Vol.5 No.4 2012
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研究論文:調光ミラーガラスの開発(吉村ほか)−257−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)ている。例えば、調光ミラー薄膜は水素を含んだ雰囲気に接すると光学的な変化が起こるため、これを観察することで水素の検知ができる[22]。これまでの水素センサーは加熱して使用する物が多く、水素がもれた場合にセンサーが着火源になってしまう可能性もあるが、調光ミラー薄膜を用いた水素センサーは室温で水素と反応するため加熱の必要がなく、また、光ファイバーの先端に蒸着した調光ミラー薄膜をセンサーとして、もう一方のファイバー端でその反射率変化をモニターできるため、検知部に電気的な回路を一切もたず、着火源になる危険性の無い水素センサーになる。また、この材料独自のユニークな用い方として、リトマス試験紙のように水素が含まれているかどうかを目視でチェックする「水素可視化シート」にもなる。この用途については、比較的簡単に実用化できることから、共同研究を行っているアツミテック株式会社で商品化され、2010年から販売が始まっている。また、昨年度からは、サイズの比較的小さい応用先について具体的な商品への適応を目指した共同研究も開始している。4 省エネルギー性能の実証調光ミラーの薄膜の応用先の中で、最も大きな効果が期待されるのは省エネルギー窓ガラスとしての応用である。ただ、調光ミラーガラスを用いた場合に、どの程度の省エネルギー性能が得られるのかはこれまでわかっていなかった。そこで、我々は、建物に実装できる大型の調光ミラーガラスを作製し、その省エネルギー性能の実測を行った[23]。建物に実装できる窓ガラスとして、図7(a)に示したような構造をもつ調光ミラーガラスを作製した。厚さ5 mmの透明ガラスを8 mmの空隙をもったペアガラスとし、室外側のガラスの内側に調光層としてMg4Ni薄膜を用いた調光ミラー薄膜が蒸着されている。アルミサッシに装着した大きさは、縦1.2 m、横0.8 mとなっている。図7(b)と(c)が、作製した実サイズ調光ミラー窓ガラスの、それぞれ鏡状態と透明状態の写真である。これは建物の外から調光ミラー窓を見たもので、鏡状態ではおよそ完全な鏡に見え室内はほとんど見えない。これに対して透明状態にすると、室内を通して反対側の窓ガラスが見えており、透明なガラスに近くなる。また、鏡状態においても、室内側から室外を見ると外の景色が見えるのも調光ミラーガラスの特徴である。作製した実サイズ調光ミラー窓ガラスを図5の環境調和実験棟に設置し、冷房負荷の測定を行った。図8は8月下旬に行った測定例を示したものである。測定に先立ち、まず二つの部屋に同じ透明2重ガラスを取り付け、設定温度を28 ℃にして、冷房負荷が同じになることを確かめた。次に、一つの部屋の窓ガラスを調光ミラーガラスに取り替えて鏡状態にし、その冷房負荷電力を測定した。この日、透明ガラス窓の部屋の冷房負荷は1,065 Whであるのに対して鏡状態の調光ミラー窓の部屋の冷房負荷は720 Whで、34 %程度エネルギーを節約できたことになる。このように、窓ガラスを調光ミラーにして鏡状態にした場合、特に日射量の多い日では大きな冷房負荷の低減効果があることを実証することができた。(a) (b) (c) 1.2 m 0.8 m 8 mm 排出口導入口4%H2 in Aror4%O2 in ArシールシールPdMg4Niガラス (5 mm)ガラス (5 mm)室内側室外側調光ミラーガラス(鏡状態)透明二重ガラス冷房負荷(Wh)時刻181614121086020040060080010001200図7 実サイズ調光ミラー窓ガラス(a)構造 (b)鏡状態 (c)透明状態図8 透明二重ガラスと調光ミラー窓ガラスの冷房負荷比較水素可視化シート水素センサー光学部品携帯デバイスゴーグル・眼鏡デコレーション材料(家具・おもちゃ)建物用窓ガラス自動車用窓ガラス(フロント以外)自動車用窓ガラス(フロント)難易図6 調光ミラー薄膜の応用先

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