Vol.5 No.4 2012
26/72
研究論文:固体酸化物形燃料電池(SOFC)単セル/スタックの発電性能試験方法の規格化における不確かさ評価(門馬ほか)−244−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)積層したもの)も欧州が開発を進めている平板タイプのみが主たる対象となっていた。これに対して日本においてはNEDO等によるSOFC関連のR&Dプロジェクトは存在していたが、試験方法の規格・標準化の動きについては欧州等に対して遅れていた。一方、日本ではSOFCの特徴的な動作環境である高温において、さまざまな使用環境条件を想定し、機械的強度の確保や劣化速度の低減等による信頼性の確保をアプリケーションごとに実現するために、さまざまな指向性をもった研究開発が行われてきた。その結果として、さまざまなタイプ(幾何学的な形状、単セル当たりの大きさ)のSOFCが開発されつつある。それぞれのタイプのセルには適切な動作条件が存在するので、これらの条件を統一して試験条件を設定することは、さまざまなタイプのSOFCがあらかじめ想定した使用条件を無視して比較することにつながり、適切な比較ではなく、比較することの意義も疑わしくなる。上記のような事情により、商取引を想定したSOFC試験法の国際規格の作成に当たっては、日本主導で行う必要があった。日本主導で行うことによってさまざまな使用条件を想定したさまざまなタイプのSOFCが公正に試験され、その結果としての試験データを踏まえて商取引が行われることによって、さまざまなアプリケーションに適切なSOFCが選ばれ、SOFCの発展・普及が加速されることが期待されるのである。我々のグループでは、燃料電池の燃料として使用されることが期待されている水素や都市ガスについて流量標準の開発[2]やSOFCシステムの高精度効率測定手法の開発等[3]を通して効率測定方法のJIS TS(Technical Specification:技術仕様書)[4]の作成等、SOFCの普及や開発促進につながる標準化についての研究をいち早く進めてきた(図1)。また、さまざまなタイプの単セルの測定やスタック、システムの測定を通じてSOFCの計測技術を確立してきた[5]。これらの技術および経験のもと、SOFCの今後の展開を見越して2007年度から経済産業省の委託を受け、SOFC単セル/スタックの試験方法の標準化・規格化の作業を開始した。実用化が近いと思われたSOFCの商取引の円滑化およびSOFCの普及をそれによって加速させることが重要であると考えたからである。SOFCの性能試験の国際規格を作成する際には、データの信頼性を担保するために、得られたデータの精度について言及する必要がある。IECやその他の国際規格の組織では、国際標準や国家標準へのトレーサビリティが確保された概念である「不確かさ」を、測定結果の信頼性の定量的評価の尺度として用いることを提唱している。不確かさ付きの測定値を試験のアウトプットとして提出することによって、初めて試験結果の国際比較ができるようになり、規格が国際的な規定として意味のあるものとなる。このような状況を踏まえて我々のグループでは、JIS TSや2007年度に実施した10 kW SOFC実システムを用いた効率測定において、入出力の計測値の不確かさ解析を行い、測定した効率を不確かさ付きで評価し、計測の不確かさ評価の導入を積極的に図ってきた[6]。ここでは、2007年度から3年間の経済産業省の委託によるSOFCセル・スタックの性能試験法に関する国際規格の作成と、その中で扱う不確かさ評価への我々のグループによる取り組みについて記す。図1 この研究における要素技術の統合と相互関係この研究の範囲単セル性能解析スタック性能測定高圧単セル性能測定高精度流量測定セル製造技術模擬ガス発電性能試験装置試験結果の不確かさ解析標準的な試験方法の提案発電効率の不確かさ解析試験法TSJIS発電効率校正用物質・機器高精度組成分析高精度標準ガス高精度流量計セル・スタック性能評価技術高精度測定技術試験法規格作成
元のページ