Vol.5 No.3 2012
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研究論文:観光地の集客施策に対する効果測定の試み(山本)−184−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)ことがわかった。これらの推測方法の妥当性を検討するため、12月16日〜19日の4日間、全7か所の外湯の出口でアンケート調査を実施し、その中で同行者の人数と子供のいる家族かどうか等を尋ねた。アンケート印刷は合計2,444件、回収は1,619件(回収率66 %)であった。親子グループと推定された人のうち、一人でもアンケートに答えて、その人が子ども連れの家族であると回答しているものを正解としたとき、推定精度(正解率)は92 %であった。OSF-POSのデータ分析から、実用的な精度でグループ構成を推定できることがわかった。ところで11 %の親子連れは多いのか少ないのか。文献[13]によれば、国内観光旅行に占める家族旅行の割合は51.4 %と最大のシェアを占めている((財)日本交通公社「旅行者動向2009」)。家族旅行といっても必ずしも子供券を必要とする子供がいる家族とは限らないし、親子連れの場合には宿から外出することを避ける傾向があると想像されるから、推定結果と直接比較することはできないが、その点を勘案しても11 %は少ないと言える。城崎温泉では若いカップルか熟年夫婦をモデルにしたポスターしか作成していなかったが、本年度から親子連れをモデルとしたポスターも作成するようになった。4.2 滞留・経路分析OSF-POSによるデータから分かる外湯への立ち寄り状況は直接的に利用されている。鞄店では付近の外湯の入浴者の男女比を確認し、男性客が多い日はビジネスバッグを店頭に並べ、女性客が多い日はファッショナブルな製品を店頭に並べる等の工夫がなされている。ところで、改札口に設置されたOSF-POSでは、入場時の時刻しか記録できない。しかし、入場時の時刻の蓄積から各観光拠点の滞在時間を推定することができる。図4左は、「「さとの湯」から「他の外湯」」に移動した人数と、さとの湯に入場してから他の外湯に入場するまでの時間をグラフにしたものである。図4右は「「地蔵湯」から「他の外湯」」の場合のグラフである。観光拠点ごとにこのようなグラフを作成することができる。このグラフから、さとの湯から他の外湯にいく人の多くが地蔵湯に向かっていることがわかる。また、地蔵湯からさとの湯への移動時間は49分であるのに対し、さとの湯から地蔵湯に移動する時間は76分であって55 %も長い。これは、さとの湯に滞留する時間と地蔵湯に滞留する時間の差が表れており、さとの湯のほうが55 %長く滞留していると考えられる。これらの分析を通じて滞留時間を推測することで、混雑状況の将来予測が可能になる。4.3 閑散時間分析地元飲食店にとって、昼食時間に町に人が多いことが望ましい。図5は、7:00から23:00まで外湯が開いている時間中の利用者数をグラフ化したものである(2010年12月累計)。朝食前に外湯に行く人は一定数いるものの、10時を超えると全く人がいなくなる様子がわかる。10時までは宿泊客がいるのだから、滞在時間をあと2時間延長してもらえるような企画を推進すべきであると言える。現在、10時~14時に一度だけ入浴できる宿泊者向け(正確には、チェックアウトした人向け)の外湯券等が議論され始めている。4.4 イベント評価図6は、2011年8月の「宿泊者数(図上)」と「街全体の売上高(図下)」である。8月の13日~16日はお盆休み期間なので宿泊者数はもっとも多かった。しかし街全体の売上高は決して多くない。街全体の売上高が最大だったのは26日である。しかし宿泊者数は必ずしも多いとはいえない。8月の晴天の平日は花火を実施したが、売り上げには影響は見られない。それに対して26日は「灯籠流し」があった。灯籠流しとは先祖の霊を送る趣旨で火の灯った灯篭を川に流す行事である。灯籠がゆっくりと川を下っていくのを見ながら、街中を比較的長く歩くイベントである。このイベントにかかるコストは花火よりも低い。よって、灯籠流しは花火よりも売り上げに貢献するイベントであると評価できる。図4 さとの湯からの移動(左)、地蔵湯からの移動(右)鴻の湯まんだら湯御所の湯一の湯柳湯地蔵湯2回さとの湯から204278563533602126645157分128分165分139分123分76分93分(人数)0400800120016000分50分100分150分200分(平均移動時間)鴻の湯まんだら湯御所の湯一の湯柳湯さとの湯2回地蔵湯から(人数)0400800120016000分50分100分150分200分(平均移動時間)1772375027691197387117140分117分136分89分60分49分161分

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