Vol.5 No.4 2012
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研究論文:マンモグラフィの安全を支える線量計測(田中ほか)−229−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)標準線量計(自由空気電離箱)との間で、測定された線量の絶対値どうしを比較する方法である。この方法は、標準器が持ち運び可能である場合に限られる。もう一つの方法は、線量計の校正を各機関で行い、その校正結果(校正定数)の比較を行う方法である。この方法は、標準器が大きい等運搬が困難な場合に有用な方法となる。産総研のマンモグラフィ用のX線標準の標準器である自由空気電離箱は、これまでの軟X線(W/Al)の線量標準と共通である。この標準器は2004年に国際度量衡局の標準器との比較を直接行っており、十分な同等性を確認している[16]。そこで今回の基幹比較用語7では、仲介の線量計(3種類の電離箱式線量計を使用)の校正による後者の方法を選択した。3種類ともエネルギー特性の異なる線量計を選択することにより、両機関の線量標準の詳細な比較を目指した。図8に両機関で測定した3種類の線量計の校正結果の比較を示す。図8から分かるように、どのエネルギー特性の線量計の校正定数も両機関で良好な一致を示している。3種類すべての線量計の校正結果について、国際度量衡局の不確かさ(図8のエラーバー)が産総研よりも小さいのは、国際度量衡局がマンモグラフィ用X線の線質に最適化された(式(1)の補正係数が小さい)自由空気電離箱を新規に開発したためである。図9はこの基幹国際比較の全参加国との比較である。この基幹国際比較にはドイツ(PTB)、アメリカ(NIST)、カナダ(NRC、線質が若干異なる)が参加しており、全機関のマンモグラフィの線量標準の間で十分な同等性が確認された[17]。また、産総研の不確かさが、諸外国の線量標準と比較して、遜色のないものであることが分かった。6.2 実際のマンモグラフィ装置を用いた検証医療現場で使われるマンモグラフィ装置では、X線の発生は時間的なパルスで行われる。一方、標準場には安定性が求められるため、線量率が時間に対して一定となっている。また、照射装置の構造も、実際のマンモグラフィ装置はコンパクトであるのに対して、標準場の装置は空間的な余裕がある。実際のマンモグラフィ装置と標準場とのこのような違いを検証することが、医療現場での線量測定の信頼性向上につながると考えられる。そこで、産総研では、医療現場で使われているマンモグラフィ装置を使い、電離箱式線量計(産総研で校正)とガラス線量計での線量の評価結果の比較を行った。その結果、電離箱線量計とガラス線量計との間で、平均乳腺線量について不確かさの範囲で一致することを確認した(図10)。産総研の標準場で校正された線量計が実際のマンモグラフィ装置の線量評価に対しても信頼性があることが分かった。W/Mo 50 kVW/Mo 30 kVW/Mo 23 kVMo/Mo 35 kVMo/Mo 30 kVMo/Mo 28 kVMo/Mo 25 kVNMIJ/AIST(日本)PTB(ドイツ)NIST(米国)NRC(カナダ)-5-10-150510150.5 %各国の測定値と参照値(BI PM)との相対偏差(千分率)産総研国際度量衡局線質(Mo/Mo)校正定数(Gy/μC)25kV28kV30kV35kV116118120122848586874.654.704.754.80(a)(b)(c)図8 3種類(a,b,c)の線量計の校正定数の国際度量衡局との比較結果(a)の線量計のエネルギー特性はフラット、(b)は右肩下がり、(c)は右肩上がり、と3種類とも異なっている。図9 マンモグラフィの線量標準の国際比較[17]縦軸は、国際度量衡局の測定値からの偏差を1000分率で表す。データごとの縦棒は、不確かさを95 %信頼度で表す。

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