Vol.5 No.3 2012
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−208−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)座談会:価値の創造とシンセシスで気が付かなかった価値が見えてくると思います。赤松 シナリオを書くことで、自分の中にあったシナリオが見えてきて、それを繰り返すことで未来的な意味のシナリオが書けるようになる、そういうスキルが獲得できるような気がします。小野 シナリオをつくることが第一歩で、それを他の人に提示して、批判を受けたり、切磋琢磨したり、優劣をつけられたり、というプロセスが本来あってしかるべきなのですが、現状は最初のシナリオ作りの段階からプアなのですね。石川 その使命を担っているのは産総研だと思います。企業は利益の最大化を狙っているから、シナリオを出さない。大学は、普通に考えて、シナリオをもっている人がほとんどいない(笑)。産総研は研究開発をやるだけでなく、シナリオという形で社会に対してどんどん発信してほしい。小野 そうなのです。それが産学官連携だと思っています。石川 産総研が大きなシナリオを幾つも出す。このシナリオは、研究成果から、マーケットから、技術予測から書いてあるというようにいろいろなパターンがあって、なおかつ否定されるようなシナリオ、あるいは8割の人は賛成したけれども2割の人から反対されるようなシナリオ、そのほうが全面的に賛成されるシナリオより独創的です。価値創造のための人材の評価とは赤松 評価の話に移りますが、失敗を認める評価というのは当然難しいし、評価がそもそもできない可能性もありませんか。石川 これは、「やる・やらない」の問題です。社会が認める価値は偶然が作用する、時として技術的には正しい評価ではない、価値を生み出したかどうかの評価であるということを評価する側も、評価される側も、みんなが認める必要があります。もっと言うと、現代において新たなマーケットや価値を生み出した技術の中には、その原因は「シナリオがよくてうまくいったからだ」と言えるものが多く存在します。そう考えれば、この評価はできるできないの問題ではなく、やるかやらないかの問題です。小野 評価をするということは、リスクをとることですね。石川 そうです。前提として「不当な失敗」の人の評価を下げることが必要ですが、正当な失敗はゼロかプラスアルファ、うまくいった人は、例えば給料をポンと上げる。今の日本の文化は公平性や積み上げの根拠を言いがちなので不満が出るでしょうが、そこは共通の理解として、多少の偶然性が働くということをみんなが理解すれば、「あれは宝くじが当たったようなものだ」と。むしろ価値を生み出した人の評価が高くなったことをもって、全体のベクトルを動かすという力にもなる。赤松 どうしても評価というと、評価する側の態度が「ダメ出し」に走るじゃないですか。褒めるマインドをどうやってつくるかということも大きな課題ですね。石川 加点主義に直さないといけない。「これ、いいじゃないか」と。それで残りを引っ張る。加点主義の形としては給料、賞等があります。小野 表彰は業績を顕彰することによって、どういうことが今社会や組織に求められているのかを明示する効果があります。賞というのはもらう人のためにあるのではなく、もらわないその他の人たちのためにあるのだと思っています。赤松 評価もある種の文化なので、文化をつくっていくことが必要です。それには、やはり普段から声を出して主張しつづけるということなのでしょうね。石川 文化ができれば評価も楽になる。そこはニワトリとタマゴの問題をどう解決するかです。赤松 組織運営にも大きく関わります。石川 研究組織としては、プル型の組織とプッシュ型の組織とがあると思います。プッシュ型は、組織設計や意識赤松 幹之 氏

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