Vol.5 No.2 2012
75/76
編集 シンセシオロジー編集委員会発行 独立行政法人 産業技術総合研究所Synthesiology 5巻2号 2012年5月 発行委員長:一村 信吾副委員長:小林 直人、瀬戸 政宏幹事(編集及び査読):赤松 幹之、田中 充、立石 裕、長谷川 裕夫幹事(普及):内藤 耕幹事(出版):多屋 秀人委員:事務局:独立行政法人 産業技術総合研究所 広報部広報制作室内 シンセシオロジー編集委員会事務局問い合わせ シンセシオロジー編集委員会 〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2 産業技術総合研究所広報部広報制作室内 TEL:029-862-6217 FAX:029-862-6212 E-mail: ホームページ http://www.aist.go.jp/synthesiology●本誌掲載記事の無断転載を禁じます。シンセシオロジー編集委員会−151−赤穂 博司、阿部 修治、五十嵐 一男、一條 久夫、上田 完次、餌取 章男、大蒔 和仁、大和田野 芳郎、岡路 正博、小野 晃、景山 晃、久保 泰、坂上 勝彦、清水 敏美、千葉 光一、佃 栄吉、富樫 茂子、中島 秀之、中村 和憲、馬場 靖憲、濱 純、原田 晃、檜野 良穂、松木 則夫、水野 光一、三石 安、村山 宣光、持丸 正明、矢部 彰、吉川 弘之編集後記シンセシオロジー(構成学)を創刊してから5年目に入りました。この論文誌は、学界や産業界の研究開発が個別要素技術の細部を追求する傾向が強まっているという認識から、社会に一石を投じる狙いで創刊したものです。科学や要素技術開発の分析的な進め方とは異なり、シンセシオロジーは複数の要素技術を統合的にまとめること、あるいは、課題解決のために要素技術を確立する際に複数の方法や研究アプローチを検討するプロセスを経て行われる技術開発について論述した論文を対象としています。これは、社会が期待しているソリューション提供型の研究開発の方法論(Methodology)と位置付けることもでき、結果として顧客・社会に対してより満足度が高いハード、ソフトさらにはサービスを提供するための思考パターンを意識させるものでもあります。昨今の米国Apple社によるiPadの大ヒットや、1990年代に米国IBMが進めたメインフレームやパソコンからICTを用いたソリューション提供型企業への転進等をみると、読者諸兄もシンセシオロジー的な発想の重要性にお気づきのことと愚考します。筆者は民間企業と産総研での研究開発の現場を経験していますが、このような発想を積極的に取り入れ、統合的な、あるいは構成的な観点から技術開発・新製品開発に取り組むセンスは産業界の方が優れているのではないかと思います。したがいまして、企業の皆様には積極的に論文を出していただき、大学や公的研究機関がシンセシオロジー的な発想を具体的に考えるきっかけとなることを期待しています。この号において「鉄鋼厚板製造プロセスにおける一貫最適化に向けて」は鉄鋼企業においてリーン(プル)生産モデルとプッシュ型生産モデルの狭間で生じる本質的乖離ともいえる難題に対して、技術グループが現場に入り込むことでマルチスケール階層モデルを開発し、その実用価値を検証しています。「サンゴ骨格分析による過去の気候変還の復元」では地球温暖化という21世紀の課題に対してサンゴを対象とした地球化学的アプローチに生物学的アプローチを取り入れ、現場の事象に迫ろうとしており、今後の展開が期待されます。また、「ロボット技術を用いたスピニング加工(へら絞り)」ではブリコラージュの概念と三現主義とを研究開発の構想作りの段階から積極的に取り入れており、イノベーションの方法論として提唱されているリニアモデルから連鎖モデルないしはコンカレントモデルへの転換を具体的に実行しています。これらに共通する研究方法論は、意識的に異なる領域の知見、技術を組み合わせて本質に迫ろうとする点にあり、シンセシオロジーそのものといえます。この号の論文はシンセシオロジーの概念を実践した事例ですが、定型化された方法論を用いているわけではなく、各課題に適合する最適と思われる方法論を筆者が創り出している点が大きな特徴です。5巻2号にいたるまでの80報を超える各論文がきっかけとなり、大学、公的研究機関、民間企業の各界でシンセシオロジー的な構想やデータ整理に基づく新しいジャンルが広がっていくことを期待するものです。(編集委員 景山 晃)
元のページ