Vol.5 No.3 2012
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研究論文:観光地の集客施策に対する効果測定の試み(山本)−183−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)ソフトウエア開発費の低減観光地やショッピングモール等で実施されているサービスは多岐にわたる。それらのサービスを個別に開発するのでは効率的とは言えない。そこで我々は、オープンサービスフィールド内のサービスを「権利確認型サービス」「権利更新型サービス」に分けることを提案している[6][7]。あらゆるアプリケーションをどちらかに当てはめることで、用いるべきソフトウエアモジュールが決まり、ソフトウエアの開発効率は高まると期待できる。(a)権利確認型サービス利用者がもっているIDが有効かどうかを判定してから提供するサービスである。権利確認型サービスは大量の観光客が次々と入場し、その後にサービスが提供される施設で利用される。例えば、映画館や美術館、資料館等有料の施設は権利確認型サービスであり、その改札口にOSF-POSが設置される。(b)権利更新型サービス利用のたびに情報を更新する必要があるサービスである。例えば、電子マネーは権利内容の変動(デポジット金額を消費する等)が発生するたびに情報を更新しなければならない。IDメディアが書き込み不可の場合、利用のたびにサーバーに権利変動を通知する必要がある注7)。この二つのサービスは、要求される反応速度が異なる。権利確認型サービスは、大量の観光客が次々と訪れるような拠点なので、素早く反応しなければならない。顧客がIDを提示してからサーバーに問い合わせをするのでは時間がかかりすぎる。そのため、(a)のアプリケーションでは端末にサーバー上のデータをキャッシュして保持し、高速に反応を返すライブラリを用いる。一方(b)のアプリケーションでは、一般的に利用者が端末の前にいる時間が長い。そのため、利用者のID提示に対して必ずサーバーに問い合わせを行ったとしても利用者にとって許容できる。例えば買い物のときに利用する場合は、レジの前にいる時間は10秒以上ある。既存のクレジットカードでの支払いでも数秒待つことは許容されている。(b)のアプリケーションとして構成すれば、そのロジックをすべてサーバー側に実装できる。端末のロジックを最小限にできるのでハードウエアに必要な費用を低減させることができるし、種類の異なる端末を用意する場合のメンテナンス費用を下げることができる。合意形成費用の低減街全体のサービス改善のアイデアは意外と多くの人がもっている。個別にヒアリングすると「こうしたらいいのではないか」といったアイデアを聞かされることが多い。しかし街全体の会合でそのようなアイデアが語られることは多くない。理由はさまざまではあるが、その一つには合意形成費用に対する認識がある。アイデアを出した人が実際にそれをやることになったとしても、街全体の合意を取りつけることが大変なので、実現には膨大な労力がかかる。結果として、多くの住民は「そこまでの苦労には耐えられない」と考える。どうせできないのであれば、最初からアイデアを出すことをためらうことになってしまう。そこでOSF-POSには部分実施機能を実装している。例えば配布したIDを利用して「うちの店では予約サービスを作ってみたい」と思ったとする。このとき、このサービスをまず自分の店だけで実施する、ということができるようになっている。既存のサービスには一切影響を与えず、新しいサービスを特定の店舗だけでスタートさせることができるので、全体の合意を得る必要はない。他者がそのサービスを導入したいと申し出れば、直ちに展開することもできる。このような枠組みは街づくりのためのITには必須である。3.3 機能デザインと技術デザインの架け橋技術デザインの枠組みに機能デザインを当てはめる作業は主に技術側(研究者)が担当していたが、最終的なインタフェースが確定するまで、幾度も研究者側と地元関係者の間で試作と試用が繰り返された。具体事例は5.2節で詳細に検討する。図3はOSF-POS上のつけ払いサービスによって買い物をしている様子である。4 データ活用事例の提示OSF-POSの導入以後、外湯の入場者数や混雑状況、街全体での売上高等はだれでも閲覧できるようになった。以下に、データ活用例を挙げる。4.1 回遊行動のグループ構成推定同じ宿から出発しておよそ同じ時刻に同じ拠点を移動している人々は同一グループである可能性が高い。昨年12月のデータを分析したところ、単独で行動しているのは3,561人(12 %)、大人のみの2人組11,424人(40 %)、うち男女混合の2人組(大人のみ)は8,284人(29 %)、男女混合の3人〜5人の組6,155人(21 %)、大人と子供(子供券)の両方を含む3人〜5人組3,262人(11 %)である図3 OSF-POSでの買物

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