Vol.5 No.3 2012
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研究論文:地球観測データの統合的利用のための国際連携(岩男)−153−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)的には環境政策、エネルギー政策といった意思決定に反映されることである。これまでの地球観測では、陸域、海洋、大気といった観測対象ごとに地上から衛星までを用いた観測連携が行われてきた。例えば、世界気象機関では全球観測システムを構築し、静止気象衛星から極軌道衛星、地上気象観測網の連携を図っている[3]。また、国際連合食糧農業機関を中心に全球陸域観測システムも構築されている[4]。さらには、統合地球観測戦略パートナーシップという地球観測衛星を開発・運用する宇宙機関とグローバルな観測システムの間の協力と調整の強化も行われてきた[5]。このように分野ごと、あるいは衛星観測分野において観測の連携は進んでいた。ところが意思決定の現場では、さまざまな観測データを組み合わせる必要が多数生じる。例えば、洋上風力発電の建設を考える場合、大気のデータだけでなく、海洋のデータが必要になる。これまでの意思決定では、こういった観測が目的別に行われることが多かった。政策貢献、意思決定の視点に立った地球観測データの統合的利用のための国際連携を実現するには、さまざまな組織が個々の目的のために行っている観測データやサービスを共通に利用可能とする基盤システムが必要となる。これを全球地球観測システム共通基盤(GCI)と呼ぶ。図1に全球地球観測システム共通基盤概念図を示す。地球観測データの共通基盤システムには主に以下の3つの基本要素技術が必要とされる。一つ目はウェブポータル(GWP)である。ウェブポータルはユーザーがさまざまな機関が提供する地球観測データやサービスを利用するためのウェブ上のインターフェース機能を提供する。二つ目はクリアリングハウス(CL)である。クリアリングハウスはインターネット上に分散管理された地球観測データやサービスを一斉検索し、利用できるようにする機能を提供する。3つ目はコンポーネント・サービスレジストリ(CSR)である。レジストリは地球観測データやサービスを登録するデータベースである。これら3つの要素を組み合わせて地球観測情報の利用システムが構成される。図2に地球観測データの利用システムの全体構成を示す。2009年時点においては、共通基盤の構成要素としてのウェブポータルとクリアリングハウスについて、私企業を含む3機関がそれぞれ独自に運用しており、レジストリについては米国ジョージメイソン大学が米国地質調査所(USGS)の委託を受けて運用していた。世界のユーザーはこれら複数機関が提供する構成要素をそれぞれ組み合わせて利用し、地球観測データやサービスにアクセスしていた。ウェブポータルやクリアリングハウスが複数あることは、システムの冗長性の観点からは望ましい。しかし、ウェブポータルについては、操作方法や対応可能なオペレーティングシステムやウェブブラウザが異なる、ウェブブラウザ利用時に独自のプラグインを要求する、あるいはとても高性能のパソコンでないと動作が不安定になるといった使い勝手の悪さの問題が指摘されていた。また、クリアリングハウスについては検索手法の違いにより、本来存在するはずの!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!全球地球観測システム共通基盤健康生態系農業水エネルギー災害気象気候生物多様性出口 政策貢献地球観測データ・サービスサービス+警報、予報+処理…モデル結果シナリオ気象衛星地球観測衛星 海洋船観測+ブイ航空機観測★地上計測意思決定支援未登録のデータ地球観測データユーザー分散管理された地球観測データ・サービス全球地球観測システム共通基盤サービスコンポーネント・サービスレジストリ(メタ情報登録)クリアリングハウス(検索)ウェブポータル(表示)図1 情報とサービスの統合的利用における全球地球観測システム共通基盤の役割地球観測情報やサービスを国際的に連携し、ユーザーがさまざまな分野の政策決定に科学的知見を活用することを支援するシステム。図2 標準化された共通基盤の構成とデータ・サービスへのアクセス共通基盤の主要構成要素はウェブポータル、クリアリングハウス、コンポーネント・サービスレジストリである。実際のコンポーネント(データ)やサービスは、各機関がそれぞれ分散管理し運用を行っている。

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