Vol.5 No.4 2012
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研究論文:マンモグラフィの安全を支える線量計測(田中ほか)−228−Synthesiology Vol.5 No.4(2012)る世界的に共通に使うことができる線質である(マンモグラフィでは、IEC61267で規定されている)[13]。このような線質は、各国の線量標準の同等性を確認するために実施される国際比較に参加する際に必要となる。一方、国内の精度管理マニュアル等ではIEC規格以外の線質も使われていて、これに準拠することが円滑な標準供給へとつながる。このように、標準を整備する際に国外と国内の両方を意識することが、国際的な同等性の担保された線量標準の円滑な供給にむけた第一歩となる。また、マンモグラフィに用いられる低エネルギーX線は空気による単位長さ当たりの吸収量が他の診断X線と比べて大きいため、校正距離(焦点-規定面間距離)による線質の変化が大きく、校正距離の設定も重要となる。我が国よりも先に標準供給を行っていたドイツやアメリカ等では校正距離は1 mであったが、実際のマンモグラフィ装置の照射距離を考慮して、産総研では校正距離を60 cmと設定した(その後に国際度量衡局も校正距離を60 cmに設定した)。また、我が国独自の設定として、圧迫板を透過した線質に基づいた線量標準も開発した。実際の乳房撮影では圧迫板を透過したX線が乳房に照射される。マンモグラフィで使用されるようなエネルギーの低いX線は圧迫板に吸収されやすく、線質も大幅に変わる。乳房に照射する線量の把握も重要と考え、このような独自の線質も開発した。この線質は精度管理用に使われている線量計を校正するためにも必要であった。5 線量標準の供給体制の構築医療現場で評価される線量の信頼性向上には、標準供給体制の構築が必要不可欠となる。そこで、産業界・学会等の協力を得て、複数の標準供給体制を構築した。5.1 精度管理に利用されるガラス線量計の性能評価マンモグラフィが我が国の乳がん検診に導入される以前から、関連学会を中心としたマンモグラフィ検診の精度管理がされていた。この精度管理において必要な線量と線質を簡便に評価できるよう、マンモグラフィ用ガラス線量計が開発された。ガラス線量計は、ラジオフォトルミネセンス現象用語6を利用した積算型の線量計であり、蛍光ガラス素子には銀活性リン酸塩ガラスが用いられている。マンモグラフィ用のガラス線量計の写真を図7に示す。マンモグラフィ用のガラス線量計は、蛍光ガラス素子と、素子の表面に4種類の厚さの異なるアルミニウムフィルタをかぶせた構造となっている。各アルミニウムフィルタの厚さは0.3、0.4、0.6、1.0 mmとなっており、1回の照射で減弱曲線が測定できる。この減弱曲線から半価層と管電圧を求め、OW(open window、Alフィルタが無い)のガラス素子の蛍光量から空気カーマを求めることができる。つまり、このガラス線量計では1回の照射で精度管理に必要な平均乳腺線量の評価ができる。このガラス線量計の性能評価をこの標準場で行った。その結果、半価層、管電圧、空気カーマともに、95 %の信頼度で不確かさ2 %以内で産総研の値と一致することを確認した[14]。 5.2 産総研の照射施設の利用促進マンモグラフィの線質での線量計の校正を校正事業者が実施するためには、マンモグラフィ用X線の発生装置が必要となる。しかし、X線発生装置の導入には少なくとも数千万円規模の設備投資が必要となり、事業として成り立たない可能性が予想された。そこで、校正事業者が産総研のマンモグラフィ用の標準場に、各自の標準線量計(国家標準とトレーサブルであることが前提)と校正事業者が依頼を受けた被校正線量計を持ち込んで校正を行う照射依頼試験を開始した。これまで産総研での校正料金は、被校正線量計の数に応じていたが、この試験では照射装置の使用日数に応じて課金するため、校正事業者の経済的な負担が軽減される。この照射依頼試験の導入により、校正事業者への負担軽減を図り、円滑な標準供給を促進した。6 校正能力の検証6.1 国家標準の国際的同等性の確認各国の標準は国際的な同等性を確認するため、他国の標準との比較を行う必要がある。前述のとおり、国際度量衡局もマンモグラフィ用X線の線量標準を開発し、2009年より基幹国際比較用語6を開始した。そこで産総研は、世界のトップバッターとして2009年にこの基幹国際比較に参加した[15]。放射線の線量標準の国際比較の場合、その方法は2通りある。一つ目は、各国の標準器同士を直接比較する方法である。例えば、産総研の国家標準器(自由空気電離箱)を国際度量衡局の放射線場に持ち込み、国際度量衡局の45 mm6 mm13 mm1.0 mmAI0.60.40.3OW図7 マンモグラフィの精度管理用に開発されたガラス線量計(協力(株)千代田テクノル)

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