Vol.5 No.4 2012
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研究論文:有害化学物質の環境分析法の標準化(谷保ほか)−269−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)の記載が必須であるISO規格との整合性の観点から、精度管理試験による試験結果を記述する必要性が指摘されている。4.1 ノニルフェノールに係わる精度管理試験NPについては、2008年7月から2008年9月にかけてISO/TC147/SC2/WG17(フェノール類)で日本のプロジェクトリーダー主催のもと、水試料中NP異性体分析の精度管理試験への参加を募集し、国内外17機関から応募があった。試験結果について統計処理を行った後に、結果を取りまとめて中間報告として各参加機関に通知し、同年12月にISO/DIS 24293(規格原案)の妥当性確認結果としてISO/TC147/SC2/WG17に報告書を提出した。同一の試験室内における分析値のばらつきをみる室内再現精度変動係数(CVr)は平均10 %(最小値4.4 %~最大値21.6 %)で試料の種類、異性体組成の違いによる室内分析精度に差は認められなかった。一方で、異なる試験室間において測定する場合の分析値のばらつきをみる室間再現精度変動係数(CVR)はおおむね30 %以下であったが、異性体によっては50 %を超えるものがみられた。特にNP混合物中で組成の小さい異性体(NP8およびNP12、図5参照)の試験室間のばらつきが大きく室間再現性が悪い傾向にあった。その原因として、同等の分離カラムを用いた場合でもメーカーが異なる場合や、カラムの劣化等により、異性体の分離に若干の差があることが報告されている。このようにNP混合物を定量標準品として用いる本分析法では、一部の異性体について若干のピーク分離能の差が定量値に影響を与えることを避けられなかった[22]。また、SS量の差による分析精度への影響を確認するため、精度管理試験試料には、河川水(SS量 13 mg/L)と、SSを大量に含む下水処理施設の流入水(SS量 140 mg/L)を用いた。上述のように、一部の異性体(NP8およびNP12、図5参照)について室間再現性が悪い傾向が見られたが、その他の異性体についてはCVR 30 %以内の良好な結果が得られている[22]。この分析法は、最終投票において17ヵ国中15票の賛成を得て2009年7月にISO 24293:2009[1]として発行された。この分析法がISO規格として立案されたのは2005年2月である。当時はNP個別異性体の標準品はほとんど市販されていなかったが、ISO 24293の確立により異性体分析の必要性が世界的に認められた結果、今日では13Cラベル化体を含む複数の分岐異性体が試薬メーカーから販売されている。このため、次期改訂の際には市販標準物質を用いた信頼性の向上が期待できる。4.2 PFOS/PFOAに係わる精度管理試験この研究で実施した精度管理試験について説明する前に、2005年に初めて行われたPFOS/PFOA関連物質にb)マルチモード(逆相+陰イオン交換)用カラム(JJ50 2Dカラム)を用いた分離例(長鎖から短鎖の順番で溶出)a)化学結合型シリカゲル分析用カラム(Betasil C18)を用いた分離例(短鎖から長鎖の順番で溶出)14.0012.0010.006.004.00PFOcDAPFOcDAPFHxDAPFHxDAPFTeDAPFTeDAPFTrDAPFTrDAPFDoDAPFDoDAPFUnDAPFUnDAPFDAPFDAPFNAPFNAPFOAPFOAPFHpAPFHpAPFHxAPFHxAPFPeAPFPeAPFBAPFBATime(min)Time(min)≫14.0012.0010.006.008.004.00図7 ペルフルオロアルキルカルボン酸のクロマトグラムの分離例
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