Vol.5 No.4 2012
12/72
研究論文:マンモグラフィの安全を支える線量計測(田中ほか)−230−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)年齢調整罹患率:基準となる人口の年齢構成(昭和60年人口モデル)を考慮して補正した罹患率で、年齢構成の著しく異なる群間の比較を可能にする。年齢調整死亡率:基準となる人口の年齢構成(昭和60年人口モデル)を考慮して補正した死亡率で、年齢構成の著しく異なる群間の比較を可能にする。線減弱係数:強度I0の単一エネルギーの光子が一様な物質に入射して透過する際、透過する光子の強度Iは、物質の厚さd (cm)とともにI = I0×e−μdのように指数関数的に減少する。この係数μ (cm−1)を線減弱係数という。空気カーマ:非荷電粒子線の相互作用によって単位質量あたりの空気から発生した二次荷電粒子線の各発生時点での運動エネルギーの総和。SI単位系では、J/kgと表されるが、 特別な単位Gy(グレイ)が用いられる。照射線量:単位質量あたりの空気と相互作用した光子が生成した二次電子が完全に停止するまでに空気中で生成するイオン対のうち、一方の符号の電荷を合計した電荷量の絶対値。SI単位系ではC/kgで表される。ラジオフォトルミネセンス現象:放射線照射によってガラス中に生成した蛍光中心に対して紫外線を照射すると、ガラスに照射された放射線の線量に比例した蛍光が発生する現象。この現象を利用して、個人線量計としても使われている。基幹比較:国際度量衡委員会(CIPM)の下に設置されている各計量分野の諮問委員会では、その分野で中核となる国際比較を実施しており、これをCIPM基幹比較(CIPM Key comparison)という。放射線の線量関連では、現在、次の8つの量が基幹比較の対象となっている。K1: 60Co γ線 空気カーマK2: 軟X線 空気カーマK3: 中硬X線 空気カーマK4: 60Co γ線 水吸収線量K5: 137Cs γ線 空気カーマK6: 医療用電子線加速器 X線 水吸収線量7 おわりに産総研では、マンモグラフィの現場における線量評価への信頼性向上を目標に、マンモグラフィの線質に準じた線量標準の開発と供給体制の構築を行ってきた。マンモグラフィの標準開発には、既存の軟X線用の国家標準器(自由空気電離箱)を活用することにより、開発に必要な期間を大幅に短縮することができた。また、この標準の国際比較にもいち早く参加し、主要国との間で国際的な同等性を確認した。供給体制の構築に際しても、既存の体制を最大限に活用することにより、迅速かつ広範な標準供給を行うことができた。今後も、学会や校正機関との連携を図り、さらなる供給体制の強化を目指していく。また、現在、マンモグラフィでは、他の診断と同様にモニター診断化(診断画像をパソコン等のモニターに表示し診断)が加速している(マンモグラフィのデジタル化)。これまでのハードコピー(フィルムへの診断画像の焼き付け)に比べ、画像からの線量の判定が難しいとされ、精度管理における線量測定の重要性が一層増すことが予想される。また、マンモグラフィのデジタル化に伴い、多種多様なX線の線質が利用されつつある。特に、医療現場で多く使われている半導体式線量計は、感度が線質に応じて大きく変化するため、校正場の整備が急務であると考えられる。現在、アメリカでもデジタルマンモグラフィ用の校正場の整備が進められ、半導体式線量計の評価について重点的な研究がなされている。産総研においても、現在、この状況に早急に対応するべく、標準場の開発を進めていき、高度化するマンモグラフィの精度管理および安全性に貢献したいと考えている。ガラス線量計電離箱C電離箱B電離箱A線質4つの線量計による平均乳腺線量の測定値の平均に対する比0.900.951.001.051.10Mo/Mo 28 kVMo/Mo 26 kV図10 実際のマンモグラフィ装置による線量の比較結果データごとの縦棒は、不確かさを95 %信頼度で表す。用語解説用語1:用語2:用語3:用語4:用語5:用語6:用語7:謝辞この標準の迅速かつ広範な供給には、我が国の優れた精度管理体制の協力が大きい。このような優れた精度管理体制を構築された方々に、深く感謝の意を表します。また、マンモグラフィ用ガラス線量計の開発・評価にご協力してくださった株式会社千代田テクノルの関係者の皆様にも深く感謝いたします。
元のページ