Vol.5 No.3 2012
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研究論文:糖鎖研究のための基盤ツール開発およびその応用と実用化(成松)−197−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)クチンへ結合した糖タンパク質をコアタンパク質認識蛍光標識抗体で検出する。ガラス面断片から励起光を入射し全反射させることにより、ガラス面の周囲200μmくらいの厚みでエバネッセント波を発生させる。この厚みの中に入った蛍光物質だけがシグナルを出すように設計している。このアレイは極めて感度が高く微量の糖鎖でも検出できる(図5)。これまでの液体クロマトグラフィーや質量分析器を用いた糖鎖解析では、糖鎖をタンパク質から切り離して蛍光標識しなければならず、多くの工程数と時間を要していたため、それと比較すると圧倒的に簡便な手法である。感度は抗体の質に依存するが、おおむねウェスタンブロットで検出可能な量(ng程度)の標的糖タンパク質があれば分析できる。また抗体により標的糖タンパク質の結合シグナルのみが特異的に検出されるため、サンプル調製は免疫沈降等の簡易精製程度で問題なく分析が可能である。事実、我々はこれまでに50種を優に超える糖タンパク質を、血清や細胞培養上清や組織切片中から数10 ng程度を効率よくエンリッチし、抗体オーバーレイ・レクチンマイクロアレイで比較糖鎖解析することに成功している。この技術の候補分子検証試験への活用により、実効性の高い糖鎖バイオマーカー開発パイプラインが確立された[31][33][38][39]。この研究戦略については詳解したものがあるのでそちらを参照されたい[40]。このレクチンアレイ糖鎖プロファイリングシステムは、産総研の久野、平林を中心に(株)GPバイオサイエンスとの共同で開発され、同社より市販されている。5 開発した糖鎖研究基盤技術を駆使しての疾患バイオマーカーの探索と実用化5.1 疾患糖鎖バイオマーカー探索の戦略プロテオミクス技術により疾患バイオマーカー探索が盛んに行われている。プロテオミクスでは、タンパク質の定量的な差を見いだしてバイオマーカーとしている。しかし我々の基本的概念はそれとは根本的に異なる。我々のグライコプロテオミクスによるバイオマーカー探索では、疾患になるとタンパク質部分は同じでも糖鎖部分の構造が変化することを指標にして、質的に変化した糖タンパク質を見いだすことに主眼を置く。疾患により糖鎖構造の変化した糖タンパク質は、いわば翻訳後修飾異性体とでも呼べるだろう。生体内の糖鎖バイオマーカー(翻訳後修飾異性体)は極めて微量なはずである。特に、癌の早期診断マーカーは、早期であればあるほどその量は極めて微量であり、いきなり血清から探索しても発見には至らない。そこで、これまで開発した技術を駆使して、図6にあるように癌マーカー開発戦略を提案した。①まず癌組織、非癌組織からRNAを抽出しReal-time PCR法により網羅的に糖鎖遺伝子の発現量を調べる。結果、癌において変化している糖鎖構造が推定できる。②癌組織から抽出された総糖タンパク質、培養癌細胞が分泌する総糖タンパク質の糖鎖をレクチンマイクロアレイにより糖鎖プロファイル比較解析を行う。特徴的なレクチンをプローブとして選び出す。 レクチンアレイ基板産総研開発入射光 蛍光検出 カメラ エバネッセント波 < 200 nm エバネッセント波励起型蛍光検出法GP バイオサイエンス社と共同開発 GlycoStation®によるスキャニング 蛍光標識プローブ糖鎖糖ペプチド糖タンパク質Cy3/Cy5/TMR/Alexa488、ICCD 組織学的解析(>1 ㎜2 領域)病理切片非癌部癌部非癌部癌部非癌部癌部レクチンNormalized signalスキャンデータ図5 レクチンマイクロアレイ使用例:微小組織切片中糖タンパク質の比較糖鎖解析でエンリッチに有用なレクチンを絞り込む。

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