Vol.5 No.4 2012
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研究論文:有害化学物質の環境分析法の標準化(谷保ほか)−271−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)液液抽出方法を用いて分析する方法で、ノニルフェノールは総量測定)のパート2となるISO 18857-2[32](ノニルフェノールを含むアルキルフェノール類について固相抽出方法および誘導体化法を用いて分析する方法)を規格化する際に異性体別測定を加えた。ISO 25101については、国内半導体およびセットメーカーであるS社から、2003年より自社工場で使われていたPFOSについて、使用薬剤中のPFOS含有割合の調査や周辺への環境負荷の評価を産総研に依頼された。このように、まだ規制についての動きがない中、S社は他の企業に先駆けてPFOS問題対応を行い、2006年時点でそれまでのPFOS使用量や環境への負荷量等の情報の把握や代替物質への移行等を行い、2008年に行われた経済産業省からの聞き取り調査等においても十分な安全性確保を達成していた。一方で、2009年までPFOS問題に対応していなかった企業は使用量の把握や代替物質への移行等、規制へのカウントダウンをにらみつつ短期間での対応に苦慮することになった。また、精度管理データのない民間分析事業者の場合は、その報告値の信頼性に疑義が残る場合もあるが、国際規格であるISO 25101に準じた調査結果は所管の要請にも受け入れられ易く、化審法の適用除外・エッセンシャルユースの検討にも貢献している。分析においては、測定値を決定するために正確に値付けされた標準物質が必要になる。これまでは試薬メーカーが保証する値を使うしか選択の余地がなかったが、産総研計量標準総合センター(NMIJ)において、ISO 25101にふさわしい、国際単位系(SI)へのトレーサビリティが確保された認証標準物質(certified reference material:CRM)用語6を作製した。可能な限り国内外規格と標準物質の連携を強化するため、PFOSについては国際規格策定時から標準物質開発を併行し、その結果、PFOS関連CRMに関しては迅速な供給が実現した。CRM開発に関してNMIJは、標準物質の生産に関する規格である、ISO Guide 34[33]およびISO/IEC 17025[34]に適合したマネジメントシステムを運用しており、本CRMもこれにしたがって生産を行っている。SI単位へのトレーサビリティ確保には、一次標準測定法用語7[35]の適用が推奨されている。その一つである凝固点降下法は、一般に有機標準物質の純度測定に利用されている。ただし、今回確保した原料は精製操作が容易なPFOSカリウム塩(K-PFOS)であったため、融点がとても高く(約300 ℃)、これまでのNMIJが培った凝固点降下法[36]-[39](150 ℃程度以下)による純度測定では正確な結果を得ることが困難であった。そこで、高温高圧耐用の試料測定容器および高温の融解温度校正用の標準物質を凝固点降下法に適用することで、測定の再現精度が向上し、K-PFOS等の高融点物質のSI単位へのトレーサビリティを確保した純度決定が可能となった(図9)。このため、これまでの方法とこの方法との組み合わせにより、より多くの有害物質の純度評価が期待できる[40]。一方、標準液の調製は、質量比混合法(国家計量標準機関等に頻繁に用いられている調製法の一つ[41])を使用しており、標準液の濃度はK-PFOSの希釈率と純度を乗じることで算出された。この濃度(認証値)は、SI単位へのトレーサビリティを確保している。以上のように、認証値および不確かさ(表1)を決定したPFOS標準液の開発を2009年度に完了した[42](図10)。これによりPFOSのPOPs条約追加(2010年8注)相対標準不確かさ:標準偏差などで表される測定結果の 不確かさ(いわゆる標準不確かさ)を、測定結果で割っ た相対量。0.001 溶媒ブランク0.066 安定性0.474 均質性0.515 標準液調製0.059 純度評価相対標準不確かさ(%)不確かさ要因NIST SRMNIST SRMmol/mol示差走査熱量計kg/kgkgJCSS校正済み分銅天秤電量式カールフィッシャー滴定装置水分分析不純物濃度分析NMIJ CRM 4220‐a凝固点降下法による値付け図9 ペルフルオロオクタンスルホン酸カリウム標準液(NMIJ CRM 4220-a)に関するトレーサビリティ体系図(原料)注)JCSS:校正事業者登録制度の略称、NIST SRM:米国国立標準技術研究所製認証標準物質の略称表1 ペルフルオロオクタンスルホン酸カリウム標準液における不確かさ要因

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