Vol.5 No.4 2012
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研究論文:有害化学物質の環境分析法の標準化(谷保ほか)−268−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)る。これを解決するために、測定に必須ではないパーツ、脱ガス装置やスイッチングバルブ等を液体クロマトグラフ/タンデム質量分析計から除くことにより、システムブランクを数十fg(1 fg = 10−15 g)に低減した。また既存のオクタデシル基(C18)を有するSPEカートリッジ[23]は、コンタミネーションが高く低濃度の分析には使用できなかったため、親水性・親油性基を併せ持つWaters製Oasis®HLBカートリッジを用いたPFOS/PFOA分析法を開発し、オクタデシル基(C18)を有するSPEカートリッジに比べコンタミネーションが低く外洋海水などの低濃度試料に適用できることを確認した[26][28]。しかし、Oasis®HLBカートリッジは、PFOS/PFOAの測定に限定すれば高回収率で低コンタミネーションの優れたSPEカートリッジであるが、PFBA(ペルフルオロブタン酸)等の短鎖化合物の抽出には適していない。そこで、我々はPFOS/PFOAの有機酸としての性質に注目し、酸性物質の吸着捕集に適した陰イオン交換能を有するWaters製Oasis®WAXカートリッジを用いることで、コンタミネーションを最小限に抑え、しかもPFOSやPFOAだけではなく、炭素鎖長が2から18までのカルボン酸、2から10までのスルホン酸のすべてを一度に吸着回収できる分析条件を開発した(図6)[13][30]。使用する器具や試薬のコンタミネーションやシステムブランクの低減[12][24][25]とその重要性については、ISO 25101でも規定している。液体クロマトグラフの分離カラムに、一般的な化学結合型シリカゲルを充填剤として用いると、短鎖から長鎖の順で溶出し、PFBA等の短鎖化合物はピーク形状が悪く、夾雑物質との分離も不十分である(図7a)。一方、イオン交換能をもつ分離カラムでは、溶出順番が逆転し、長鎖から短鎖の順で溶出するため、ピーク形状と夾雑物質との分離が改善される(図7b)[30]。特に、異なった分離原理をもつ2種類の分離カラムによるクロスチェックは測定質量イオン強度比の確認と併用することで、これまでのシングルカラム測定と比較して大幅な信頼性向上につながることが明らかとなった。ISO 25101では、PFOSとPFOAのみを分析対象としているため、化学結合型シリカゲルカラムを分離カラムに使用している。一方、JIS法も規定ではPFOSとPFOAのみを対象としているため、ISO 25101と同様に化学結合型シリカゲルカラムを分離カラムとして規定しているが、付属書(参考)において、短鎖化合物を含むPFOSとPFOA以外の関連化学物質の測定も可能で、そのためのカラムとして、化学結合型シリカゲル分離カラムとイオン交換能をもつ分離カラムを併記し、解説の中で2種類の分離カラムによるクロスチェックの重要性を説いている。さらに重要な点は、検出感度が足りない場合、一般に試料量を増やすのに対し、我々は逆に試料量を減らすことで共存物による分析感度への影響(マトリックス効果)を低減させ[12]、結果として測定感度を向上させたことである。これにより、装置感度としては一世代前の機械であっても、コンタミネーションを低く抑えることで定量下限値を向上できる。フッ素樹脂を多用している最新の測定装置の方が一般に装置のシステムブランクが高いため、現状ではPFOS類の方法検出限界および精確さを決めているのは装置感度ではなく、いかに厳密なQA/QCを行っているかである。もともと、国内モニタリングの対象である一般河川・沿岸水についてはそれほど高感度の分析法は不要であるが、全球動態を理解するための外洋環境モニタリングでは高感度性に加えて、高度に厳密なQA/QCが必須となる。ISO 25101はこれらの研究論文が骨子となっている。4 開発した分析法の信頼性確保ISO/TC147(水質)/SC2(物理的・化学的・生物的方法)では、規格となる分析法について、標準操作手順書(SOP)を用いて複数の試験室で精度管理試験(使用する分析法が妥当かどうか判断するための試験)を行い、得られた妥当性確認結果(performance data)を規格内に含めることが必須となっている。一方、過去の国内規格では分析法の妥当性確認結果は必ずしも公表されていない。これに対して、社会ニーズ対応型基準創成調査研究事業「環境保全と産業競争力の強化に資する環境測定JIS体系の構築戦略事業」では水質と大気測定に関わる旧来のJIS体系見直しの一環として、規格化された分析法の妥当性確認結果試料調製内標準物質添加水試料固相吸着剤法(SPE:Solid Phase Extraction)濃縮i.e.) 25 mM 酢酸緩衝液 (pH4)洗浄i.e.) メタノール 0.1 %アンモニア/メタノール溶出試料通水i.e.) 0.1 % アンモニア/メタノール メタノール 水前洗浄図6 弱陰イオン交換カートリッジ(Oasis®WAX)を用いた固相吸着剤法

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