Vol.5 No.3 2012
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シンセシオロジー 研究論文−152−Synthesiology Vol.5 No.3 pp.152-161(Aug. 2012)1 はじめに東日本大震災では地球観測の分野における科学技術のあり方に関し、いくつかの教訓が得られた。まず、世界規模の地球観測連携の重要性である。日本が運用する陸域用地球観測衛星(ALOS)が震災後1カ月余りしか経過していない2011年4月22日に観測を停止した。これにより日本は宇宙からの“眼”を一つ失うこととなった。しかし、各国が衛星を用いた震災地域の集中観測を行い、データの欠落を補い、有効なデータ共有が図られた[1]。このような、地球観測の国際連携やデータの共有により、科学データの信頼性が向上した。一方で、地球観測で得られた科学的知見が地震対策の政策の現場で十分に活用されていなかったという指摘もある[2]。地球観測データから得られた知見を政策に反映させる仕組みの重要性が再認識された。2 地球観測データの利用の現状地球観測では、地上や海洋の観測網から航空機や気象衛星までを含む各種観測機器が用いられる。地球観測で取得されたデータをもとに予測モデルや変動シナリオ、各種情報サービスが提供される。地球観測の目的は、生物多様性、エネルギー、健康問題といった地域規模から全球規模の各種問題解決のためのデータ収集であり、最終岩男 弘毅さまざまな地球観測データが世界各国で個別に取得・加工・利用されている中で、それらの情報の統合的な利用を容易にするための全球地球観測システムが必要とされている。そのため国際的な合意のもとに組織された地球観測に関する政府間会合が全球地球観測システムのための共通基盤を構築した。複数の機関から共通基盤を構成する要素の提供の申し出があったが、政府間会合は構成要素のそれぞれについて公正な評価を行い、最適な構成要素を組み合わせた共通基盤を推奨した。特定の構成要素を選定して共通基盤を推奨することは、全球地球観測システムに関連するいくつかのデジュール標準を策定することに相当した。日本は独自の構成要素の提供を申し出なかった関係で、構成要素を評価するにあたって中立的立場をとり、デジュール標準の策定においてイニシアティブをとることができた。その結果、日本で広く利用されている方法のいくつかをデジュール標準に採用することができた。今回の経験は、一つの事例として、日本にとって今後の国際標準化活動のあり方を示唆している。地球観測データの統合的利用のための国際連携− 全球地球観測システムの共通基盤の標準化 −Koki IwaoInternational cooperation for the utilization of earth observational data in an integrated manner- Development of de jure standardization of the common infrastructure for the global earth observation system of systems -While each country separately obtains, processes, and utilizes earth observation data, there is a pressing need for a common infrastructure to facilitate integrated use of these resources. At an intergovernmental meeting, an international agreement was reached to construct a common infrastructure for the global earth observation system. Several organizations have submitted components for this infrastructure. These submissions were fairly evaluated, and the most suitable components were recommended for inclusion into the infrastructure system, at the intergovernmental meeting. Recommendation of specific infrastructure components establishes de jure standards for the global earth observation system. Since Japan has not offered its own components, it has been able to take a neutral stance on formulating de jure standards. Consequently, the standards widely used as de facto in Japan have been selected as de jure standards. This experience could be a model case for the development of a strategy for international standardization activity.キーワード:国際標準、デジュール、デファクト、全球地球観測システム、地球観測に関する政府間会合、全球地球観測システム共通基盤Keywords:International standard, de jure, de facto, global earth observation system of systems, intergovernmental group on earth observations, GEOSS common infrastructure産業技術総合研究所 地質調査情報センター 〒305-8567 つくば市東1-1-1 中央第7Geoinformation Center, AIST Tsukuba Central 7, 1-1-1 Higashi, Tsukuba 305-8567, Japan Original manuscript received October 31, 2011, Revisions received April 16, 2012, Accepted April 16, 2012

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