Vol.5 No.2 2012
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−137−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)座談会:科学技術政策と構成学、その具体化と価値への“つながり”シックですが、フラウン・ホーファー(協会)の取り組みはイノベーションシステムとして興味深いですね。将来の科学技術へのファンディング戦略小林 「ファンディングが大切」とおっしゃったのは、我々のようにファンディングに応募する側からいうと全くそのとおりで、マッチしたプロポーザルを作って、その中でいいものが通るわけですから、ファンディングをいかに戦略的に作るか、ということが政策にとって重要だということになりますね。赤松 ファンディングの重要性とともに忘れてはならないのは、誰が、どのようにプロポーザルをレビューするのか、ということだと思うのです。つまり、「アナリシスではないレビューは可能なのだろうか」ということを小林さんとよく議論しているのですが、ファンディングに採択されるためにいい点をとろうとすると、アナリシスに耐えられるような内容になりがちになります。有本 そこはファンディングをデザインするときの目標にはっきり入れないといけないでしょうね。ピアレビューだけで選べば、保守的になりがちですが、アメリカではプログラムオフィサー(PO)・プログラムディレクター(PD)が10年後のその分野の発展方向への洞察をもとにある程度の裁量権をもっています。先進国にこのような危機感があるのは、各国とも今後、財政悪化に陥る中で研究開発費はほとんど伸びない、あるいは減少する中で、効果的にファンドを使って成果を出していくためには今のシステムを変え、人材確保を維持しなければいけない、という状況に直面しているからです。その危機感が私は日本にあまり共有されていないと思います。小林 アメリカの場合、NSFやNIHでPD・POは専門的に育っていると聞いています。しかし、日本はそういう人達を育てるシステムがなかったような気がするのです。1970年~80年代の日本が右肩上がりの頃は、その役割は科学技術庁や通産省の技術系の役人がやっていたのでしょうか。有本 かなり大きいプロジェクトはやっていたのだと思います。役人が1~2数年で担当を変わってもそれができたのは、キャッチアップでモデルがあったからでしょう。まねすれば良かったわけですから。しかし、日本の位置が変わって、今は専門家がやらなければだめです。そういうプロフェッショナル集団を日本はリスペクトしてこなかった、あるいは人材育成しなかったことが、大きな転換期の今、深刻になっているのだと思います。日本では、研究をする人とお金を配る人、大学においても教官と管理する人に二分化しており、両方を“つなぐ”人、媒介する者が、気付いてみたらほとんど育っていなかった。サイエンスコミュニケーターも含めて、そういう方々が職業として安定的に仕事ができるような仕組みになっていないですね。小林 日本でも新たな政策形成プロセスの構築に向けて「科学技術イノベーション政策のための科学」を担う政策担当者および研究者の育成が大切であると言われています。有本 日本も今まで科学技術の政策づくりを総合科学技術会議を中心にやってきましたが、エビデンスベースといえるか最終的に政治家が決めるのだけれども、いろんな政策的分析を統合して、ポリシーデザインして、政策のオルタナティブを出していくところのプロセス、それから“人”あるいは“方法論”をしっかりすることが、これから大事と思います。小林 アメリカではNSFがSciSIP(Science of Science and Innovation Policy)を助成する等していますが、アメリカはその面はやはり進んでいるのでしょうか。有本 アメリカも悩みを抱えているようです。Science of Science Policyのファンドを作って5年になるのですが、アナリティカルな経済学的手法にずっと予算がいってしまって、これはまずいという反省がだいぶあるようです。2012年のAAAS年次総会で日本のSciSIPを紹介した際、科学技術政策の重鎮Lewis Branscomb(元ハーバード大学教授)が「ハーバード大学行政大学院では、政策分析(policy analysis)と政策設計(policy design)のバランスをとることを主張してきたが、いまだにanalysisが多く決着してい小林 直人 氏
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