Vol.5 No.3 2012
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シンセシオロジー 研究論文−179−Synthesiology Vol.5 No.3 pp.179-189(Aug. 2012)1 研究の目的−サービス品質改善に向けた最適設計ループGDPの7割を占めるサービス産業の生産性を向上させることは、活力ある日本を取り戻すうえで重要な課題である。サービス生産性を向上させるためには勘と経験に頼ってサービス改善を繰り返すのではなく、データに基づいたサービスの品質改善に向けた最適設計ループを現場に導入する必要がある[1]。一般的に観光地では毎年、集客関連イベントや集客施策を実施しているが、各イベントや施策の効果について客観的データを収集することはまれで、次年度の投資を決定する際には経験と勘による選定が行われている。そのため、効果的なイベントに注力するといった施策がとれないだけでなく、効果が疑わしいイベントであっても中止の決断が難しく、イベント数が年々増加することにもなりかねない。街づくりに責任のある人々にとって、これは大きな懸念事項である。このような場合、合理的な判断で効果の高いイベントにより資源を割り当てる品質改善の最適設計ループを作ることが求められる。しかも、そのループは中・長期にわたって持続されうるものでなければならない。観光地とは一定地域内での「体験」を売るサービスであるから[2][3]、個々のイベントによってもたらされた人の増減や移動が、そのイベントの評価そのものと言える。ところがこれまでの歩行者流動調査[4]では中長期間継続して大規模な調査を実施することはもちろん、開催イベントごとに調査することすら(主に費用上の問題によって)困難であった。そこで我々は、2009年4月から、典型的な観光地である城崎温泉を対象として、定量的かつ継続的に観光客の行動を観測する技術の実用化を目指したプロジェクトを開始した。この論文ではまず、我々の興味の対象である観光地とはどのような場所なのかについて定義し、調査事業がなぜ困難であるのかを説明する。続いて、この困難を回避するために調査システムにインセンティブをもたせるという我々の山本 吉伸観光地では毎年なんらかの集客施策を実施しているが、施策の効果測定はほとんど行われていない。集客施策によって観光客がどれくらい変化したのか、回遊経路がどのように変化したのかを計測することは観光地づくりの基礎データになるが、合理的費用で定量的かつ継続的に回遊行動を捕捉する技術がなかった。我々は観光地等で定量的かつ継続的に観測・調査を実現する「オープンサービスフィールド型POS(Point of Service)」を開発し、実用化に向けたプロジェクトを実施した。この論文では、兵庫県城崎温泉における事例を、地元関係者と技術者との共同作業という観点から考察する。観光地の集客施策に対する効果測定の試み− オープンサービスフィールドにおける行動調査技術 −Yoshinobu YamamotoEvaluating the effects of actions taken to attract visitors to sightseeing areas- An Open Service Field behavior survey technology -Every year, actions are taken to attract more visitors to sightseeing areas, yet the effects of these actions are rarely evaluated. Basic data for assessing effects can be obtained by measuring the change in visitation patterns upon the introduction of actions. We did not have the technology, however, to track the migration behavior quantitatively and successively with reasonable cost. To address this problem, we developed an Open Service Field Point of Service (OSF-POS) method that is practical and cost-effective. A case study of this method for the Kinosaki spa resort (Hyogo Prefecture, Japan), highlighting collaboration with local authorities, business circles, and engineering experts, is reported in this paper.キーワード:オープンサービスフィールド、回遊行動調査、アンケート調査、POSKeywords:Open Service Field, pedestrian research, questionnaire survey, POS産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 〒135-0064 江東区青海2-3-26Center for Service Research, AIST 2-3-26 Aomi, Koto-ku 135-0064, Japan Original manuscript received February 9, 2012, Revisions received May 7, 2012, Accepted May 9, 2012

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