Vol.5 No.3 2012
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研究論文:圧電体薄膜を用いた圧力センサーの開発(秋山ほか)−165−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)すかどうかを調べるために、反応性スパッタリング法を用いて、AlN薄膜をシリコン単結晶基板上に作製し、AlN薄膜の圧電応答性を調べた。その結果、作製したAlN薄膜の圧電応答性は、0.1~1.6 MPaの圧力範囲で良好な直線性を示し、0.1~100 Hzの領域で良好な周波数特性も示したことから、センサー材料として十分に可能性があることを確認した(2005年)[5]。また、AlN薄膜の電気モデルによる基本特性の解析を行い、エンジンの燃焼圧と同程度の0.4~8.0 MPaの範囲で良好な直線性が得られ、測定値と電気モデルが一致することから、AlN薄膜が燃焼圧センサー用検知材料として、使用可能であることを示した(2005年)[6]。さらに、AlN薄膜の電気抵抗は、温度が上昇するとアレニウス式にしたがって著しく低下していく。電気抵抗が低下すると、圧電体に生じた電荷は計測システムで検出する前に減衰してしまい、測定できなくなる。そこで、AlN薄膜の体積抵抗率と比誘電率の温度依存性を調べた。図3にその結果を示す。AlN薄膜の体積抵抗率は、851 ℃においても106Ωcm以上を示し、誘電率はわずかに増加しただけであり、AlN薄膜は800 ℃以上でも計測が十分に可能であることがわかった(2006年)[7]。しかし、単結晶のシリコン基板を使用したため、センサー素子は機械的な衝撃に弱く、耐久性に優れたセンサー素子の開発が必要となった。そこで、筆者らは金属基板上にAlN薄膜を作製し、機械的な衝撃に対する耐久性の向上を図った。金属基板材料には、耐熱性に優れている超合金の一つであるニッケル系のインコネルを選択した。スパッタリング法によって、多結晶であるインコネル基板上にAlN薄膜を作製したところ、結晶配向した薄膜を作製することに成功した(2006年)[8]。図4(a)にインコネル基板上に作製したAlN薄膜の断面のSEM写真を示す。その薄膜のXRDパターンを図4(b)に示す。AlN薄膜の断面部分からは、薄膜が基板表面に対して垂直に成長した、繊維構造の微細な結晶粒子から構成されていることが観察された。インコネル基板が多結晶体にもかかわらず、得られたAlN薄膜はウルツ鉱型のAlNの0002面の回折ピークのみを示し、c軸配向性を示していた。ピエゾメーターを用いて測定した圧電定数(d33)は2.4 pC/Nであり、単結晶のAlNの半分程度の値であったが、圧電性を示すAlN薄膜をインコネル基板上に作製することができた。図5に、フェライト系ステンレスとインコネル基板上に作製したAlN薄膜に生じる面内応力の温度依存性とAlNの曲げ強度σb(AlN)を示す。いずれの基板を用いた場合にも、応力分布範囲が広く、両試料には明確な差が生じることがわかった。ともに400 ℃で作製しているが、作製後にはステンレスと比較して約2倍の圧縮応力がインコネル試料には作用している。また、AlNの熱膨張係数は両合温度, /℃T体積抵抗率, /Ωcmρ比誘電率900800700600500400300200100005101520101210111010109108107106体積抵抗率比誘電率 インコネル基板AlN薄膜X線回折強度2θ [deg.](0002) AlNInconel 30 40 50 60 70 80 (a) (b) 図3 AlN薄膜の比誘電率と体積抵抗率の温度依存性図4 インコネル基板上に作製したAlN薄膜の断面SEM写真(a)とXRDパターン(b)800700600500400300200100-2.5-2.0-0.5-1.0-0.50.00.51.0引張応力,σT/GPa温度, /℃TTDepoσb(AIN)インコネルフェライト系ステンレス図5 各基板材料上に成膜したAlN薄膜の面内応力の温度依存性

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