Vol.5 No.4 2012
48/72

研究論文:有害化学物質の環境分析法の標準化(谷保ほか)−266−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)Standard)を経て、2009年3月に国際規格としてISO 25101[2]が発行された。PFOSが国際的にPOPs条約に追加され、国内では化審法第一種特定化学物質に追加されたのはどちらも2010年であり、有害化学物質規制に先んじて国際規格を制定することができた。また、ISO規格が確立したことにより、国際規格を基礎とした国内規格策定の原則(WTO/TBT協定)による国際整合化や、国内分析事業者からの国内規格の確立の要望を受け、国内連携体制・分析事業者への精度管理の普及を目的としてJIS規格化を行った(2011年3月22日発行[4])。JIS規格はISO規格を基礎として、規定の追加、削除および変更して制定した(MOD)規格である。ISO規格からの変更点としては、LC-MSを使用しないことにした点(ISO 25101ではAnnex(Informative)に記載されていた)、SSの多い排水試料にも適用できるよう、試料のろ過操作を付属書(規定)に加えた点、またPFOSやPFOA以外の関連物質についても付属書(参考)にて測定できるよう記載した点等が挙げられる。これらの変更に際しては、精度管理試験を2度行い、新しい分析法の妥当性について確認を行った。2.3 標準化のタイミングISO 24293、ISO 25101に共通するのは、いずれも環境挙動に関する科学研究からスタートし、新しい分析法を開発することにより国際的に認められる成果を多数公表し、研究者コミュニティーの間でデファクトスタンダードとしてコンセンサスができた段階で国際標準規格化を開始した点である。これは、経済・社会ニーズが顕現化してから国内規格化を行い、次に国際規格とのすりあわせを行うこれまでの流れとは逆の方向である。言い換えると、公的なセクターとしての地球環境保全・国際的な化学物質の適正使用を踏まえたグローバルな視点から求められる環境分析技術を判断し、国際的化学物質規制が実効的に行われることを保証するために、できるだけ早く研究成果を発信することによって研究者コミュニティーでの認知を高めながら、規制の発効と同時に国際規格を提供することで、国際的に信頼性の高い分析結果を得るように努めた。特に、「有害化学物質管理には、信頼できる分析値とそれを可能にする標準分析技術が必須である」という考え方で研究を展開してきた。3 分析法開発3.1 ノニルフェノール分析法開発NPは2002年当時、JIS K 0450-20-10としてすでに総量分析法が存在し、一般的な水試料の分析は可能であった[5][9]。しかし、図1に示した直鎖型の4-NP以外にも、NPは側鎖・置換位置の違いにより理論上211種類の異性体が存在し[17]、環境試料からは環境分解性と有害性に差がある十数種類の異性体が検出されていた[18][19]。したがって、信頼性の高いリスク評価を行うためには異性体ごとに正確に定量する方法を開発する必要があった。当時国内ではほとんど実績がなかったガスクロマトグラフ/preparative fraction collector(GC-PFC)用語1を用い、混合物であるNP異性体を分離精製し、個々の異性体を液体窒素で冷却したガラスチューブへ捕集し、この操作を約100回繰り返してホルモン活性試験に必要な量を確保した6つの画分について、異性体ごとに内分泌かく乱作用が大きく異なることを確認した[6][7][18]。次に市販されている多様なキャピラリーカラムを比較しNP異性体の高度分離に最適な分析条件を確立した。複雑な混合物であるNPを二次元ガスクロマトグラフ用語2質量分析法(GC×GC-MS)を用いて、可能な限り分離分析する方法を検討し、NP製品中の102成分を分離することに成功した[20]。このように最新の分析技術を使用すれば、NPを相当数の成分に分離できるが、精度管理の観点からは大多数のユーザーが同じデータを得られる標準規格が必要である。そのためISO規格のNP異性体別分析法は、一般的なGCで分離可能な13種のNP異性体を分析の対象とした。抽出法には水分析において汎用性の高いスチレンジビニルベンゼン固相抽出法を用いた。NPは非イオン界面活性剤であるノニルフェノールエトキシレートの原料として使用され、ほとんどの水環境から検出されることから、コンタミネーションのコントロールには細心の注意が必要である。シリカゲルカラムカートリッジや固相抽出の目詰まり防止剤(ガラスビーズ)にもNPが含まれている可能性があった。定量にはガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)の選択イオン検出法(SIM)を使用し、異性体ごとに分離および感度の良いイオンを用いて定量した(図5)。これまでは、m/z 135(m/z:質量電荷比、すなわち質量mを電荷数zで割った値)で検出される5~6本のピークを用いるが、この分析法では13異性体についてそれぞれ最適なモニターイオンを選択し、各NP異性体と内標準物質用語3の相対感度係数(RRF)を求めることで、異性体別の評価が可能となった。NP異性体の選定イオンの検討については、堀井ら(2004)[21]を参照されたい。NP異性体別の定量法が多少煩雑になってしまうのは、NPが複雑な混合物であること、異性体の市販標準品が限られること、さらに異性体によりフラグメントパターン用語4が大きく変わることにある。個別の異性体標準品が供給されていない当時の状況では、定量にNP混合物を標準品として用いるしかなく、事前にNP混合物中の異性体組成をガスクロマトグラフ水素

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です