Vol.5 No.3 2012
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研究論文:地球観測データの統合的利用のための国際連携(岩男)−154−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)データが検索結果に反映されない一方で、レジストリに登録されていないデータが検索結果に反映されている場合があるといった網羅性の問題が指摘されていた。これらの問題を解決するためには、システム提供機関や利用者であるさまざまな分野の意思決定者の双方から構成される、地球観測データを共有し各種政策に反映させるための国際連携の場が必要であった。3 地球観測データの統合的利用のためのシナリオ地球観測データの統合的利用を実現するため、世界各国の地球観測機関が提供するさまざまな観測データ・サービスの統合的な利用を可能とする共通基盤を構築することが最重要課題である。地球観測データやモデル結果は数、量ともに現状でも膨大である。例えば産総研はアスター(ASTER)と呼ばれる地球観測機器で取得したデータをアーカイブしているが、2000年から2012年2月時点までのデータの数と量はそれぞれ約250万シーン、250テラバイトに達する。各国の保有する地球観測衛星の数は2012年に200機に達するとの試算もある[6]。地球観測衛星には複数の地球観測機器が搭載されることが多く、例えばアスターが搭載されたテラ衛星には5種類の地球観測機器が搭載されている。したがって、これら膨大な地球観測データを一か所に集積し、管理することは現実的ではない。地球観測データやサービスは、それらを取得・加工した機関がそれぞれ分散管理するのが合理的である。その代わりに、各機関が提供するデータやサービスに関する情報を一か所に登録することとし、ユーザーは登録された情報をもとに各機関のデータやサービスにアクセスすることとする。各機関がすでに分散管理しているデータやサービスに対してアクセス可能とする共通基盤を構築することにより、既存のデータやサービスについて新たな仕様に基づき改変を求める必要がなくなる。また、地球観測データの著作権やデータポリシーがそれぞれ異なるという運用上や政策上の理由からも分散管理が望ましい。地球観測データの統合的利用を目的としたシナリオを、図3を用いて説明する。2章で紹介したとおり、全球地球観測システム共通基盤を通じ、各機関により分散管理された地球観測データやサービスへのアクセスが実現する。全球地球観測共通基盤は3つの要素で構成される。共通基盤の構築の要件としてはそれぞれの構成要素について、運用堅牢性が担保される必要がある。どこか一つの構成要素が財政上の理由から運用が困難になった場合、共通基盤が機能しなくなるためである。構成要素に関する要件としては、アクセスの容易さ、データの網羅性といった技術的要件とさまざまな目的をもったユーザーに対して使い勝手のよいシステムであることが要件としてあげられる。4 国際的な連携活動4.1 国際連携に関する経緯地球観測の連携の重要性、さらに、科学的知見の政策地球観測データ統合利用システムの実現全球地球観測共通基盤の構築地球観測データベース(各機関による分散管理)運用主体レジストリクリアリングハウスウェブポータル(財政面等)運用堅牢性維持性(メンテナンス)網羅性(使用感)使い勝手品質(技術)アクセス性目標統合構成要素要件全球地球観測システム10年実施計画が策定されるとともに、国際組織「地球観測に関する政府間会合、通称GEO」、およびその運営事務局が設立第3回地球観測サミット(ブリュッセル)2005年全球地球観測システムの範囲と意図を定義した枠組み文書を採択(東京)第2回地球観測サミット2004年持続的な複数システムからなる地球観測システムの発展へ向けて行動を起こすための政治レベルでの態度表明の重要性を説いた宣言文を採択欧州委員会、日本、南アフリカ、米国が共同議長を務める臨時の地球観測作業部会設立第1回地球観測サミット(ワシントン)2003年小泉首相(当時)が「全球地球観測システム」を提唱G8エビアンサミット(エビアン)2003年行動計画において地球観測の国際的な協力の枠組みの重要性を提起持続可能な開発のための世界サミットRIO+10(ヨハネスブルグ)2002年成果会議(開催地)開催年表1 地球観測の連携に関する国際的な議論の経緯図3 地球観測データの統合的利用のためのシナリオ地球観測データの統合利用システムの実現を目標とした全球地球観測共通基盤の構築を行うに当たっての構成要素とその要件をシナリオとしてまとめた。

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