Vol.5 No.4 2012
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研究論文:固体酸化物形燃料電池(SOFC)単セル/スタックの発電性能試験方法の規格化における不確かさ評価(門馬ほか)−246−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)(polymer electrolyte fuel cell:固体高分子形燃料電池)のI-V特性試験法に関するDC(Draft for Comment: コメントを募るための資料。IEC内の非公式文書のため参考文献にはあげない)が提出された。この試験法の中では、各測定値に対して"measurement uncertainty"の許容値を規定している。ただし、安定状態を定義する際に"measurement uncertainty"を引き合いに出して、変動がその範囲内に入ることとしている等、測定値の変動と測定値の不確かさを明確に区別していない状況がうかがわれる。もっとも、"measurement uncertainty"自体は、入力パラメータの相関を含む一般式で定義している形をとっていたが、不確かさの求め方の具体的な方法については一切触れられていない。(3)2010年に発行されたPEFCの単セル試験法TS[10]は、我々が規格案を検討している段階ではCD(Committee Draft: 委員会原案)であったが、その中で入力量の最大許容変動幅と試験機器の最大不確かさを規定していた。最終的に発行されたTSにおいては、附属書の中に試験報告書のひな形として、測定の不確かさ(measurement uncertainty)を記載するように推奨しているが、具体的な求め方はGUM[7]を参照するような記載となっている。以上の様な状況を踏まえ、我々が提案するSOFC性能試験法の国際規格案における不確かさ評価については、基本となる指針を以下のようにすることとした。(a)不確かさ評価はGUMを参考とし、評価式と具体的な求め方を記載することとする。不確かさ評価は統計的な解析によるAタイプおよびそれ以外の手法によるBタイプの不確かさを個別に求めて、それらを合成することによって行う。不確かさの一般式からは実際に不確かさ評価を行う手順を導くことが困難で、これを評価者任せにすると評価方法がばらばらになる(評価方法に統一性がなくなる)ことが考えられ、それを避けるためである。(b)入力量の許容最大変動幅および機器の最大不確かさを規定し、測定は入力量が許容変動幅に収まった安定状態で行うこととする。こうすることによってAタイプおよびBタイプの不確かさのいずれもおおよその許容値が定まることになる。また、安定状態で測定を行うことによって、不確かさを評価する際に入力量同士の相関を考慮する必要がなくなると考えた。(c)評価をする際にあまり多くの作業を評価者に強いるようなものとはしない。規格は商取引における性能試験のためのものであるので、不確かさを正確に求めること自体が要求されるわけではない。試験者がどの程度のレベルの正確さで試験を実施し、結果を提出しているかが判断できればそれで良いと考え、それを不確かさ評価の目的とした。そして、この目的を達成するために、試験者に日常行っている試験手順からの大幅な逸脱を強いるものであってはならないと考えた。これらの方針により、我々が行うべき作業は不確かさ評価の一般式から、不確かさへ与える影響が少ないと思われる部分を切り離し、また、具体的な評価作業を併記して、不確かさ評価者が平易に評価できるような形にすることとなった。3.2 規格案における不確かさ関連の記載についてこのような状況を考慮して作成した規格案における不確かさ評価に関連した内容について以下に述べる。規格案に盛り込んだ性能試験の内容は、定格出力試験、電流-電圧特性試験、有効燃料利用率依存性試験、長期耐久性試験、内部インピーダンス試験等であるが、これらの試験の中には不確かさ評価がとても難しいものや手間がかかると予想されるものがあるので、規格案では定格出力試験の結果のみ不確かさ評価をすることを義務付けるようにした。ここで定格出力試験とは、電流あるいは電圧を1点に保った状態で電圧あるいは電流を測定する試験であり、それ以外の制御パラメーターもすべて一定に保持したうえで行う1点試験である。二つあるオプションのうち、以下では、一般的に行われているであろうと思われる電流制御による電圧測定の場合を例にとって説明する。上記の方針により規格案では、規格で定めたすべての試験において満たすべき条件である電流、ガス流量等の入力値の変動の許容範囲を決めた(表1)。実際に測定する際には、試験者が目標とする測定量の不確かさを得られるように、この範囲内で変動の許容範囲を決定することになる。これによって不確かさの偶然誤差に由来する許容値を定めたことになる。また、「安定状態」として、入力量が試験者の定めた変動の許容範囲以内で、しかも測定が目標とする不確かさを満足するレベルで系が安定した状態と定義し、すべての測定はこの「安定状態」を確認した後に行うこととした。これによって測定が系の急激な条件の変化に伴う過渡応答や種々のドリフト状態のもとで行われることを防止している。結果として測定値の変動は、主に偶発的なノイズや制御しきれない入力量の微少変動によるものと考えることができるようになり、不確かさ解析において入力量の相関を考慮する必要が少なくなると考えた。また、測定機器の不確かさ(系統誤差による)としてその最大許容値を定めた(表1)。これは機器の校正時の不確かさを意図して定めたが、機器が校正されていることを条件として、簡便に機器の確度等のカタログ値から一様分布を仮定したBタイプの不確かさによって判断しても良いこととしている。
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