Vol.5 No.3 2012
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研究論文:地球観測データの統合的利用のための国際連携(岩男)−155−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)への反映の必要性に関する議論は2000年代初頭から提起されてきた。表1に地球観測のための共通の観測ネットワーク構築の国際的合意に至るまでの経緯をまとめた。2003年のエビアンサミットで小泉首相(当時)が全球地球観測システム(GEOSS)[7]を提唱したことが国際的な地球観測の連携の契機となった。4.2 全球地球観測システム小泉元首相が提唱した全球地球観測システムは、地球を対象として各国がそれぞれ独自に有する衛星観測、航空機観測、地上観測、あるいは予測モデル等の地球を対象としたあらゆる観測システムや観測データ、予測モデル、サービスを連携させた全球規模の地球観測連携、すなわち「システム・オブ・システムズ」の構築を目指した。2005年にブリュッセルで策定された全球地球観測システム10年実施計画[8]は、地球観測の連携によって得られた科学的知見を政策の場に反映することを最終目標とした。具体的に9つの社会便益分野、すなわち、災害、健康、エネルギー、気候、気象、水、生態系、生物多様性、農業の各分野において10年以内に解決すべき喫緊の課題を設定した。4.3 地球観測に関する政府間会合全球地球観測システムの実現のために「地球観測に関する政府間会合」(GEO)が2005年に国際的合意のもとに組織された。同時にその運営母体として地球観測に関する政府間会合事務局がスイスジュネーブに設置された。事務局は、全球地球観測システム実現のための作業計画[9]の策定、その進捗管理、地球観測事業への投資に関する国際調整等を任務とした。この政府間会合は他の永続的な国連機関とは異なり、2015年までの課題解決を目的とした期限付きの組織とした。国連は決議に一定の拘束力があるのに対し、政府間会合の決議は拘束力をもたない。この政府間会合は2011年10月時点で87カ国の政府、および国連の専門機関等を含む61の国際組織・国際機関からのボランティアにより運営されている。現時点の政府間会合への加盟国を図4に示す。政府間会合への各加盟国・加盟機関は、プリンシパルと呼ばれる者により代表される。日本政府では文部科学省が本業務を所管し、研究振興局担当の審議官が2012年時点での日本政府のプリンシパルである。政府間会合は拘束力のないボランタリな組織ではあるが、各加盟国・機関は積極的にその活動への参加を表明し、資金的貢献と人的貢献を行っている。その理由としては、一つには政府間会合が地球観測に関する国際的な運用調整機関として位置付けられることがあげられる。年に一度開催される政府間会合の総会と、3年おきに開催される政府間会合の閣僚級会合において各課題についての進捗が報告され、そこでの決議は各国の地球観測政策に直接的に反映される。なお、日本は文部科学大臣が閣僚級会合を担当することとなっている。各国の積極的な参加のもう一つの理由は、政府間会合の各加盟国・加盟機関で利用されている方式がいろいろな分野でデファクト標準となっているが、政府間会合がそれらをもとに統一したデジュール標準を策定する場となりうるためである。そのため、政府や公的機関のみならず、私企業も政府間会合の活動に対して技術援助等の支援を行う場合もある。ただし、私企業の場合は、メンバーシップはもたない。また、各国の地球観測に関連する公的機関は、加盟国のGEOへの貢献の一環として活動を行うこととなる。地球観測に関する政府間会合の組織を図5に示す。本政府間会合の活動に賛同する企業が自発的に貢献臨時(総会の決議によって期限付きで設置)常設専門家委員会 ・科学的知見の提供 ・能力開発等を支援等使用感審査チーム技術審査チーム共通基盤評価委員会臨時常設地球観測に関する国際的な活動の調整業務会議運営等の事務局業務本会合の活動の円滑化、決定事項の実施支援地理的配分を考慮した12カ国で構成年3回開催地球観測に関する政府間会合事務局全加盟国・加盟機関で構成(公的機関は国として貢献)共同議長 (米国、EC、南アフリカ、中国)年1回開催加盟国閣僚により、地球観測に関する国際協力を推進3年おきに開催地球観測サミット(閣僚級会合)執行国委員会専門委員会・ワーキンググループ等各国民間企業地球観測に関する政府間会合本会合(総会)図4 地球観測に関する政府間会合への加盟国の分布(2011年10月時点)黒塗りの国が現在の加盟国、灰色は非加盟国である。国連加盟国193カ国(2011年)のうち87カ国と半分程度が参加する。スイスのように国連に加盟していない国が参加する一方で、アフリカからの参加が特に少ない。図5 地球観測に関する政府間会合の組織地球観測に関する政府間会合は年1回開催される全加盟国、加盟機関が参加する総会、3年おきに開催される閣僚級会合で、地球観測に関する国際協力を推進する。活動の円滑な運営を行うため、執行国委員会と調整役としての事務局が総会の下に位置づけられる。この他、科学的知見等を提供する常設の専門委員会や、今回の評価・選定を行うような臨時の委員会が総会の下に設置されることがある。

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