Vol.5 No.4 2012
30/72

研究論文:固体酸化物形燃料電池(SOFC)単セル/スタックの発電性能試験方法の規格化における不確かさ評価(門馬ほか)−248−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)かった。ちなみに我々の規格においては、目安として、測定量の不確かさとして1 %程度以内を目標とすることを前提として考えている。SOFCには幾何形状や大きさだけではなく、支持体に何を使用するかによってもタイプの異なるものがある。先の図で使用したセルは電解質支持タイプであり、電解質の両面に成膜された電極は比較的薄く、電極多孔体中での反応種や反応生成物の拡散の影響を比較的受けにくいという特徴がある。これに対してアノード支持やカソード支持タイプのSOFCでは、多孔体の厚みが厚くなるので、ガス拡散の影響を受けやすくなり、動作圧の依存性においても本質的に前者とは異なる影響を与える可能性がある。図2(b)には、アノード支持タイプのSOFC単セルで測定したセル電圧の圧力依存性を示した。低圧力側で先ほどの依存性とは大きく異なる様子が観測されるが、1気圧におけるセル電圧の圧力依存性は0.2~0.5μV/Pa程度であり、やはりこの場合も不確かさに与える影響は大きくないことが確認できた。一方、SOFCの温度分布の問題は測定の不確かさを考える上でとてもやっかいな問題である。均一な温度に保たれたSOFCの性能を測定して、そこで得られた性能がその温度における特性であるとすることができれば理想的ではあるが、現実の測定では必ずしもそのような状態で測定することができるわけではない。また、SOFCが使われる状況を考えれば、温度分布がある状態こそが本来の使われ方であるという考えもある。そこで、実際にSOFCの単セルの温度分布を測定したが、その例が図3である。温度分布はセルを高温に維持するための電気炉への設置状況や温度制御の仕方によっても異なるが、ここでは我々が通常使用している実験装置系へ設置し、温度制御は1点制御で行っている。内部改質反応があまり期待できない電解質支持タイプのセルに、燃料として水素を流した際の温度分布を示したのが図3(a)である。ガスの供給は円板形セルの中心部から行われており、そこから外周部へ向かって流れている。この場合の温度分布は負荷の状況にかかわらず、セルの平均温度から±2 ℃程度の範囲に収まっていることがわかる。これは設定値の±1 %程度までの変動を許容するとした規格案から判断すると、十分許容できるレベルであると考えられた。一方、SOFCの利点の一つとして期待される内部改質特性をもつアノード支持タイプのセルを使用して、燃料を部分改質メタンとした場合に測定した温度分布を図3(b)に示す。図では未改質メタンが内部改質される際の吸熱反応により、入り口付近で温度が下がることが確認されている。負荷状況によって多少の温度分布の違いはあるが、それでも平均温度±3 ℃程度の温度分布に収まっており、温度分布をセル内の部分的な温度変動としてとらえることができると仮定するならば、内部改質反応が起こる場合でも、この程度の使用条件であれば十分許容範囲に収まると考えられた(実際には温度分布により局所的なインピーダンスの分布が生じ、電流分布が変化するので、温度分布の影響を評価するのはとても困難であるが)。以上のように実験による検証を通じて、気圧や温度分布については、不確かさに与える影響は少ないものとして不確かさの評価式には入れないこととした。本来であればこれらが不確かさに与える影響は無視できる程度に小さいものとは言えず、不確かさ評価式に含めてしかるべきものである。しかし、セル製造者が製作する個々の型式のセルにおいて圧力の依存性や温度分布を測定することを期待することはできない(実際に実用セルにおいてこの論文で報告したような圧力依存や温度分布を測定した例はほとんど発表されたことがないのが現状である)。また、温度分布図3 単セルの温度分布測定例0.25φシース熱電対(OKAZAKI SUPER COUPLE 1000H)による(a)電解質支持タイプセル、有効電極面積:113 cm2、燃料:純水素(b)アノード支持タイプセル、有効電極面積:113 cm2、燃料:部分改質メタン燃料利用率:70 %温度/ ℃中心からの距離 / mm中心からの距離 / mm600 ℃設定時の温度/ ℃750 ℃設定時の温度/ ℃74074274474674875074074575075576060504030201006050403020100590595600605610600 ℃ 開回路750 ℃ Uf = 70 %750 ℃ 開回路メタン改質温度:600 ℃メタン改質温度:550 ℃メタン改質温度:500 ℃(a)(b)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です