Vol.5 No.3 2012
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研究論文:観光地の集客施策に対する効果測定の試み(山本)−189−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)執筆者略歴山本 吉伸(やまもと よしのぶ)1994年慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。博士(工学)。同年、通商産業省工業技術院電子技術総合研究所。2000年スタンフォード大学客員研究員。2005年シナジーメディア社取締役、2006年JR東日本企画技術顧問、2008年サービス工学研究センター主任研究員、現在に至る。ヒューマンインタフェース、認知科学の研究に従事。情報処理学会、日本心理学会、日本認知科学会、各会員。査読者との議論議論1 論文全体質問・コメント1(馬場 靖憲:東京大学先端科学技術研究センター)この研究テーマについては、小川 進著,イノベーションの発生理論−メーカー主導の開発体制を越えて−,千倉書房 (2000)という有力な先行研究があります。同書を上手く利用すると分析の高度化によって現象の理解が進み、さらに論文がより読みやすくなると考えられるので、同書の一読を強く望みます。回答1(山本 吉伸)査読者のご指摘の文献をただちに買い求め、すぐに読みました。ご指摘のとおり、この文献の中で提示されている概念はとても重要かつ有用であると私も感じました。これまで自分の取り組みを技術移転やイノベーションという観点からはあまり捉えていなかったのですが、情報の粘着性という強力なコンセプトを援用すれば新たな観点からの考察ができると強く感じました。ご指摘の修正を加えるためには多少の文面の調整では足らず、大幅に見直すことになりました。議論2 サービスの生産性質問・コメント2(馬場 靖憲)この論文は、著者が開発したOSF-POSの導入によってサービスの生産性が向上したことが、当該観光地における同機器の普及と継続的利用に貢献したことを示唆(主張)しています。この場合、何をもってサービスの生産性とするか、その内容をより明確にして分析を進めることが望ましいところです。生産性向上から誰が利益を得るか、という視点から、(i)観光客をサービス享受者とした場合、生産性向上が観光客の動向(数、または、消費金額)にどのような影響をもたらしたか、また、(ii)導入企業をサービス享受者とした場合、OSF-POSの導入が異なった特性をもつ企業の収益にどのような影響上田惇生・佐々木実智男訳『イノベーションと企業家精神』ダイヤモンド社) (1985).http://www.kinosaki-spa.gr.jp/yumepa/世界のNFC市場戦略2010~NFC・FeliCa最新動向~,㈱シード・プランニング (2010).電子マネーに関するアンケート調査(第4回), ㈱野村総合研究所 (2010).国土交通省, 平成22年版 観光白書 (2010).[10][11][12][13]を与えたか、非定量的であっても何らかの分析と考察が望ましいと思います。回答2(山本 吉伸)この論文でのサービス生産性向上の第一義的な意味は「集客施策の客観的評価による適切な投資判断を中長期にわたって実施すること」です。この点についても明確になるよう心がけました。議論3 地元事業者におけるシステムの改善コメント3(馬場 靖憲)地元の事業者に導入したシステムを継続的に利用してもらうためには、地元のイニシアティブでシステムの改善ができる体制を構築することが鍵になります。これは重要な論点なので、他の箇所を適宜、カットして、節約した文字数を利用して、この論点の補強をしてください。例えば、地元の発想力をさらに活性化するための、技術的支援の可能性とか、システムにこういう機能が付加されれば、さらに面白い等、将来に向けた提案をお願いします。回答3(山本 吉伸)5.3節はタイトルを含めて見直しました。全体的に整理し、気付きを支援する方策として「頻繁にデータに接すること」と「気付きやすい形にして提示すること」を挙げました。「頻繁にデータに接すること」は具体化策として「メールで通知すること」の他、「毎日でも見たくなるデータを提供すること」を挙げました。議論4 POSの意味コメント4(内藤 耕:産業技術総合研究所サービス工学研究センター)POSを「Pont of Service」「Point of Sales」の両方の略称として使っています。一般的には後者がPOSの略称として認知されており、前者はOSF-POSとして統一するか、別の略称にしてください。また論文の内容からOSF-POSのPはPointではなく回遊行動等のサービスプロセスの把握が大きな特徴ですので、それをProcessと表現するのも一案と思いますので是非ご検討ください。また「調査システムとして認識されることはほとんどなく」は実態を反映しておらず、むしろ調査システムとして十分に活用されていないのが事実です。回答4(山本 吉伸)Processに変更とのご提案ありがとうございます。たしかに意味的にサービス過程を含有することを表現できるように思います。しかし、そもそもPOSという名称を説明のために導入した当初の趣旨はPoint of Salesシステムのメタファですので、その意味内容が異なるものであって偶然略称が同一であった、ということとはやや趣を異にするようにも感じます。それゆえ、意味内容に踏み込むためには一層の説明を必要とするのではないかと思料します。この論文のPOSは、Point of Salesの略称として記述し、Point of Serviceの意味で使用する時は、POS(Point of Service)あるいは、開発したシステムの名称OSF-POSに統一しました。より明確にするために注2を追加しました。「調査システムとして認識されることはほとんどなく」の部分は、趣旨を明確にするため以下のように変更いたしました。「これを使う販売員にとっては調査システムというより日常の販売業務を潤滑に処理するための道具として認識されている」。

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