Vol.5 No.2 2012
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研究論文:ロボット技術を用いたスピニング加工(へら絞り)(荒井)−134−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)執筆者略歴荒井 裕彦(あらい ひろひこ)1982年東京大学工学部卒業。同年本田技研工業㈱勤務。1984年通産省工技院機械技術研究所入所。2001年産業技術総合研究所知能システム研究部門技能・力学研究グループ長。2003年同部門副部門長付主任研究員。2009年先進製造プロセス研究部門難加工材成形研究グループ主任研究員。2005年より筑波大学大学院システム情報工学研究科教授(連携大学院)兼任。博士(工学)。日本機械学会フェロー、日本ロボット学会フェロー。日本塑性加工学会、IEEEの会員。この研究では着想から装置開発、加工実験、営業活動までを担当。査読者との議論議論1 第4章の構成質問(長谷川 裕夫:産業技術総合研究所つくばセンター)研究の成果をまとめた第4章の部分は、ロボットアーム適用の挫折から、熟練技能の代替というロボットの発想ではなく高度な道具を目指し、加工機の改良のアプローチによる成功、さらに高付加価値製品製造を可能とする力制御スピニングの開発に至る、この論文における独自の研究開発の流れが明確になるよう構成してください。回答(荒井 裕彦)第4章をいくつかの節に分割してタイトルを付け、ある程度のまとまり毎に意味を与えました。第4章で最も言いたいことは、「研究が進展する経過をたどると、一貫したシナリオはなく、外部要因や偶然要因によって研究目標が大きく変遷している」という点でした。それがこの研究でとったボトムアップで探索的なアプローチと密接に関連しています。そこで、研究開発の過程でいくつかの事柄が複線的に流れながらいろいろな事象がランダムに起きて、そのつど臨機応変に対応していくという、混沌とした研究経過の現実の姿をなるべく反映させるような記述を採りました。議論2 第5章の構成質問(長谷川 裕夫)第5章は、第3章で述べた行動原理の具体的な記述となっています。ブリコラージュ、三現主義、営業マインドの3つの原理に対応させて、節とそのタイトルを構成してください。また、研究開発におけるブリコラージュの部分では、理解を助けるための図がある方がよいと思われます。よる長尺物の協調運搬(仮想非ホロノミック拘束による水平面内の制御手法), 日本機械学会論文集C編, 66 (648), 2677-2684 (2000).荒井裕彦, 舘暲: 直接駆動マニピュレータの人力操作における操作力検出と能動的力補助, 日本ロボット学会誌, 4 (3), 209-219, (1986).荒井裕彦: スピニング加工・へら絞りリンク集 (2003).http://staff.aist.go.jp/h.arai/splink_j.html[20][21]回答(荒井 裕彦)第5章の各節のタイトルを、「5.1 ブリコラージュによる構成 - ボトムアップの要素技術統合」、「5.2 試作トライによる加工ノウハウの蓄積 - 現場・現物・現実に近づきたい」、「5.3 営業活動と研究活動の融合」として、第3章で述べた行動原理のそれぞれが第5章の活動のどこに現れているかが明確になるように構成しました。また、ブリコラージュによる構成の説明用として「要素技術の階層構造」を示す図を追加しました。議論3 この開発技術の達成レベル、ブレークスルー質問(松木 則夫:産業技術総合研究所四国センター)第1章の開発技術の概要において、達成された技術レベルの自己評価をしてください。開発された技術が、例えばこれまでの熟練者によるヘラ絞り加工等と比較してどうなのか、精度、加工速度、制限事項等の項目について検討をお願いします。また、今回開発された技術しかできないブレークスルーがあれば、記述してください。回答(荒井 裕彦)第1章に、「これらにより、これまでの丸物用のスピニング加工機ではもちろん、熟練者によるへら絞りでも不可能だった異形形状の成形に対応できるようになった」という記述を追加し、この開発技術がこれまでの加工技術にない優位性をもつことを明らかにしました。この開発技術で一番のブレークスルーと考えられる異形成形に関しては、スピニングという同じ土俵の上では直接比較する対象がありません。プレス加工との比較として、「現状では1個あたりの加工時間が数十秒~数分程度かかるため大量生産にはやや不向きだが、」という表現を追加しました。議論4 ブレークスルーを生み出した研究開発の流れ質問(松木 則夫)この開発技術のブレークスルーや特徴的な技術が、どのような研究スタイル、行動原理により得られたのか、という視点で、第3章、5章を対比する形で記述していただくと分かりやすくなると思います。同様に、第4章では、新たに達成された技術がどうして起こったのか、という視点を強調していただきたいと思います。回答(荒井 裕彦)第3章、第5章の活動は、第1章に述べたブレークスルーを得るためというよりも、ブレークスルーを現実解に落とし込んで、使ってもらえる形にするための努力のほうにウエートを置いています。第3章で述べた行動原理のそれぞれが第5章の活動のどこに現れているかが明確になるように第5章の各節のタイトルを修正しました。第4章では、「研究が進展する経過をたどると一貫したシナリオはなく、外部要因や偶然要因によって研究目標が大きく変遷している」という点を最も述べたかったため、いくつかの事柄が複線的に流れながらいろいろな事象がランダムに起きて、そのつど臨機応変に対応していくという、混沌とした研究経過の現実の姿をなるべく反映させるような記述を意図的に選びました。新たに達成された技術が得られた要因は、むしろ第6章で述べた「専門分野のはざまで見落とされたニッチ領域を発見できた」ということが最も大きいと思われますので、その部分の記述を強調しました。
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