Vol.5 No.3 2012
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研究論文:糖鎖研究のための基盤ツール開発およびその応用と実用化(成松)−196−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)糖鎖結合部位の特定も可能となった。このときAsn脱アミド化した非糖ペプチドが混在して、脱糖鎖ペプチドと区別できなかったので、酵素反応を安定同位体酸素-18標識水(H218O)の中で行い、溶媒の酸素-18をペプチドに取り込ませることによって糖鎖付加部位を標識し、高精度な糖タンパク質同定を可能とした(IGOT法)。LC/MS法とIGOT法を組み合わせた方法により、当センターの梶らはきわめてハイスループットに大量の糖タンパク質同定を現在も精力的に推し進めている。現在の高速質量分析システムを用いると1 mgの組織抽出タンパク質から500−1,000種の糖タンパク質が全工程10日ほどで同定できる[36][37]。要素技術6. MSn法による糖鎖構造同定法の開発タンデムMSn法の原理は、測定したい糖鎖のまず質量を測定する(MS1の質量)。それにアルゴン、ヘリウム等の希ガスを弱いエネルギーで衝突させ糖鎖を壊し(Collision Induced Dissociation:CID)、生じた各フラグメントの質量を測定する(MS2)。さらにMS2で壊れた各フラグメントを別々に取り出し、それにもう一度、CIDを行ってMS3の質量を測定する。原理的には、サンプルの量さえ十分にあれば、MSnまでの測定が可能である。実際には、どんな微細な糖鎖構造の違いも、MS4まで行えばCIDによる崩壊パターンの違いによって区別が可能である(図4)。できる限り多くの標準糖鎖に関して、MS4までのデータを蓄積しデータベース(以下、DB)に格納した。未知の構造を同定しようとする測定者が、まずその糖鎖のMS2のデータをとり、それをDBに送る。MS2のデータプロファイルから次にどのフラグメントをMS3測定すべきか、DBは格納されているデータから即座に判断して測定者に指示をする。指示にしたがってMS3のデータをとり、再度DBに送る。この時点で、答えが出る場合が多いが、さらにMS4のデータどりが必要な場合もある。このMSn法による糖鎖構造同定システムは、産総研の亀山、成松を中心に、(株)島津製作所、(株)三井情報の3者により共同開発され、(株)島津製作所から市販されている。要素技術7. 抗体オーバーレイ・レクチンマイクロアレイの開発生体サンプルを用いて、糖タンパク質上の病気の進展にともなう糖鎖変化を検証するためには、「高スループット、高感度、高再現性、迅速性」に優れた比較糖鎖解析技術が必須である。このニーズに最も合致する技術は、当センターの久野、平林らが開発した抗体オーバーレイ・レクチンマイクロアレイである[38]。レクチンマイクロアレイとは43種の特異性の異なるレクチンを同一基板上に固相化したものであり、通常ガラス1枚あたり複数のサンプルを同時に分析できる形態をとる。抗体オーバーレイ検出法は、分析対象である糖タンパク質は蛍光標識等の処理をせずにそのままレクチンマイクロアレイに添加し反応させ、基板上のレ400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 Mass/Charge PA = pyridylamino Mass/Charge 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 MS/MS GlcNAc1-2Man1-6GlcNAc1-4Man1-3 Gal1-4GlcNAc1 2 MS/MS Man1-4GlcNAc1-4GlcNAc-PA Fuc1 6 1-4GlcNAc1-2Man1-6GlcNAc1-4Man1-3 GalGlcNAc1 2 Man1-4GlcNAc1-4GlcNAc-PA Fuc1 6 MS3 ( 1280)m/zMS3 ( 1280)m/z図4 多段階タンデム質量分析による異性体の判別

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