Vol.5 No.3 2012
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研究論文:圧電体薄膜を用いた圧力センサーの開発(秋山ほか)−166−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)金基板よりも小さいため、加熱によって引張応力が増加する。その結果、ステンレス試料では400 ℃を超えるとAlN薄膜の破断強度を超える応力が局所的に発生する可能性がある。これに対して、インコネル試料の場合には、800 ℃においてもAlNの破断強度を超えることはない。これらの結果により、AlN薄膜の破断を防ぐためには、金属基板の材質を選択することが重要であることがわかった。3.2 高温環境下における電気的物性の評価インコネル基板上に作製したAlN薄膜の高温環境下での圧電性を調べた。一定周波数で印加圧力の振動振幅を変えたときのAlN薄膜の発生電荷の振幅変化を図6(a)に示す。AlN薄膜は10~300 MPaの高圧領域で直線性を示した。普通車の燃焼室内の最高圧力が数十MPaであるため、AlN薄膜は燃焼圧センサーとして十分な耐圧性をもっていることがわかった。また、印加圧力の正弦振動振幅300 MPaにおけるAlN薄膜の周波数応答を図6(b)に示す。ここでは、AlN薄膜のゲインは1 Hzでの出力値で規格化している。高い周波数域(3~30 Hz)ではゲインはおよそフラットであり、位相のずれも小さかった。自動車のエンジンの回転数が数千rpm(数十Hz)であることから、AlN薄膜は十分な周波数応答性を示すことがわかった。さらに、高温環境下での測定を行った結果、AlN薄膜の圧電応答性が450 ℃で54時間全く変化しないことも確かめた(2006年)[9]。4 センサーの試作および評価4.1 エンジンによる性能評価AlN薄膜素子を使用できる見込みが立ったため、燃焼圧センサーの試作を行った(2007年)[10]。図7に作製したAlN薄膜燃焼圧センサーの外観写真とセンサー構造の模式図を示す。このセンサーの受圧部は、AlN薄膜素子を円板状の内部電極で押さえ、信号線で電荷を取り出す簡単な構造で、筐体と絶縁をとるためにアルミナ板とアルミナ管を用いている。AlNセンサーの燃焼圧応答特性を調べるために、単気筒の2サイクルエンジン(HONDA LEAD 90、HF05)を使用し、図8に示すようにセンサーをシリンダーヘッドの頂部近くに設置し、燃焼室の圧力を測定した。性能比較を行うために、エンジンの研究用に最も普及しているKistler社製燃焼圧センサー(型番6001)を用いた。無負荷でエンジン回転数を約4000 rpmにしたときのAlNセンサーの出力を、市販センサーと比較して図9に示した。市販センサーの発生電荷量が140~160 pCであることから、燃焼室内の圧力は1.1~1.2 MPaである。AlNセンサーの出力波形には外部ノイズがほとんどなく、また市販センサーとおよそ同じ波形が得られた。さらに、AlNセンサーの耐久性を評価するために、約2000 rpmで20分間運転し、冷却後再度20分間運転することを繰り返したときのセンサー出力の変化を図10に示05010015020025001002003001 Hz / 10 Hz / 30 Hz0.1 Hz-20-15-10-5050.1110100050100150200(a) (b) 周波数(Hz)圧力(MPa)ゲイン(dB)発生電荷(pC)位相位相(°)ゲイン-3dB絶縁管(アルミン, 2 mm×1 mm)ガスケット(Cu, 0.5 mmt)絶縁板(アルミン, 1 mmt)電極(Inconel 600, 1 mmt)M14×1.25 AIN素子信号機押棒図6 (a)周波数0.1~30 Hz間におけるAlN素子の発生電荷の圧力依存性、(b)150 MPaの加圧変化に対するAlN素子のゲインと位相の周波数応答性図7 AlNセンサーの外観と内部の模式図

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