Vol.5 No.3 2012
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研究論文:圧電体薄膜を用いた圧力センサーの開発(秋山ほか)−167−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)す。エンジンの回転数を正確に一定とすることができないため、測定回ごとに出力値ばらつきはあるが、およそ一定の出力を示し、計40時間後でも出力の低下はほとんどなく、安定して動作した。当初の目標は、実機エンジンで燃焼圧の測定が可能であることを確認することと、市販センサー並みの出力波形を得ることであったが、市販センサーとおよそ同様な応答波形を得ることができ、当初の目標は達成できた。市販センサーは、脆い水晶の単結晶を細かく加工し、複数の単結晶片を組み合わせているが、結晶軸を揃えて切り出した小さい水晶の板を組み合わせる複雑な構造のため、素子の作製にはかなりの費用と技術が必要である。事実として、比較に使用した市販センサーは数十万円ととても高価なものである。一方、筆者らが研究開発を行っているAlNセンサーは、金属板上に作製したAlN薄膜を電極で押さえつけただけのとても簡単な構造であり、量産車用のセンサーとして1万円以下を目指している。4.2 車載に向けた小型化開発が進むにつれて、量産車では電源の違い、使用条件の過酷さ、価格等から、実験室で使用しているようなチャージアンプを搭載することができないという問題に直面した。そこで、すでに別の目的で車に搭載されているアンプを使用することになったが、そのアンプを使用するためには、数倍のセンサー出力が必要であった。また、近年の高性能なエンジンでは、高圧燃料噴射システムの採用やバルブ数の増加等によって、その構造がますます複雑化しているため、上記の実験で使用したような大きな匡体をもつ燃焼圧センサーを量産車のエンジンに取り付けるスペースがなく、匡体を小さくすることが求められた。圧電体の場合、発生電荷量は受圧面積に比例するため、センサー出力を増加させるためには受圧面積を増加させなければならない。しかし、受圧面積を広げると、センサー素子のサイズが大きくなり、エンジンに設置できなくなるという問題が発生する。著者らはセンサー出力を高めつつ、体積を小さくする方法の検討を行った結果、センサー素子を縦に積み重ねることによって、センサー素子の表面積を増加させ、体積を小さくする方法を考え出した。しかし、この積層構造を実現するためには、薄膜表面または基板を匡体に接触させることなく積層させなければならないという問題が発生した。そこで、筆者らは図11に示す素子構造を考案した[11]。円形の金属基板の中心に孔を開け、その周辺を残して全面にAlNを成膜し、AlN表面を銅箔で覆った素子を、中心の孔に信号線を通して積層する構造である。AlNは絶縁体であるため、信号線を匡体から絶縁すればAlN薄膜の基板側と表面が接触しなくなる。市販センサーとAlNセンサーを比較して図12に示す。AlNセンサーの外径は4.6 mm、センサー素子の厚さは0.2 mmの金属基板の両面に約3μmの厚さでAlNを製膜した後、厚さ10μmの銅箔電極で包んで図11に示した素子を作製し、図12のように組み立てた。AlNセンサーの筐体外径は10 mm、ピッチ1 mmのネジになっており、これでエンジンに装着する。市販センサー(Kistler 6001)のエンジン取り付け用アダプターを装着した場合の外観とおよそ同じである。市販センサーAlNセンサー点火プラグ時間(秒)発生電荷(pC)市販センサーAlNセンサー0.025005010015020000.02時間(時)発生電荷(pC)403020100050100150図8 センサーを2サイクルエンジンに取付けた様子図9 2ストロークエンジン運転中のセンサーの出力波形エンジン回転数:約4000 rpm図10 AlNセンサーの出力のエンジン運転時間依存性エンジン回転数:2000 rpm×20 minの断続運転

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