Vol.5 No.2 2012
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−140−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)座談会:科学技術政策と構成学、その具体化と価値への“つながり”工学部の教育を論文至上主義から価値至上主義へ小林 本来、工学は、社会の役に立つものをつくること、だったと思うのです。ところが、工学も科学になってしまって、どんどんアナリティックな方に行っています。一つの例ですが、大学で建築学科がありますけれども、論文をたくさん書いている先生より、よい建築作品を残せる人の方が評価が高いのですが、それだけではいわゆるディシプリンから言うとなかなか難しい。我々は、それ自体を成果としてちゃんと出せるような論文誌をつくろうということで始めたのです。有本 今、小林先生がおっしゃったことはとても大事で、これは吉川先生が最近提唱されていますけれども、工学部の教育、訓練の方法を変えないといけないということで、「論文至上主義から価値至上主義に行く」ということです。そのためには工学部のカリキュラムを変えることが必要ではないかと。JABEEが2005年にワシントンアコードに加盟するとき、日本に国際調査団が審査に来て、その報告書にはっきり書いてあるので私はびっくりしました。「日本の工学教育はおかしい。システムやデザインを教えていない。トレーニングしていない」とあるのです。明治の初めの工部大学校のときには基礎、実学、訓練と世界に冠たるサンドイッチ方式の工学教育をやったのに。その一つの大きな要因は、あまりにみんなが隘路に入ってしまって、ディシプリンベースになっていて、市民が欲していること、あるいは政策が欲しているオーバーオールな、それこそシンセサイズされた政策提言なり、あるいはシンセサイズされた知識や技術、例えば、福島は今後どうなっていくのだ、というようなことを科学的知識をベースにほとんど語れないということでもあると思うのです。去年の3月11日以来の日本の科学者、技術者、その集団の世の中に対する対応、あるいは政策に対する対応は、あまりにも社会からの期待とはかけ離れている。市民には、それが見えているわけです。科学不信が拡大しています。これは何とかしなければいけない。小林 我々科学者が何かできるのか、そして『シンセシオロジー』はどんな貢献ができるのかを含め、これからも考えていきたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。この座談会は、2012年2月27日に東京都千代田区にある(独)科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)において行われました。略歴有本 建男(ありもと たてお)1974年京都大学大学院理学研究科修士課程修了、科学技術庁入庁。内閣府大臣官房審議官(科学技術政策担当)、文部科学省科学技術・学術政策局長等を経て、2006年から(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センターセンター長、研究開発戦略センター副センター長を兼務。政策研究大学院大学、同志社大学、早稲田大学、東京理科大学客員教授。著書に「グリーン・ニューデール-オバマ大統領の科学技術政策と日本」(共著、丸善プラネット、2009)、「科学技術庁政策史-その成立と発展」(共著、科学新聞社、2009)等。

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