Vol.5 No.3 2012
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研究論文:糖鎖研究のための基盤ツール開発およびその応用と実用化(成松)−193−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)1)糖鎖遺伝子:糖鎖遺伝子ライブラリー構築プロジェクト(Glycogene Project: GG project)により、ヒト由来糖鎖遺伝子の網羅的探索と解析を行った。糖タンパク質の完成には、タンパク質部分は1種類の遺伝子発現で済むが、糖鎖部分は数十種類におよぶ糖鎖遺伝子発現の共同作業で合成される。とすると糖鎖遺伝子群がすべて解明されて生体内での糖タンパク質、糖脂質の生合成機構が明らかになるはずである。最終目的である糖鎖機能の解明に向けて、まずは糖鎖遺伝子の全容を解明する必要があった。2)合成:網羅的に取得した糖鎖遺伝子からリコンビナント酵素として糖転移酵素を発現し、それを組み合わせて種々の構造の糖鎖を合成し糖鎖ライブラリーを作成した。有機化学合成法により糖鎖を合成するのはとても労力と時間がかかる。まだ画期的な有機化学合成法は考案されていない。有機溶媒を用いるので環境に負担がかかる。さまざまな構造の糖鎖を自由自在に合成するのは不可能であり、1種類の構造を合成するのに長い時間を要する。唯一の長所は、いったん合成法が確立できれば工業レベルの大量合成が可能なことである。一方、酵素学的合成のために、網羅的に取得した糖鎖遺伝子をリコンビナント酵素として発現させた。種々の酵素の組み合わせにより、短時間にかなり自由自在に種々の構造の糖鎖を合成できるようになった。糖転移酵素は極めて基質特異性が高いので、1種類の酵素は1種類の構造しか合成しない。したがって基質特異性の判明した酵素を用いれば、目的の構造の糖鎖を短時間で容易に合成できる。水系の反応なので環境にやさしい。短所は、ヒト由来の酵素なので極めて不安定であり、かつ酵素の生産にはコストがかかる。ヒトの糖鎖構造を合成するために下等生物の糖転移酵素で代替えはできない。したがって大量合成はできないが、少量で多種類の糖鎖合成には酵素法が適している。3)構造:糖鎖エンジニアリングプロジェクト(Structural Glycomics Project: SG project)において、構造の判明した糖鎖を標準物質として、糖鎖構造解析技術の開発に供した。数mgの量ならば酵素法で多種類の構造を合成できる。標準糖鎖(および糖ペプチド)を利用して二つの構造解析法を考案した。タンデム質量分析法(以下、MSn法)とレクチンアレイ法である。それぞれに長所・短所があり使用用途が異なる。MSn法の長所は、①誰でも簡単に解析ができる。②糖鎖構造を決定できる。短所は、①解析に比較的多量の糖鎖を必要とする(数μg程度)。②解析すべき糖鎖は精製物でなければならない。一方、レクチンアレイ法による構造解析技術の長所は、①感度がとても高い。②抗体オーバーレイ法を用いることにより、目的の糖タンパク質を完全精製する必要はない。③複数のサンプル間の糖鎖プロファイリング比較を簡便に行える。短所は、①糖鎖構造の完全決定はできない。②レクチンの供給体制がまだ完備されていない。4)機能・バイオマーカー:糖鎖機能活用技術開発プロジェクト(Medical Glycomics Project:MG project)において、生体内で糖鎖構造の変化 糖鎖の産業利用・医用応用の促進(糖タンパク質製剤、幹細胞の品質管理)等合成糖鎖(機能性オリゴ糖)糖鎖改変糖タンパク質生産(医薬等)等糖鎖の産業利用医用応用(新たな診断技術、バイオマーカー)等[SG Project][GG Project][MG Project][GG Project][SG Project]機能分子の構造情報合成糖鎖の利用改変体 ・酵素酵素遺伝子改変体(糖鎖改変技術)モデル系(疾患)の提示構造解析有用糖鎖の構造情報有用糖鎖の機能構造合成バイオマーカー機能つくるはたらきかたち糖鎖遺伝子図2 糖鎖研究の三本柱糖鎖遺伝子ライブラリー構築プロジェクト:GG project、糖鎖エンジニアリングプロジェクト(構造解析技術): SG project糖鎖機能活用技術開発プロジェクト(糖鎖機能解析、糖鎖バイオマーカー開発): MG project

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