Vol.5 No.2 2012
51/76
研究論文:ロボット技術を用いたスピニング加工(へら絞り)(荒井)−127−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)く、立ち上げも速くなる。現状では1個あたりの加工時間が数十秒~数分程度かかるため、大量生産にはやや不向きだが、小ロットの多品種少量生産、単品の特注品や製品開発における試作等に威力を発揮することが期待できる。異形形状を成形するには「力制御スピニング」「同期スピニング」という二つの方法を用いている。これらにより、これまでの丸物用のスピニング加工機ではもちろん、熟練者によるへら絞りでも不可能だった異形形状の成形に対応できるようになった。力制御スピニング[3]では、作りたい形状と同じ異形形状の金型を用い、加工ローラーを力制御して成形を行う。ローラーの押し付け力を適切な値に保つように制御し、回転する金型に素材を押し付ける。一方、金型の回転軸と平行な方向には、ローラーを一定速度で送り制御する。ローラーは金型形状に倣って動き、素材を型に密着させる。その結果、金型と同じ異形形状の製品を作ることができる(図2)。初めは図3のような加工機を実験に用い、ローラーをボールネジで駆動していたが、異形形状を成形する場合、金型の表面形状に合わせてローラーを半径方向にとても速く往復させる必要がある。そこで、ローラーをリニアモーターによって直接駆動する新たなスピニング加工機(図4)を試作した[4]。力制御の応答性が高く、ローラーが金型の形状にすばやく追従するので、成形時間を大幅に短縮できる。また、力センサーを用いない開ループ力制御でも異形断面形状が成形できる。同期スピニング[5]では、加工ローラーをワークの回転角と同期して数値制御する(図5)。そのため回転角が制御できるサーボモーターによって主軸を駆動する。ワークの回転角に応じて加工ローラーを半径方向に前進/後退させ、ローラーとワークの接触点の軌跡が作りたい断面形状を描くようにローラーを動かす。一方、主軸方向に沿って断面形状を変化させ、ワーク全体を所定の形状に成形する。この方法では金型を用いずに異形断面形状を成形することもできる。成形後の型の取り出しが困難な異形断面管を中空のまま成形する際等に、特に有効である。同期スピニングによるパイプ加工に適した2ローラーの加工機(図6)も試作した。さらに、スピニング加工機の専門メーカーである株式会社大東スピニングとともに、異形形状に対応した実用的なスピニング加工機のプロトタイプ(図7、表1)を共同開発した[6]。上記の力制御スピニングと同期スピニングの両方が、この機械で実行可能である。推力増加と摩擦力低減を両立させた吸引力相殺型リニアモーターを採用し、ワーク直径400 mm、厚さ2 mmの鋼板まで成形できる。この機械は押し付け力制御送り速度制御主軸回転加工ローラ素材金型ボールねじ素材減速機モータモータモータy軸x軸力覚センサローラ金型 目標断面形状変位半径方向加工ローラ主軸回転素材断面形状往復運動x 図2 力制御スピニングによる異形形状の成形図3 スピニング加工実験装置図4 リニアモーター駆動スピニング加工機(実験機)と成形例http://staff.aist.go.jp/h.arai/linspin_j.html図5 同期スピニングによる異形形状の成形
元のページ