Vol.5 No.4 2012
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研究論文:固体酸化物形燃料電池(SOFC)単セル/スタックの発電性能試験方法の規格化における不確かさ評価(門馬ほか)−249−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)を測定したとしても温度分布が不確かさに与える影響を見積もることはとても困難である。このような理由があるのでそれらが不確かさに与える影響は少なく、不確かさ評価式から省いても不確かさ評価の目的自体は達成できると判断できるレベルであったことは、結果的に幸運であった。また、規格案では試験対象ユニットにおいて温度測定が複数箇所あるものの温度分布については、温度分布の許容範囲をあらかじめ製造者が決定することとして、測定はその温度分布の範囲内で行うこととした。つまり、その範囲内であれば不確かさを考慮する必要はないとした。4.2 導入した不確かさ評価式以上のような状況から規格案において提案した入力量Xjを制御してSOFCの電圧Vを測定する際の不確かさ評価式を以下に示す。Xj∂V∂ここで、u(X)はXの標準不確かさ、下付きIは、計測機器による不確かさ、同じくFは変動による不確かさ、 は測定量Vの入力量Xjに対する感度係数を表し、実験によって決定する。また、入力量の平均値と設定値の差から感度係数を用いて測定量に対して補正を行うこととした。上述のような事情と実験結果により、不確かさ評価式で考慮すべき入力量は表1に示すとおりとした。規格案では附属書にて温度計測、電流計測、流量計測、電圧計測について機器不確かさの求め方と、それらと変動による不確かさからそれぞれの測定値の不確かさの求め方を示した。このようにすることによって、上式がさまざまに解釈されることなく統一された不確かさ評価が行われるものと考えた。4.3 測定量と入力量の関係(感度係数の測定)不確かさの評価式における感度係数は実測によって得ることとしている。前述のとおり不確かさ評価は定格点でのみ行うようにしたので、この測定は定格点のまわりで入力量を振って電圧測定を行うことになる。例としてユニット温度に対する感度係数を求める際の測定データを図4に示す。定格点が750 ℃で燃料利用率70 %である場合には、図におけるその点での傾きが感度係数になる。ここで感度係数を求める実験での入力量の振り幅について述べておくが、一般にSOFCのメーカーは定格条件近辺で温度やガス流量を変えた測定を行っている。ユニット温度の場合、通常50 ℃程度の間隔で行われている。そこで感度係数を求める際のユニット温度の振り幅については、規格案では±50 ℃程度で測定をするように推奨した。したがって図4に示すデータは定格温度とその±50 ℃において電流-電圧特性の測定を行うことによって得られるので、このような感度係数の測定がメーカーにとって新たな負担になることにはならないように配慮したということである。一方、感度係数を測定することができないために不確かさ評価ができない場合もある。表1には、SOFC試験における入力量に対する感度係数の求め方および不確かさ評価への対応を示したが、燃料組成や酸化剤組成については不確かさ評価をできない場合がある。混合ガスボンベ等を使用してガスを供給する場合等では、混合ガスを構成する1種のガスの濃度だけを独立に変化させて感度係数を測定することが実際問題としてできないために、組成の不確かさが電圧に与える影響を評価することができない。5 SOFC性能試験における不確かさ解析の例表2には、実際に我々が性能試験に使用している計測機器および制御機器を用いて、SOFC平板単セル(100 cm2)の定格出力試験を行った際の不確かさ解析表(バジェット表)の例を示す。測定値の変動が大きい場合には、繰り返し測定を行うことによって不確かさを抑えることができるが、30回(1 point/sec)程度の測定を一通り行っただけでも系が安定している状態で測定すれば、測定値の変動が不確かさへ与える影響は小さいことがわかる。定格出力試験では、最終的に入力量である電流と測定量である電圧の積である電気出力をアウトプットとして算出する必要があるので、表2の右端の欄には出力換算の不確かさを示している。それらを比較すれば、不確かさの成分の大部分はセルの温度計測に由来するものであることがよく分かる。さらにその内訳では、使用した熱電対に由来する不確かさが大きいこともわかる。不確かさ解析の利点として、このような表を作成することによって、どの測定を改善すれば図4 温度のセル電圧に対する感度係数を求める際の実験例入力量の振り幅を±50 ℃程度とした。Uf = 70 %Uf = 80 %定格点における傾きセル温度 / ℃Uf = 50 %セル電圧 / V8007507000.70.750.80.850.9Uf = 60 %Uf = 40 %Xj∂V∂

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