Vol.5 No.4 2012
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シンセシオロジー 研究論文−253−Synthesiology Vol.5 No.4 pp.253-260(Nov. 2012)1 はじめにサステナブルマテリアル研究部門では、民生部門におけるCO2の排出量削減に役立つ材料として、「省エネルギー型建築部材」の研究に取り組んでいるが、環境応答機能薄膜研究グループでは、その中の窓ガラスの研究を受けもっている。民生部門のエネルギー消費の中で、冷暖房の占める割合は約30 %に達するが、その冷暖房のエネルギーに大きな影響を与える部材が窓である。窓の目的は光を取り入れることにあるが、通常の窓ガラスでは可視光以外に熱も透過し、建物の断熱性を悪くする要因になっている。したがって、窓の断熱性を高めるだけでも大きな省エネルギー効果があり、最近は、断熱性の高い複層ガラスやLow-eガラスの普及が進んできている。しかし、夏暑い日本ではこの断熱に加え、外部からの日差しを効果的に遮る(遮熱する)ことでさらに省エネルギー効果を高めることができる。このような目的で、光や熱の出入りをガラス自身でコントロールする窓ガラスが調光ガラスである。調光ガラスは、光学的性質を可逆的に可変できる薄膜材料(クロモジェニック材料)をガラスにコーティングすることで実現することができる。調光ガラスにもさまざまな種類があり、例えば、電気的にスイッチングできるガラスはエレクトロクロミック(electrochromic)ガラス[1]、温度によって変化するガラスはサーモクロミック(thermochromic)ガラス[2]、まわりの雰囲気(ガス)で変化するガラスはガスクロミック(gasochromic)ガラス[3]と呼ばれる。これらの調光ガラスの中でもエレクトロクロミックガラスは研究の歴史も長く、外国では一部商品化も行われている。日本では、1990年代までは大手ガラスメーカーを中心にエレクトロクロミック調光ガラスの研究が盛んに行われ、筆者(吉村)も、産総研中部センターの前身である名古屋工業技術研究所の時代から、サンシャイン計画・ニューサンシャイン計画におけるパッシブ型省エネルギー材料の一つとして調光材料の研究に携わっていた。しかし、性能的には優れた物が作製できるようになったものの、コスト面等吉村 和記*、田嶌 一樹、山田 保誠「調光ミラー」は透明な状態と鏡の状態がスイッチングできる新しい薄膜材料で、これを窓ガラスに用いると、太陽光を効果的に遮ることで、特に夏の冷房負荷を大きく低減できる省エネルギーガラスを実現することができる。この調光ミラーガラスを実用化するために、これまでどのような研究戦略を立て取り組んできたかを紹介する。単に材料自体の研究開発にとどまらず、実際にそれを建物に用いた場合の省エネルギー性能の計測も行い、その結果を材料研究にフィードバックすることで、より省エネルギー性能の大きな窓の開発を行っている。調光ミラーガラスの開発− 実用化のための研究戦略 −Kazuki YOSHIMURA*, Kazuki TAJIMA and Yasusei YAMADADevelopment of switchable mirror glass- R&D strategy toward its practical use -“Switchable mirror glass” is a new thin film material that can be switched between transparent and mirror states. Using this material in window glass saves energy by effectively shading rooms from heat-generating sunlight, thereby decreasing cooling load in summer. In this paper, we introduce our R&D strategy for further development and practical deployment of this material. In addition to R&D of the material itself we also measured the amount of energy saved when the material was used in the windows of buildings. The results we obtained from such field tests will enable us to develop a window glazing with better energy-saving performance.キーワード:調光ガラス、省エネルギー、冷房負荷、クロミック材料、耐久性Keywords:Smart window, energy efficiency, cooling load, chromogenic material, durability産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門 〒463-8560 名古屋市守山区下志段味穴ケ洞2266-98Materials Research Institute for Sustainable Development, AIST 2266-98 Anagahora, Shimo-Shidami, Moriyama-ku, Nagoya 463-8560, Japan *E-mail: Original manuscript received April 6, 2012, Revisions received May 16, 2012, Accepted May 18, 2012
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