Vol.5 No.3 2012
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研究論文:地球観測データの統合的利用のための国際連携(岩男)−157−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)等一つの機能が欠けても共通基盤が成立しなくなることから、安定した長期運用を担保する評価基準を設定する必要があった。5.2 共通基盤の構築を行うための構成的方法共通基盤の構築を行うため、地球観測に関する政府間会合事務局を中心とした共通基盤評価委員会を設置した。まず、評価結果の公平性を担保するため、政府間会合に加盟するすべての国や機関に評価委員会への専門家の参加を依頼した。国際合意形成を行ううえで、地理的バランスが重要視された。今回の構成要素の提供を申し出ているのは欧米の機関や組織である。独自技術の普及や標準化に関心の高いこういった地域からの評価委員会への参加申し出は委員会発足時点から予想された。一方で、アジア・オセアニア・アフリカといった地域からは構成要素の提供を申し出ている機関はなかった。さらに、途上国においては、欧米主導で決まったシステムを実際に利用する段階において、インターネット回線スピードに制約がある、あるいは実際にシステムを利用するには使用しているパソコンのスペックが不足し、利用に支障が生じることが考えられた。今回推奨したシステムが、加盟するすべての国で広く普及することを目指し、今回は特に、途上国に対し積極的な参加を求め、国際的な合意が担保されることを配慮した。ただし、評価委員は各プリンシパルから正式に推薦されたメンバーに限定した。これにより、政府間会合に加盟する国や機関を代表する意見を反映した結果であることを担保した。評価委員は以下の国や機関から推薦されたメンバーで構成した。なおカッコ内は参加人数であり、1名の場合は省略した。参加国:オーストラリア、オーストリア、ブラジル、中国、フィンランド、ドイツ、イタリア(2)、日本(3)、マダガスカル(3)、パキスタン(2)、米国(5)、欧州連合(2)参加機関:地球観測衛星委員会、欧州宇宙機関、欧州社会基盤プラットフォーム、欧州気象衛星開発機構、米国電気電子学会、米国環境保護局、欧州共同研究所、地理標準に関するオープンコンソーシアム、世界気象機関上記30名の評価委員に加え、筆者を含む政府間会合事務局2名を評価委員会のメンバーとした。また、評価委員会メンバーを含む技術審査チームと使用感審査チームを政府間会合総会の下に設置した。この2チームは評価委員会が作成した技術評価項目や使用感評価項目に基づき実際に審査を行う。技術審査チームはブラジルと欧州共同研究所のスタッフで構成され、使用感審査チームは米国環境保護局のスタッフを中心として構成された。例えば、評価委員会が、検索応答時間を技術評価項目として設定し、技術審査チームは応答時間を計測するための条件や方法を検討し、実際の評価も行う。その結果を評価委員会に報告することで評価結果のさらなる公平性を担保した。今回、評価委員を募ったところ、利害関係を有する機関、すなわち共通基盤の構成要素であるウェブポータルの提供を申し出た欧州宇宙機関とクリアリングハウスの提供を申し出た米国地質調査所からの参加希望があった。政府間会合はボランティアな参加を前提とするため完全な排除はできないので、所属する機関が審査の対象となる場合は当該評価委員を議論から排除することとした。一方、日本は共通基盤の要素の提供を申し出ておらず、公正な立場からの発言機会が増すことが予想された。そこで、産総研から別途3名の専門家の参加を募り、調整役としての筆者と産総研からの専門家が連携を図ることにより円滑な議論を進めることができた。2009年11月下旬の政府間会合の総会から評価委員の正式な選出までに約2カ月を要した。評価委員が確定し、事前に電話会議およびメールでの意見交換を行った後、第一回の評価委員会会合を2010年2月政府間会合事務局内で開催した。会合では、この委員会の委託条項「Terms of Reference」を起草し、その中で技術、ユーザー使用感、長期運用性担保の3つの評価を評価対象と定めた。さらに、図6に示すとおり評価結果の報告書をまとめるまでの全体の流れを確認した。評価に先立ち、混乱の原因解明を事前に行うとともに、毎週電話会議による審査基準に関する議論を続け、技術評価項目、ユーザー使用感評価項目のリストアップを行った。審査チームによる審査結果と、評価委員会による長期運用性担保に関する評価の総合評価により、評価委員会承認混乱原因調査共通基盤選定評価基準執行国委員会にて承認総会/地球観測サミットにて承認採点選定対象機関への趣旨説明・回答執行国委員会評価項目・配分(重み)議論専門家委員会設置技術試験利用試験図6 共通基盤の選定までの流れ評価委員会で設定した評価と承認の流れを示す。

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