Vol.5 No.3 2012
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シンセシオロジー 研究論文−171−Synthesiology Vol.5 No.3 pp.171-178(Aug. 2012)1 研究の背景社会生活の基盤を支える多種多様な材料の中で、例えば軽く柔らかなプラスチック類の基になる有機高分子は、一般に「ソフトマテリアル」と呼ばれる物質群に属する。ソフトマテリアルは、無機固体の堅く強固なイメージに対して、有機物のしなやかな性質を巧みに利用した物質であるが、そのうち「ゲル」と呼ばれる固体と液体の中間的な性質をもつソフトマテリアルは、その生体適合性の高さから医薬品等のバイオ分野、食品・化粧品、ひいてはペンキやインク等各種塗料の粘度調節剤等、実社会の広範な分野で利活用されている(図1)。一般にゲルは、相対的に少量共存する物質が形成する化学的もしくは物理的なネットワーク構造によって大量の液体が保持(トラップ)され、固有の流動性を失った状態の擬固体物質である。溶媒である水が擬固体化したヒドロゲルとしては、食品であるゼリーやこんにゃく、また化粧品等に用いられるヒアルロン酸、衛生用品等に用いられる吸水性高分子等が例として挙げられる。また水以外の溶媒からなるゲルの例としては、有機溶媒の一種である食用油を擬固体化する油固化剤の利用がすでに一般に広く知られている。このゲルを、材料としての機能に注目して考えた場合は、吸水性や保湿性にとどまらず、吸着・分離、各種センシング機能、防振・緩衝材、さらにはアクチュエータのような力学エネルギー変換材料への応用も期待されている。これらのゲルにさまざまな機能を付与したいわゆる「機能吉田 勝種々の溶媒系を擬固体化できる新しいゲル化剤を開発した。水等の極性溶媒に親和性を有する電解質構造をもつこの材料は、極めて簡便に大量合成できる。さらに、イオン液体等電解液の擬固体化、歪崩壊後の自己修復性、さらにはカーボンナノチューブとの容易な複合化等、既存材料にはないさまざまな特性をもち、現在では新しいゲル化用化学試薬として販売が開始されている。新機能性ゲル材料と試薬化− 機能性ソフトマテリアルの新展開 −Masaru YoshidaNovel functional gels and their commercial distribution as chemical reagents- New development of functional soft-materials -We have recently developed novel gel-forming materials based on organic electrolytes. The organic electrolytes can be prepared by a simple one-pot reaction applicable to large scale production. The materials show the following remarkable characteristics. (a) They can be used for gelation of not only water but also electrolyte solutions of polar organic solvents including ionic liquids. (b) Rapid self-repairing of the formed gel is possible even after collapse by mechanical stress. (c) The formed gel can be used as an efficient dispersant for single-walled carbon nanotubes. The materials have been commercially distributed as chemical reagents for gelation.キーワード:ゲル、電解質、電解液、イオン液体、化学試薬Keywords:Gels, electrolyte, electrolyte solution, ionic liquids, chemical reagents産業技術総合研究所 ナノシステム研究部門 〒305-8565 つくば市東1-1-1 中央第5Nanosystem Research Institute, AIST Tsukuba Central 5, 1-1-1 Higashi, Tsukuba 305-8568, Japan Original manuscript received February 7, 2012, Revisions received March 21, 2012, Accepted April 6, 2012図1 ゲルが利用されているさまざまな商品群

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