Vol.5 No.3 2012
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研究論文:圧電体薄膜を用いた圧力センサーの開発(秋山ほか)−164−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)・圧電体薄膜の作製技術の開発・圧電体薄膜の電気的物性評価技術の開発・高温環境下における圧電体薄膜の物性評価技術の開発・センサー素子とセンサー筐体の設計・作製技術の開発・エンジンによるセンサーの性能評価技術の開発現在も進行中の第2段階では、これらの要素技術の統合による量産車用燃焼圧センサーの構成材料の選定、センサーの試作、性能評価試験を継続して実施している。以上のシナリオのもと、次世代の高性能エンジン制御技術の開発に貢献することを目指している。研究開発の開始当初は、AlN薄膜の圧電特性を明らかにすることができれば、市販燃焼圧センサーの検知材料である圧電体部分の代替によって、量産車用燃焼圧センサーの開発は大きく前進するものと想定していた。しかし、実際に共同研究に取り組んでみると、自動車部品会社も圧電型燃焼圧センサーを研究した経験があまりなかった。そのため、圧電体薄膜の作製技術の開発から、圧電体薄膜の電気的物性評価技術の開発へと研究が進むにつれて、自動車部品会社や大学等との協力体制の下で、高温環境下における圧電体薄膜の物性評価技術の開発、センサー素子とセンサー筐体の設計・作製技術の開発、エンジンによるセンサーの性能評価技術の開発までを平行して実施することとなってしまった。性能評価試験においては、市販の圧電型燃焼圧センサーを評価の基準に設定した。圧電型燃焼圧センサーの出力(感度)はセンサーの形状に大きく左右されるため、センサー出力値を直接比較するのではなく、市販センサーの応答波形にどれだけ近づいたかという点で評価した。量産車に搭載するためにはある定められた範囲のセンサー出力が必要であることから、性能評価後にはセンサー出力を調整できる構造も意識しながら研究開発を進めた。また同時に、初期段階の性能試験では問題とならなかった試作センサーの実用上の問題点を精査し、改良改善を行うことによって、より完成度の高い燃焼圧センサーの実用化を図っている。以上の研究開発は独立行政法人産業技術総合研究所と自動車部品会社、学校法人明治大学が主に共同で実施し、薄膜作製技術や高温環境下における物性・現象、力学的解析技術、センサー設計技術等に関して、個々の専門知識と経験を集結させた。産総研生産計測技術研究センターチームは、圧電体薄膜作製技術の開発や圧電体薄膜の電気的物性評価技術の開発、高温環境下における圧電体薄膜の物性評価技術の開発、センサー素子とセンサー筐体の設計・作製技術の開発、エンジンによるセンサーの性能評価技術の開発を担当した。明治大学チームはセンサー素子とセンサー筐体の設計・作製技術の開発とエンジンによるセンサーの性能評価技術の開発を担当した。自動車部品会社チームは、自動車部品会社の立場から、センサー素子とセンサー筐体の設計・作製技術の開発と過酷環境下におけるセンサーの性能評価と耐久性試験を担当した。産総研エネルギー技術研究部門チームは過酷環境下におけるセンサーの性能評価と耐久性試験を担当した。なおこの研究開発を通じて、チーム間、メンバー間の情報共有と意見交換の場を設け、また性能試験や応用実験には積極的に相互に立ち会う等、共同プロジェクトのメリットを最大限に活用するよう務めた。以下、この論文では燃焼圧センサーの研究開発のなかで、特に中核をなす要素技術開発および試作品の性能評価の概要を示す。3 圧電体薄膜の作製および評価3.1 圧電体の選択および薄膜作製筆者らの研究チームでは、表1に示すような理由、1)圧電体の中で1200 ℃と最も高い使用限界温度を示す。2)重金属等の有害元素を含まない。3)水晶の3倍の圧電性を示す。4)弾性率が高く(ヤング率:314 GPa)高圧に対しても圧電性の線形性を保持する等から、窒化アルミニウム(AlN)を検知材料として選択した[4]。AlNを検知材料に選択することによって、耐熱性という課題は容易にクリアできた。また、圧電体の発生電荷をセンサーの出力信号にすれば、センサー出力が圧電体の厚さに全く依存しないことから、検知材料の形態を単結晶ではなく、薄膜にすることを考えついた。薄膜化することによって、単結晶の脆さという短所を克服できるという大きなメリットが得られ、機械的な衝撃に対する高い耐久性が期待できる。さらに、量産性に優れている半導体プロセスを使用することが可能となり、低価格化にも有効である。他の有望な圧電体と比較して、AlNは元素の数が少なく、薄膜化しやすいという長所もあることがわかった。したがって、筆者らの研究チームでは、当時としては世界に先駆けてAlN薄膜を燃焼圧センサーの検知材料に採用し、AlN薄膜の作製技術の開発に着手した。まず、AlN薄膜が報告されているような圧電応答性を示薄膜の作製しやすさ使用限界温度(℃)圧電定数d33(pC/N)良可不可不可不可優100012009202503501200635625026La3Ga3SiO14LiNbO3GaPO4Pb(Zr,Ti)O3SiO2AIN表1 代表的な圧電体の特徴比較

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