Vol.5 No.2 2012
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−136−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)座談会:科学技術政策と構成学、その具体化と価値への“つながり”赤松 幹之 氏有本 建男 氏有本 いや、日本ほどではありませんが、各国ともに科学技術政策から科学技術イノベーション政策に思い切りウィングが広がっていますし、目指す価値が多様化する中でそのためのファンディング・マネジメントやレビュー、人の養成の仕方等、特に先進国は悩みながら今新しいシステムを作ろうとしています。どのように自分達の競争力を保持できるが、あるいは一般市民の生活の質を維持するための科学技術を持続的に発展させるかという視点が重要です。強調したいのは、ファンディングが大変重要な役割を果たすことです。ファンディングというのは、もともと1930年くらいからグラントやコントラクトの制度が開発され、研究所や大学の境界を破って、研究者・技術者を集めて、研究や技術的問題を解いていく仕組みを整備し成熟していったのですが、今、この原点に戻って新しいモデルを作る必要があると考えて思います。小林 1930年代のお話がありましたが、アメリカはマンハッタン計画で「科学者を国家的に動員してやるとすごいことができる」ということを経験して、それが戦後、DARPA 型という一つのモデルになったと思いますが、今また課題解決のために科学者は垣根を越えて協力すべきだ、という方向へドライブしようとしているということでしょうか。有本 そのとおりです。今、各国でファンディングの仕組みを変えようとしています。上流側はかなり成熟していますが、下流側のバリューに向けての仕組みがとても弱い。アメリカはDARPA型の仕組みをいろいろな役所でつくろうとしていますが、エネルギー省におけるARPA-E(先端研究プロジェクト庁)の設置もその一例です。各国の例を少し申し上げますと、フランスは数年前、ANR(フランス国立研究機構)という競争的資金のファンドができて、けっこう大きな金額になっています。スウェーデンもVINOVVA(イノベーションシステム開発庁)をつくりましたし、イギリスは古典的にリサーチ・カウンシルが強いですし、ドイツはマックス・プランク(学術振興協会)はベー有本 一般論ですが、この間論文はたくさん生産されたと思います。ご指摘の“つながり”という意味は、最後の価値の創造に向かってきちんと動いているか、ということだと思うのですが、そこは決してうまくいっていないと私は思います。それは総合的問題で、科学コミュニティー、ファンディング、ポリシー、それから企業の責任もあるでしょうし、人の能力や意識、教育、将来のキャリアアップの道があるのか、にもつながるでしょう。赤松 Synthesiologyは構成・統合のSynthesisと学の-ologyをつなげた造語なのですが、“つなぐ“ということが一つのキーワードかもしれません。研究者は、これまで優れた研究成果を出せばいいと考えがちでしたが、その研究成果を社会の価値として“つなげる”ことが大切です。どのようなアプローチをとればその研究成果を社会で活かすことができるかというシステムづくりを考えること、そしてそのシステムの中で動く「人」を育てることが必要だと思うのです。有本 多様性をもって裾野を広くサポートしているか、あるいはそれを審査した上で研究の段階に応じたサポートをしているかについては、大学の研究・教育、それから各ファンディングプログラムについて、役割、構造を共有することが大切です。基礎科学のフェーズ、キュリオシティ・ドリブン・フェーズがあり、それからミッションオリエンティッド基礎、さらに応用・プロトタイプ開発の段階がある。ファンディングの規模の大きさもステージに応じて異なる。こうしたイノベーションのプロセスや構造が科学者・技術者、行政・政治の中で共有されていないと思います。諸外国の科学技術政策・推進活動の動向小林 イノベーションの推進に向けたシステムあるいは構造が、日本の中で理解されていないというお話でしたが、これは日本に限ったことでしょうか。海外の状況についてはいかがですか。
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