Vol.5 No.3 2012
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シンセシオロジー 研究論文−162−Synthesiology Vol.5 No.3 pp.162-170(Aug. 2012)1 はじめに1.1 量産車用燃焼圧センサーの必要性二酸化炭素等による地球温暖化や、2008年頃から続いている原油価格の高騰等の影響によって、自動車エンジンの燃費向上と低公害化への対応が喫緊の課題となっている。また、日本では2015年から「重量車燃費基準」、欧州では2014年から「ユーロVI」、米国では「新排ガス規制の完全実施」等の内燃機関の排出物に関する法的規制が段階的に実施される。そこで、これらの規制への対応として、各自動車メーカーは直噴エンジン車、クリーンディーゼル車、バイオ燃料車、ハイブリッド車、電気自動車、水素自動車および燃料電池車等のさまざまな新しい自動車の研究開発を実施している。しかし、少なくとも今後10~20年間は、石油を使用する内燃機関をもつ自動車が主流であることに変わりはないであろう。車体の軽量化やタイヤの性能アップ等と共に、燃焼効率の向上や排気ガスの浄化技術は現在もなお重要な課題であり、燃焼状態を電子制御する技術等が活発に研究されている。これらの技術には圧力や温度、流量、振動等のさまざまな計測技術が必要である。特に圧力計測には、センサー開発の必要性、装着性、精度、応答性、経済性から判断して、得られる情報の量と質の両面で期待が大きい。特に燃焼室の燃焼状態の高精度制御のためには、燃焼室の圧力を直接・高速で測定することができる、400 ℃以上の耐熱性を有する新たな筒内型燃焼圧センサーの開発が必要とされている[1]。1.2 燃焼圧センサーの現状圧力センサーとして最も普及しているピエゾ抵抗式半導体圧力センサーは、小型で高感度であり、量産性が高く、市場の83.2 %(数量ベース)を占めている[2]。しかし、このセンサーの使用限界温度は120 ℃程度である。そこで耐熱性向上のために、ゲージ下部への断熱層(アルミナ)の挿入や、サファイヤダイアフラム(隔膜)の使用、耐熱性に優れた酸化クロムや炭化ケイ素(SiC)薄膜をゲージ素材に使用する等の研究が行われているが、いまだ十分な耐熱秋山 守人*、田原 竜夫、岸 和司この論文では、著者らが世界で初めて窒化アルミニウム(AlN)系薄膜圧電体を用いて開発した、量産車用燃焼圧センサーの研究開発の経緯について述べる。この研究開発の構想当時(2003年以前)は、単結晶を用いたセンサーが一般的であり、薄膜圧電体を用いた燃焼圧センサーは未開拓領域であり、その有用性は認識されていなかった。しかし、この研究開始以降、国内外の自動車部品会社や大学などが興味を示し、実用化に向けた共同研究を実施した。その結果、冷却を必要とせず、小型で高感度の燃焼圧センサーの開発に成功した。現在、著者らはセンサーの実用化を目指し、センサー信号の安定化、センサー構造の簡素化などの課題を解決するために研究を行っている。圧電体薄膜を用いた圧力センサーの開発− 量産車用燃焼圧センサーへの応用 −Morito Akiyama*, Tatsuo Tabaru and Kazushi KishiDevelopment of a pressure sensor using a piezoelectric material thin film- Application to a combustion pressure sensor for mass-produced cars -In this paper, we show the process of research and development of a combustion pressure sensor using an aluminum nitride (AlN) thin film, which we developed for the first time in the world. At the time we envisaged the R&D in 2003, most sensors used a piezoelectric single crystal. The research of a combustion pressure sensor using an AlN thin film was an unexplored field, and the usefulness of an AlN thin film was not yet well recognized. However, since we started the R&D, domestic and foreign auto parts companies and universities showed interest, and we carried out joint research with a domestic company and a university toward practical use of the sensor. Consequently, we have succeeded in developing a sensor of small size, high sensitivity, and without the need of cooling. We now conduct research to resolve the problems such as stabilization of sensor signals and simplification of the sensor structure for practical use.キーワード:燃焼圧センサー、量産車用、窒化アルミニウム薄膜、圧電型、積層構造Keywords:Combustion pressure sensors, mass-produced cars, aluminum nitride thin films, piezoelectric type, laminate structure産業技術総合研究所 生産計測技術研究センター 〒841-0052 鳥栖市宿町807-1Measurement Solution Research Center, AIST 807-1 Shuku-machi, Tosu 841-0052, Japan *Original manuscript received January 27, 2012, Revisions received March 21, 2012, Accepted March 23, 2012

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