Vol.5 No.3 2012
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研究論文:新機能性ゲル材料と試薬化(吉田)−178−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)執筆者略歴吉田 勝(よしだ まさる)1994年3月東北大学大学院理学研究科化学専攻博士課程後期課程化学専攻修了、博士(理学)取得。同年4月工業技術院物質工学工業技術研究所(現 産業技術総合研究所)入所。2002-2004年JSPS若手研究者在外派遣制度により、米国カリフォルニア大学バークレー校化学科客員研究員(J. M. J. Fréchet教授研究室)。2008年10月より、ナノシステム研究部門スマートマテリアルグループ研究グループ長。専門は、有機化学的な手法を利用した新規機能性材料の開発。技術戦略マップ2010 経済産業省「ナノテクノロジー分野」(独)科学技術推進機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)報告書「ナノテクノロジー・材料分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版」(2011年6月).長田義仁, 梶原莞爾他:ゲルハンドブック, エヌ・ティー・エス (1997).M. Yoshida, N. Koumura, Y. Misawa, N. Tamaoki, H. Matsumoto, H. Kawanami, S. Kazaoui and N. Minami: Oligomeric electrolyte as a multi-functional gelator, J. Am. Chem. Soc., 129 (36), 11039-11041 (2007).M. Yoshida: Ionic gelators: oligomeric and polymeric electrolytes as novel gel forming materials, The Chemical Record, 10, 230-242 (2010). (Invited Review)N. Koumura, H. Matsumoto, H. Kawanami, N. Tamaoki and M. Yoshida: Tuning of solubility and gelation ability of oligomeric electrolyte by anion exchange, Polym. J., 42, 759-765 (2010).S. K. Kundu, T. Matsunaga, M. Yoshida and M. Shibayama: Rheological study on rapid recovery of hydrogel based on oligomeric electrolyte, J. Phys. Chem. B, 112, 11537-11541 (2008).A. P. Nowak, V. Breedveld, L. Pakstis, B. Ozbas, D. J. Pine, D. Pochan and T. J. Deming: Rapidly recovering hydrogel scaffolds from self-assembling diblock copolypeptide amphiphiles, Nature, 417, 424-428 (2002).S. K. Kundu, M. Yoshida and M. Shibayama: Effect of salt content on the rheological properties of hydrogel based on oligomeric electrolyte, J. Phys. Chem. B, 114, 1541-1547 (2010).Q. Wang, J. L. Mynar, M. Yoshida, E. Lee, M. Lee, K. Okuro, K. Kinbara and T. Aida: High-water-content mouldable hydrogels by mixing clay and a dendritic molecular binder, Nature, 463, 339-343 (2010).V. A. Sinani, M. K. Gheith, A. A. Yaroslavov, A. A. Rakhnyanskaya, K. Sun, A. A. Mamedov, J. P. Wicksted and N. A. Kotov: Aqueous dispersions of single-wall and multiwall carbon nanotubes with designed amphiphilic polycations, J. Am. Chem. Soc., 127, 3463-3472 (2005).吉田 勝, 特開2010-143869Y. Misawa, N. Koumura, H. Matsumoto, N. Tamaoki and M. Yoshida: Hydrogels based on surfactant-free ionene polymers with N,N’-(p-phenylene)dibenzamide linkages, Macromolecules, 41, 8841-8846 (2008).Y. Matsuzawa, H. Kato, H. Ohyama, D. Nishide, H. Kataura and M. Yoshida: Photoinduced dispersibility tuning of carbon nanotubes by a water-soluble stilbene as a dispersant, Adv. Mater., 23, 3922-3925 (2011).K. Okano, M. Taguchi, M. Fujiki and T. Yamashita: Circularly polarized luminescence of rhodamine B in a supramolecular chiral medium formed by a vortex flow, Angew. Chem. Int. Ed., 52, 12474 -12477 (2011).[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15]参考文献査読者との議論議論1 構成学と分子設計コメント(一條 久夫:㈱つくば研究支援センター)Synthesiologyでは、後に続く研究者の参考となるよう、研究目標を実現するために選択した要素技術、要素間の関係、それらの統合プロセス等を記すこととされています。その点に留意されると読者にとって貴重な論文となるのではないでしょうか。コメント(清水 敏美:産業技術総合研究所ナノテクノロジー・材料・製造分野)化学物質のSynthesisは、そもそも各種官能基の構成学を基本とするものであり、分子設計および合成手法の試行錯誤こそシンセシオロジーそのものだと思います。そこで、Synthesiologyの構成学としての記述に編成し直すために、これまでのゲル化剤にはない高機能化と簡便合成を目標課題として行った分子設計について模式化して議論することをお勧めします。また、ゲル化剤の分子構造を要素ごとに分解し、これまでのゲル化剤の各要素を今回どのように変換し、さらに新たな要素をどのような理由や課題により追加し、分子設計を行ったかを図示してはいかがでしょうか。回答(吉田 勝)「分子設計とその合成アプローチ」=「一つの構成学」という考え方は、とても参考になりました。この観点から模式図を新たに作成して、内容の加筆修正を全般にわたって行いました。議論2 化学試薬としての出口コメント(清水 敏美)化学試薬としての販売という新たな実用化のための出口が示されています。可能であれば、化学会社あるいは試薬会社が試薬として販売するための判断あるいは判定基準等があれば明示してください。全世界において、これまで多種多様な有機化合物が合成されていますが、そのすべてが試薬化されているわけでは決してありません。すべての合成化学物質の試薬化率(何パーセントの合成化学物質が試薬として販売されているか)はどれくらいで、全試薬産業でどのような市場規模があるのか、それらに関する数値的情報があれば参考情報として記述が欲しいところです。回答(吉田 勝)試薬化に至った企業側の動機付けについて担当者は、当該試薬を用いることで、①これまでに不可能であったことが可能になる(先進性)、②これまでになかったものが生まれる(発展性)といった要素が重要と語っています。この先進性と発展性を有する化学物質であれば、試薬として広く研究開発の場で使用されることで、市場性が生まれる可能性があります。試薬化率に関しては、まず現時点で有機無機化合物を含めて約6536万の化学物質がCAS(Chemical Abstracts Service)データベースに登録されています。他方、世界有数の試薬会社であるSigma-Aldrichの試薬データベースには、現在18.7万の商品が試薬として登録されています。他の化学会社の試薬数を考慮して、仮にこの3倍の数が試薬化されているとして、試薬化率を仮に計算すると56.1/6538 = 0.86 %となります。したがって、試薬化がとても狭き門であることは間違いないと思います。上記の内容を抜粋する形でこの論文に記載しました。

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