 規格作成の効果コメント(小野 晃)5章の冒頭にある、「これらの国際規格はどのように役立てられているのであろうか」という問題設定は重要と思います。規格は作ること自体が目的ではなく、どう使われるかが重要だからです。この規格が成立し、国際社会で使われるようになって以後、社会の何がどう変わったのか、その効果は当初狙っていたものと比べてどうだったかを検証することは重要です。規格発行後に実際の効果がどうであったかに言及していただきたいと思います。回答(谷保 佐知)ノニルフェノールの規格は、現時点でドイツ提案により2件、日本提案より1件のISO規格が制定されていますが、ドイツ提案の最初の規格(ISO 18857-1)では総量測定で、ノニルフェノールの各異性体の測定は記載されていませんでした。しかし、日本提案の規格(ISO 24293)において、異性体別分析の必要性が国際的に広く認識されたことから、試薬メーカーで異性体別標準品の販売が開始されました。ドイツ提案のパート2の規格(ISO 18857-2)では、当初パート1と同様に総量測定が想定されていましたが、異性体別標準品が利用可能になったこと、また異性体別分析の重要性から、異性体別測定が加わることになり、より詳細なリスク評価を可能にする分析法になりました。また、近年PFOS/PFOAの依頼分析を受託するほとんどの民間分析事業者は、ISO 25101やJIS K0450-70-10に準じた分析を提供しており、質が高く、相互比較が可能なデータの提供を可能にしている等、この規格により一定の成果を挙げられたと思います。
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