Vol.5 No.4 2012
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研究論文:有害化学物質の環境分析法の標準化(谷保ほか)−264−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)に行うためには、新規化学物質の危険性が一般に認識される前に、信頼性の高い分析法を確立し、適切なリスクプロファイル作成を可能にする必要がある。図4にPFOS/PFOAの分析法の標準化のシナリオについてまとめた。以下、標準化に至るまでの経緯を説明したい。産総研環境管理技術研究部門の未規制物質研究グループでは、高度な機器分析技術と多数の国際共同研究体制から得られた知見・研究成果をもとに、さまざまな潜在的有害化学物質(potential pollutants)について基礎研究を行ってきたが、PFOSに関しても国際規制が行われる以前から研究を行ってきた。当グループでは1995年より開始した米国ワッズワースセンターとの国際共同研究の一環として、PFOSおよびPFOAの分析法開発を1999年より開始、2000年度には(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)産業技術研究助成事業として国内初のPFOSプロジェクトをスタートした。2001年には、PFOSおよびPFOAの国内の環境残留濃度を、表層水および魚類について調査し、リスク評価を行ううえで重要な因子の一つである生物濃縮係数(水から生物への濃縮のされ易さをみる指標)を実環境において世界で初めて報告した[11]。しかし、長距離輸送等、環境動態を明らかにするためには、沿岸水や生物等の高濃度試料に比べ1000倍以上低濃度の外洋大気や外洋海水等の分析が必須であった。極低濃度レベルの分析法を確立するうえで、最大の課題はコンタミネーションの低減である。対象成分は撥水剤・汚れ防止剤・樹脂添加剤等として身の回りのあらゆる製品に使用されているためである。そこで、コンタミネーションを低減させるため実験環境・分析器具・機器・標準物質に至るまで系統的に汚染源を特定し、定量化することにより、そのレベルを1,000倍以上低減させ[12]、また、世界で初めて弱陰イオン交換固相抽出カラム(Oasis®WAX)を抽出法に採用し、高精度・高回収率で抽出できる方法を開発してきた[13]。その結果、外洋海水にも適用可能な、数pg/Lレベルの分析技術を確立した。この分析技術をもとに、外洋表層海水・深層水の測定を開始した。我々は、PFOS/PFOA研究を有害化学物質としての観点からのみ行ってきたこれまでの方法とは異なり、難分解性、水溶性で、超微量分析が可能であるという、3つの要件を有する地球規模の物質循環の化学トレーサーとしての有用性に着目し研究を行ってきた。2004年には世界で初めて外洋海水調査データを報告して、深層5,000 mの海水にも残留することを明らかにした[12]。この研究の重 物質の分析法の標準化」開始2006年8月 基準認証事業「新規POPs候補研究動向社会動向規格化に関わるこの研究の経緯2011年3月 PFOS/PFOAのJIS分析方法発行2010年8月 POPs条約にPFOSおよびPFOSFが追加2010年4月 化審法第一種特定化学物質に PFOSおよびPFOSFが追加追加決定2009年5月 POPs条約にPFOSおよびPFOSFが2009年3月 PFOS/PFOAのISO分析方法発行(2009年以後、監視化学物質)にペルフルオロアルキルカルボン酸類(C12-C16)2007年5月 化審法第一種監視化学物質PFOA自主的削減・撤廃を要請2006年1月 米国環境保護庁が製造メーカに2005年6月 POPs条約にPFOSと関連化合物が提案新規提案2005年6月 ISOにPFOS/PFOA分析方法を物質にPFOS/PFOAが指定2002年12月 化審法第二種監視化学2002年11月 PFOSに関するOECDリポート(NEDO事業:00X43011x)2001年3月 PFOS対策国内研究開始2011201020092008200720062005200420032002200120002000年5月 3M社PFOS関連製品からの撤退発表2000年2月 野生動物からPFOS検出(Giesy&Kannan)1999年 地下水からPFOA検出(Moody&Field)1980年代 排水処理場から有機フッ素検出(Schroder)1966-68年 人血液中から有機フッ素検出(Taves)1950年代 工業製品として多用途に使用開始テロメリゼーション法の開発(DuPont社)1940年代 電解フッ素化法の開発(3M社)1938年 テフロンの発見(Plunkett)年1990198019701960195019401930図3 PFOS/PFOA関連物質の社会動向および研究動向とこの研究の関わり

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