Vol.5 No.3 2012
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研究論文:地球観測データの統合的利用のための国際連携(岩男)−161−Synthesiology Vol.5 No.3(2012)査読者との議論議論1 全般コメント(小野 晃:産業技術総合研究所)この論文は各国や各機関が個別に取得し加工した種々の地球観測データを、ユーザーが統合的に利用できるように情報システムを構築した内容であり、優れた「製品」化研究と思います。でき上がった製品を「システム・オブ・システムズ」と表現しているように、さまざまな要素を統合して製品を組み上げた過程はSynthesiology誌にふさわしいものです。議論2 地球観測データの統合の重要性コメント(内藤 耕:産業技術総合研究所サービス工学研究センター)多くの読者にとって、地球観測データの統合の重要性は十分に理解されているとは限らないので、論文の最初に「はじめに」としてその点の記述をお願いします。東日本大地震においてもさまざまな科学的データが政策決定に使われなかったこともありました。回答(岩男 弘毅)「はじめに」の章を追記し、今回の東日本大地震に関連し、科学的データが政策決定に使われなかったことについて触れました。議論3 技術的な視点の追記コメント(内藤 耕)「構成的方法」で記述されている取り組みが今回の論文の最も重要なポイントと理解しています。原稿にはその内容の説明が書かれていますが、どのような取り組みによって、そして技術的な視点を含め何がポイントとなり、最終的な選定結果の国際合意に至ったのかを記述願います。回答(岩男 弘毅)ご指摘のとおり、「構成的方法」が最も重要なポイントになります。この取り組みにあたり、技術的に必要とされた要件を最初にまとめ、それらに対する取り組みを各要件に対応させて記述し、選定結果の合意につながるよう構成し直してみました。「構成的方法」についての修正に伴い、結果および考察につきましても対応がとりやすいように修正を行いました。議論4 シナリオの記述コメント(小野 晃)原稿では、著者がGEO事務局に入り、そこでフレームワークを与えられ、その中でシナリオを作成し、それを実施したという書きぶりになっています。Synthesiologyでは題材を著者が直接実施したことに限定せずに、GEO事務局やGEO自身が実施したことを含めて、より大きなシナリオを著者の視点から記述することができます。読者にとってはその方が全体を理解しやすく、有益と思います。回答(岩男 弘毅)全体のシナリオを説明するために新たに図3を追加し、この論文で内容を説明しました。議論5 他分野におけるデータベースの統合との比較質問(小野 晃)この論文の主旨は、いろいろな主体が別々の基準で構築した複数のデータベースを、ユーザーがあたかも一つのデータベースを使っているのと同じような感覚で統合的に利用できるようなシステムを作ったと理解してよいでしょうか。複数のデータベースの統合的な利用への要請は、地球観測分野以外でも多く見られることと思います。そこで、他分野と比較して、地球観測分野に特徴的な課題や解決の方法があるようでしたら著者の見解を伺いたいと思います。回答(岩男 弘毅)ご指摘のとおり、今回の論文の主旨は、複数の機関が運用するデータベースを連携させた共通システムの構築を行い、統合的に利用できるようなシステムを実現したことです。他分野との比較ですが、現存する複数のデータベースの統合の例として、産総研プレス記事「4省の生命科学系データベース合同ポータルサイトintegbio.jpを開設」と比較してみたいと思います(2011年12月12日発表 http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111212/pr20111212.html)。この記事では、生命科学系データベースの統合を「カタログ、横断検索、アーカイブ、再構築」の4ステップで実現するとあります。地球観測分野で今回実現を目指したのは主にカタログと横断検索です。カタログ(データベース単位のリンク集)が今回紹介したレジストリに相当すると思います。また、横断検索機能(複数のデータベースの中身を一括してキーワード検索する)は、クリアリングハウスに相当すると思います。このように異なる分野においてもデータベースの統合のステップには類似性が見られます。一方で、生命科学分野のデータベース統合における第3ステップであるアーカイブ(データベースのフォーマットの統一と権利関係の整理)は多少違いが見られると思われます。地球観測分野においてはデータベースのフォーマットを統一するよりも、その違いをクリアリングハウス側で吸収しようとしています。その際、およそすべての地球観測データは時間・位置情報を含む点で、検索条件を限定できることが特徴的と思われます。地球観測データの権利関係の整理は重要課題として位置付けています。専門家委員会を総会の下に設置し、データ共有原則(地球観測データの共有化を促進)をまとめています。しかし、現状は、積極的にすべてのデータを公開すべき(フリー&オープン)という流れと、権利関係を尊重すべきという考えがあり、権利関係を尊重する考えの方が支配的で、現状の権利関係の整理も体系的には十分進んでいません。データのフリー&オープンを推進しているのは米国で、例えばランドサットという地球観測衛星データの完全無償化表明を皮切りに、積極的に地球観測データを無償公開しています(LANDSAT DATA DISTRIBUTION POLICY: http://landsat.usgs.gov/documents/Landsat_Data_Policy.pdf)。地球観測に関する政府間会合でもこのような流れを受けて、フリー&オープン化が可能なデータをGEOSS Data-COREと命名し、加盟国・加盟機関にデータ提供を呼びかけていますので、今後、権利関係の整理(積極的な無償化)もある程度進むことが期待されます。ただし、個別の研究者が行う現地観測データから各国の衛星画像まで、データの種類や権利関係が多種多様で整理にはまだ時間がかかるものと思われます。第4ステップの再構築(横断検索よりもさらに高度な検索)に関連する活動としては、この論文では紹介しませんでしたが、対象とした9つの社会便益分野で利用されている用語の整理と意味付け(オントロジー)を行っており、生命科学系データベースの統合における再構築に準ずる効果が期待できるのではと思われます。また、地球観測では、データだけでなくサービスも連携を目指しており、例えばモデルウェブという活動に見られるように、複数のモデルを結合し、新たな目的に利用するといった活動も進んでいます(http://www.uncertweb.org/)。

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