Vol.5 No.3 2012
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研究論文:糖鎖研究のための基盤ツール開発およびその応用と実用化(成松)−194−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)により糖タンパク質の機能および細胞の表現型がどのように変化するかを1)、2)、3)の基盤技術を用いて解析した。「合成」、「構造」、「機能・バイオマーカー」の3本柱は相互に連携しながら発展し、「合成」では機能性オリゴ糖の合成や糖鎖改変タンパク質生産等、「構造」では糖タンパク質製剤、幹細胞の品質管理等、「機能・バイオマーカー」では新たな診断技術等の産業応用、医用応用に展開している。4 基盤ツール開発のための各要素技術開発図3に、今まで開発してきた糖鎖研究のための要素技術をリストにした。以下に各要素技術について概説する。要素技術1. バイオインフォーマティクス技術によるヒトゲノムデータベース等からの糖転移酵素遺伝子の探索最初にとりかかったのはバイオインフォーマティクス技術を駆使して、糖鎖遺伝子の候補遺伝子を網羅的に探索することであった。(株)三井情報から出向していた菊池が、ゲノムデータベース等から、新規の糖鎖遺伝子候補を探しだすソフトウエアを開発した。このソフトウエアは、単にアミノ酸ホモロジーの探索にとどまらず、次のような特徴をもった糖鎖遺伝子を探しだした。①N-末端の近くに疎水性アミノ酸の膜結合部位をもつもの。その長さは、18〜22アミノ酸残基くらいであり、細胞膜結合タンパク質より少し短い。②続いて幹部位が存在するもの。幹部位はプロリンに富みセリン・スレオニンの数も多い。③酵素活性ドメインに続くもの。300〜400アミノ酸くらいの活性ドメインであり、システインが数個存在することが多い。2価カチオンの結合部位であるDXDの3アミノ酸モチーフがある。このような特徴をもつ新規の候補遺伝子を約100種類探しだし、主にヒト培養細胞のRNAからcDNAを作製し、PCR法により酵素の全長をコードする候補遺伝子をすべてクローニングした。要素技術2. 糖転移酵素遺伝子の各種発現ベクターへの組み替えとリコンビナント酵素の基質特異性解析この要素技術開発には旧・糖鎖工学研究センター発足時の多くのメンバー(栂谷内、佐藤、後藤、工藤、立花、張、久保田、澤木等)が携わった。糖転移酵素はゴルジ膜や粗面小胞体(endoplasmic reticulum)膜に結合した膜タンパク質である。リコンビナント酵素として糖鎖のin vitro合成に使用するためには、可溶型の酵素にする必要がある。そこで候補遺伝子の膜結合部位を欠如させ、酵素活性ドメインと思われる部分をFLAGタグ付きのゲートウエイ・ベクターにつなぎ替え、ヒト胎児由来腎臓芽細胞(HEK293T細胞)に導入し、リコンビナントタンパクとして上清中に分泌させ、抗FLAG抗体で粗精製した。多くの数の候補遺伝子由来のリコンビナント酵素の活性をいかにして網羅的に簡便にすばやく検出するか、にアイデアを絞った。ラジオアイソトープ(RI)でラベルされた9種類のヒトのドナー基質を購入して、それを混ぜ合わせた。アクセプター基質として、単糖、オリゴ糖を準備した。また培養細胞から糖脂質Glyco-catch method/IGOT (glycoproteomics) J. Biochem., 132, 103 (2002) Nature Biotechnol., 21, 667 (2003) Frontal affinity chromatography Biochim. Biophys. Acta ,1572, 232 (2002) Methods Enzymol., 362, 353 (2003) Methods Enzymol., 415, 341 (2006) Lectin microarray J. Proteome Res. , 5, 808 (2006) Mass spectrometry(糖鎖全般)Glycogene qPCR array J. Proteome Res., 8, 1358 (2009) Glycogene-modified cells/mice107, 11900 (2010) PNAS, 104, 15829 (2007), PNAS, 286, 5803 (2011)J. Biol. Chem., Glyco-Pathology DDS technology SMME method(ムチン解析)Glycan synthesis (glycan, glycoprotein, glycopeptide) SE method(硫酸化糖鎖・GAG解析)Angew. Chem. Int. Ed., 44, 4547 (2005) 66, 8740 (2006) Cancer Lett., 260, 137 (2008) Glycogene Library Glycoconj.21, 17 (2004) J.,102, 4572 (2005) Glycobiology, 1194 (2006) 他 ,15報、 , 5報等Biochim. Biophys. Acta, 1760, 578 (2006) Bioinformatics Database (JCGGDB) Glycan libraryBy GlycosyltransferaseBy Yeastバイオインフォーマティクス技術 糖鎖合成技術 糖鎖構造解析技術 糖鎖遺伝子解析技術 糖タンパク質解析技術(グライコプロテオミクス) 糖鎖改変・機能解析 糖鎖認識タンパク質解析技術糖鎖の医用応用関連技術 糖鎖遺伝子 糖鎖遺伝子改変マウス・細胞 機能解析 糖鎖構造プロファイリング技術 糖鎖遺伝子ライブラリ-2, 2529 (2007) Nature Protocols, 105, 3232 (2008) PNAS, 577 (2007) Nat. Methods, 77, 4719 (2005) Anal. Chem., 534, 283 (2009) Methods Mol. Biol., 2, 851 (2005) Nature Methods,, 349, 1301 (2006) BBRCPNAS,Cancer Res.,J. Biol. Chem. FEBS lett.図3 産総研・糖鎖医工学研究センターが開発・保有する糖鎖解析のための基盤技術 (抜粋)

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