Vol.5 No.4 2012
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研究論文:有害化学物質の環境分析法の標準化(谷保ほか)−275−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)執筆者略歴谷保 佐知(たにやす さち)2006年3月金沢大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了。同年4月産業技術総合研究所環境管理技術研究部門未規制物質研究グループに入所し、残留性有機ハロゲン化合物の分析法開発および環境動態解明に従事。この研究ではペルフルオロオクタンスルホン酸およびペルフルオロオクタン酸類の分析法開発およびISO規格およびJIS規格化に携わった。羽成 修康(はなり のぶやす)2001年3月筑波大学大学院博士課程農学研究科修了。2004年7月産業技術総合研究所環境管理技術研究部門未規制物質研究グループに入所し、ダイオキシン類似物質の分析法開発に従事。2005年10月計測標準研究部門有機分析科に配属。有機標準物質(特に残留性有機汚染物質)の国家標準(NMIJ CRM)開発に従事。トレーサビリティ確保のため、一般供給のCRMだけでなく、JCSS運営には欠かせない基準物質も開発している。この論文では、ペルフルオロオクタンスルホン酸カリウム標準液(NMIJ CRM 4220-a)の開発を担当した。堀井 勇一(ほりい ゆういち)2006年3月茨城大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。同年5月より2年間New York State Department of Health (Wadsworth Center)にポスドクとして在籍。2008年10月より現所属である埼玉県環境科学国際センターに入所し、残留性有機汚染物質の環境モニタリングや動態解析に従事している。現在の興味はカオリン粘土に関したダイオキシンの天然生成について。この研究ではノニルフェノール異性体別分析法の開発を担当した。山下 信義(やました のぶよし)1992年、愛媛大学連合農学研究科環境化学博士課程修了。同年、旧工業技術院資源環境技術総合研究所(現産総研)入所。一貫して環境分析化学分野における新規技術の開発とその応用研究に携わっている。多くの標準規格検討委員、TC147/SC2/WG56コンビナー等、国内外の分析化学技術の信頼性向上のためにさまざまな国際的精度管理試験・研究の統括を行うとともに、多数の国外研究機関と連携し、地球規模の化学物質問題について幅広い応用研究を展開している。新規POPs等検討会委員等、化学物質管理政策諮問会議にも貢献。2010年Highly Cited Author Award受賞(2件)。この研究では総括を担当した。査読者との議論議論1 全体評価コメント(小野 晃:産業技術総合研究所)この研究は、環境中の有害化学物質の分析技術に関する著者らの優れた研究成果をもとにして、国際共同作業をとおして国際規格に結実させたものです。国際標準化を目指した明確なシナリオのもとに、構成的・統合的に研究が行われたことがよく分かる記述になっており、シンセシオロジー誌の論文にふさわしいものです。この論文では、著者らが研究と標準化を一体的に進めてきたことも注目されます。また国際規格が発行された後、この規格が社会の多くの人たちから利用されていることも高く評価されます。議論2 一般読者を意識した記述コメント(小野 晃)シンセシオロジー誌の研究論文は、特定の技術分野の専門家に読んでもらうだけでなく、広く他分野の研究者・技術者にも読んでもらうことを期待しています。今回の論文の趣旨は、幅広い読者に環境分析における国際標準化の考え方と進め方の事例を紹介し、それらを共有してもらうことと考えます。そのような観点からしますと、分析化学を専門にしない人には分かりづらい表現が散見されますので、文章表現の工夫をお願いします。回答(谷保 佐知)ご指摘のように、環境分析技術の専門外の研究者・技術者には、分かりづらい専門用語や表現があり、理解の妨げとなっていました。これら専門的な内容については、この研究で行った標準化プロセスの理解を深められるよう、本文または「用語説明」において説明を追加しました。議論3 論文の構成(1)コメント(小野 晃)シンセシオロジー誌では以下のような論文の構成を要請していますので、ご検討をお願いします。①まず研究目標が「社会的な価値」にどのように結びついているかを説明していただき、②次に研究目標を達成するための著者らの「研究シナリオ」を描いていただき、③さらに要素技術をどのように統合して研究目標を達成していったかという、「構成(シンセシス)のプロセス」を記述していただきます。なお、上記②の「研究シナリオ」を1枚の図にまとめて全体を俯瞰していただくと、読者にとって分かりやすいと思います。査読者がこの論文を読んで理解した範囲で「研究シナリオ」の図(案)を作ってみましたので、参考にしてください。回答(谷保 佐知)①この論文の研究目標は「分析方法の標準化」です。したがって、産総研の開発した技術シーズを用いてISO、JIS等、国内外標準規格を確立した4件の事例の解説が主目的です。この研究で対象としている化学物質は、研究を開始した当時、環境有害化学物質として認識され始めていたものの、信頼性が確保された分析法がなく、適切な環境対策を行ううえで重要となる環境負荷量の把握が困難でした。このような環境分析における分析法の規格化の必要性と、各対象化合物の社会的背景について、1章および2章で具体的に記載しました。また、環境分析にかかわるISOやJISの体系と、今回の報告の位置付けについても記載し、よりこの研究の背景が理解できるよう加筆しました。②標準化の達成にあたり、この研究では、通常の標準化に多い、「業界のニーズ→分析法開発→精度管理→JIS化→ISO化」の流れと異なり、「化学物質を管理するために必要となる環境挙動の解明や環境負荷量の把握が出発点となり→分析法開発→精度管理→業界ニーズ→JIS化」の流れで研究を進めてきました。ご提案いただいた図を参考に、この研究のシナリオとして図4を作成しました。③ISO化やJIS化の過程において議論になった課題点や、それに対してどのような対処を行ったか分かるように、詳細に記載しました。また、これに対応して、どの点を規格のNormative(準拠すべき規範的)な事項とInformative(参考にすべき情報提供的)な事項として対応したのかについて記載しました。

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