Vol.5 No.2 2012
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研究論文:災害救助支援のための情報共有プラットフォーム(野田)−124−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)執筆者略歴野田 五十樹(のだ いつき)1992年京都大学大学院工学研究科修了、通商産業省工業技術院電子技術総合研究所に入所後、改組を経て現在、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターサービス設計支援技術研究チーム長。筑波大学大学院および東京工業大学大学院の連携講座教授を兼務。博士(工学)。マルチエージェント社会シミュレーション、災害情報システム、機械学習の研究に従事。人工知能学会、情報処理学会会員。人工知能学会、RoboCup Federationa、ロボカップ日本委員会、防災推進機構 理事。査読者との議論議論1 シンセシオロジー論文としての主張点の整理コメント(中島 秀之:公立はこだて未来大学)データ仲介によるシステム連携によって実現された災害情報システムについての論文であり、さまざまな、あるいは将来の情報システムを連携させようという、事前にすべてを規定できない開いた系を対象としたシステムを構成(シンセシス)することを目的としたもので、シンセシオロジーの論文として、とてもふさわしい論文です。 シンセシオロジーの編集方針として、こういった開いた系に対するシステム構築における基本方針が明確に述べられていることを期待していますが、実際に本文中にそういった基本方針が書かれています。ただ、個々の記述については良く理解できるのですが、全体としての考え方が読者に分かるような工夫があるとよいと思います。特に、「構成的手法」をもう少し強調していただき、サービス工学としての手法を中心に据えた記述が望まれます。第1章において、「オープンシステム、標準、ダウンワードスケーラビリティ」の3点が設計の基本方針として掲げられています。一方、2.1節および3章においてデータ中心(あるいはデータ仲介連携)の考え方、2.3節では、設計・実装方針として、1)ダウンワードスケーラビリティとマルチプラットフォーム、2)既存ソフトウエアの利活用とオープンソース化の2点が掲げられています。これらの対応関係が必ずしも明確ではないようです。図あるいは表で全体的な考え方を整理して、それに則って記述をしたらさらに分かり易くなると思います。一案ですが、災害情報システムが備えるべき特徴を掲げて、それからトップダウン的に必要要件を位置付け、それに対応して実装した機能を位置付けることができると思います。以下のような理解で良いでしょうか?災害情報の特性・さまざまな組織(あるいは個人も?)がいろいろな規模の災害情報システムを運用・災害と情報技術の時間スケールの違い・災害対策は頻繁に修正、場合によっては大幅修正が必要これらの目的を満たす連携プラットフォームとして、データ仲介によるシステム連携が好適である。それを実現するための要件を整理すると・新規の連携接続を簡単にするため・汎用性の確保:汎用的な入力形式、汎用的な出力、共通的構造等・新規連携のための作業を簡便に・計算機能力を問わないで済むためがある。これに対して、実装したときのポイントとなった機能としては、・データを介したモジュール連携:各種災害情報システムを連携させるため・データ構造定義機能:新規モジュール追加時にリアルタイムに新規データ型のテスト・修正ができる・MISPの基本機能に標準を採用:既存システム、将来システムとの親和性を高める。簡潔であり計算能力のないセンサーシステムでも扱える・XMLの採用:汎用性、柔軟性、拡張性・要求動作環境を低く:大型サーバーが機能しないことも想定して、小型端末でも動作可能・オープンソース化:情報共有枠組確立と普及の円滑化・MISPのみに限定せずに部分的にでも連携できるためのツール群★CSV接続ツール:表計算ソフトウエアの汎用データ形式がシステムで広くサポートされている★GISビュワー連携ツール:GoogleEarth等のGISビュワーに表示するツール★ログ再生ツール:各モジュールの共有情報の変化を時間軸を含めて再現するツール。連携調整を簡便に。等がある。これらの機能と上記要件とをマトリックス的に関係付けた表あるいは図等を追記していただくと、研究目標に対するシンセシスの考え方(研究のシナリオ)が明確になり、シンセシオロジー論文として有益な情報を読者に提供できると思います。回答(野田 五十樹)有益なご指摘、ありがとうございます。ご指摘のとおり、論文全体の流れとキーワードの関係が分かりにくくなっておりました。それを補うために、第1節を大幅に加筆しました。また、キーワードの関係を示す図も挿入いたしました。議論2 タイトルコメント2(赤松 幹之:産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門)上記の主張点が分かるようなタイトルとサブタイトルを付けてください。例えば「災害情報システム連携のためのプラットフォームの構成−データ仲介による長期にわたって変化するさまざまな情報システムの連携−」。主張点と合わせてご検討ください。また、第3章の節タイトルについても、論文としての主張点が明確になるようにご検討ください。回答(野田 五十樹)タイトルについては、提案する技術である「プラットフォーム」を入れることとしました。また、3章の節タイトルについても、第1節で取り上げたキーワードを用いて、対応関係が分かるようにしました。並行して、図1のキーワード関連図でも、節番号を付与しました。議論3 DaRuMa質問(赤松 幹之)図7を見るとDaRuMaが新潟県と見附市向けの二つがつくられたようですが、二つないとうまく運用できなかったのでしょうか? 二つのDaRuMaを導入した理由があれば記載してください。回答(野田 五十樹)見附市の実験当時は、DaRuMa にアクセス制御機能がなかったため、DaRuMa へアクセスできるシステムには全情報が参照できてしまうようになっていました。このため、市役所庁内で閉じておくべき情報はDaRuMa に載せられず、庁内での情報共有が進まないという問題が生じました。これを避けるため、内部用のDaRuMa と外部用の DaRuMa に分け、その間にフィルター機能のあるミラーリングツールを用意し、公開してもよい情報のみ外部用DaRuMa に反映される仕組みを用意しました。その後、DaRuMa(およびMISP)にはアクセス制御機能を設けたため、現状ではこのような仕組みは必要なくなりましたが、論文では実験当時のシステムの構成として、当時のままの
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