Vol.5 No.3 2012
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シンセシオロジー 座談会−204−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)価値の創造とシンセシス赤松 石川先生は、21世紀の知的生産構造は、実験や理論的証拠を積み重ねることによって「論=真理」を形成するアナリシス的方法と、独創性の高い仮説を提起し、それを実証することによって社会での価値を生み出すシンセシス的方法があり、この二つは相反するものではなく双対構造を成すものである、と主張されておられます。『シンセシオロジー(構成学)』の趣旨も相通じるところが大いにあるのではないかと思うのですが、小野さんから紹介いただけますか。小野 『シンセシオロジー』を発刊して丸4年が経ちました。産総研内部だけでなく外部にもかなり知られるようになってきまして、外部からの投稿も増えつつある段階です。科学技術の研究方法としてアナリシス(分析)的方法や要素還元的方法だけでなく、“シンセシス”(構成)的方法や“統合”的方法の必要性は以前から語られてはいるのですが、では実際に構成的研究や統合的研究をどう進めたらいいのかというと、中身はなかなか明確になっていなかったような気がします。産総研も工業技術院の時代から産学官連携を重視して大いに進めてきましたが、アカデミックなマインドの強い研究者たちからすると産学官連携はサイドワークのように見えていました。それではまずかろうと吉川(弘之)先生も思ったと思うのですね。これまで応用研究といわれてきたものにも立派な魂と論理があって、研究者が全力をつぎ込むだけの価値ある仕事のはずである、それをもっと浮き上がらせて、そこでいい仕事をしようじゃないか、という思いでこのジャーナルをつくりました。研究論文の投稿要件として、研究目標を明確に設定してほしい、研究目標と社会とのつながりを説明してほしい、つまり研究の社会的な価値を主張してほしい、目標を実現するために描いたシナリオを提示してほしい、選択した要素技術(群)を記述してほしい、要素技術間の関係とそれらを統合したプロセスを記述してほしい、結果を自己評価し将来の展望を書いてほしいといっています。現代に特有の複合的な問題に取り組む場合、単一の技術領域だけでは解決がむずかしく、研究に多様な領域の技術が巻き込まれてくるのは必然です。研究の駆動力は学術的な好奇心に対して社会的な価値の実現になります。研究の結果得られる解も唯一でなく、複数の同等解があり、その間には優劣はあるかもしれないけれども、本質的に○、×はないと考えています。では、ある研究結果が正しいかどうかをどう評価したらよいのか。構成的研究はどういう基準で評価したらいいのか、どういう観点から査読するかについてはむずかしい問題ですが、我々としてはある一定の方向性をもってやってい東京大学の石川正俊教授は、分析的な真理の探求だけではなく新しい社会的な価値の創造が必要であると主張され、2004年4月から2006年3月まで東京大学の副学長を務められ、独創性の高い研究成果を社会に導入していくための制度作りをされてきました。シンセシオロジーが目指す研究成果の社会導入を大学の立場で実践されている石川教授と小野編集委員長(当時)と赤松編集幹事が座談会を行い、価値創造に向けた社会づくりについての議論を行いました。石川 正俊小野 晃赤松 幹之東京大学大学院情報理工学系研究科教授産総研(シンセシオロジー編集委員長(現編集委員))産総研(シンセシオロジー編集幹事)座談会出席者シンセシオロジー編集委員会

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