Vol.5 No.2 2012
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−138−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)座談会:科学技術政策と構成学、その具体化と価値への“つながり”ない」と述べています。これは大変印象に残る発言でした。欧米のSciSIP関連の大学のプログラムを見ても、さまざまなものがあり、まだ日本が努力して国際的に通用するプログラムを作る余地は十分あると見ています。社会技術研究開発センターの活動とシンセシオロジー小林 社会技術研究開発センター(RISTEX)では、サイエンス・フォー・サイエンスイノベーションのためのファンディングなり、あるいはプログラム・フォーメーションを実際にやっておられると思うのですが、そのあたりの状況を教えていただけますか。有本 RISTEXの理念的基礎はブダペスト宣言(21世紀の科学の責務:「知識のための科学」に加えて「平和のための科学」、「技術的発展のための科学」、「社会における、社会のための科学」)です。この宣言を基に、2000年に「社会技術の研究開発の進め方に関する研究会」(吉川弘之座長)は「社会の問題の解決を目指す技術」「自然科学と人文・社会科学との融合による技術」「市場メカニズムが作用しにくい技術」の3つの意見を提言しました。それを受けて社会技術研究システムが設置され、2005年に社会技術研究開発センターに組織・名称が改組されました。実は、最初の5年間は方法論が未成熟であった通常の研究助成でやっていたので、論文は出るけれども、社会問題の解決という当初目的と違うのではないかとのきびしい批判が出ました。そこで、5年前から領域設定の仕組みも変える、審査の基準も変える、それからマネジメントのやり方、評価のやり方も変えるということでやってきました。今はやっとこうした方法がかなり成熟してきたと思います。小林 RISTEXの研究プロジェクトは全国で展開しているようですが、興味深い例を挙げていただけますか。有本 例えば、平成19年度採択の「子どもの被害の測定と防犯活動の実証的基盤の確立」は代表者が科学警察研究所の部長さんなのですが、「子どもへの犯罪防止は科学的データはないし、ケースが積み上がって進化するようになっていない。昔ながらの刑事の“足で稼いで、勘でやる”、これを科学的にやりたい」ということで、地域に協力していただいて、データを集めて、危険な箇所等がわかってきました。昨年、国際犯罪学会が神戸で開かれたのですが、事例発表をしてとても反響を呼びました。もう一つ、これは公募でないと取り上げられなかったと思うのは、20年度に採択された「犯罪から子どもを守る司法面接法の開発と訓練」です。代表者が北海道大学の心理学の先生ですが、子どもが犯罪に遭ったときに、最初に誰が子どもからその状況を聞くか。例えば、こわもての警察官が聞いたり、どういう手法で聞くかということで、子どもが真実をしゃべらない、あるいは恐れてあまり言わなくなる。そこで児童相談所と組んで、手法の開発や地域の児童相談所の人たちへ訓練することをしました。この方法が今は全国に広がり始めています。これは良かったですね。他に、「地域に開かれたゲノム疫学研究のためのながはまルール」は代表者が長浜市の職員の方です。長浜市に大学から、市民層をゲノムの疫学研究の対象としたいという提案があったようなのですが、委員会をつくって大学側の研究者と市、それから仲介者が議論して、条例ができました。これを持続して実施するためにNPOをつくろうということになった。このように、一つ一つにストーリーがあるのです。“物語性”をどうやって一般化するかが大事だと言われますが、自分がやってみて、しみじみそう思います。抽象化するには多くの事例と科学的方法が要るのですが、まず一つ一つの事例の現場の実情をよく知り把握することが大切です。シンセシオロジーが目指す社会における研究成果活用との接点赤松 問題を探索・抽出し、研究開発を進め、プロトタイプまでつくる。小さく、あるところでやるというところまでは、大変でしょうけれども、たぶんできる。では、それを今度は社会実装していくためには、たぶん3年ではできなくて5年くらいかかるでしょう。できて、見せることができると、「良かったね」というふうになって次のステップが上がっていく。そこの“からくり”がどうしても必要になってくると思うのです。有本 おっしゃるとおりです。あるところでやったものを他のところで展開するということは、同じようなサイズの地域ぐらいだったらできるでしょう。それを広域まで広げるということは、どうやっていいか一つの試金石になるかなと思ったのは、吉川弘之先生が言われていたのですが、3.11の震災後、多くの若い研究者やポスドクを震災地に派遣するようなフェローシップ体制をつくると、新しい発想が出てくるのではないかと。これ、大切な示唆と思っています。小林 プロトタイプを社会に実際に適用するためには、これらをいかに学として表現するか、という取り組みが必要になります。『シンセシオロジー』はそこから出発したところがありまして、吉川先生が産総研に来られて、第1種基礎研究、第2種基礎研究、製品化研究をコヒーレントに

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