Vol.5 No.2 2012
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研究論文:災害救助支援のための情報共有プラットフォーム(野田)−122−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)の形をとっていたおかげで試行錯誤が手早く簡潔に行え、発災後3日目には情報提供に漕ぎ着けることができた。なお、後で述べるように、この通行実績情報は処理方法として確立できたため、東日本大震災ではHONDAから直接一般に提供されることになり、その後、TOYOTA、ITS Japanからの情報提供として広がっていった。さらには、2011年9月の台風による紀伊半島の水害においても、ITS Japanから同様の情報提供が行われ、災害情報の一つとして定着してきている。5 東日本大震災をふまえて2011年3月11日の東日本大震災では、多くの防災関係者が自らの無力さを思い知らされることとなった。この論文執筆時点での死者・行方不明者数は19,503人に上り、福島第一原子力発電所の事故も含めれば、経済的被害は今だ増え続けている。ただその中においても、少しでも被害を少なくする減災への取り組みの試行錯誤がさまざまな形で行われた。それを可能とした要因はさまざま考えられるが、この論文で提案したプラットフォームの設計方針、すなわち、オープンシステム、標準、ダウンワードスケーラブルの考え方は有効に働いたと考えることができる。この震災では、インターネットを介した情報ボランティアによる被災地支援が多く見られた。例えばGoogle等が中心となったPerson Finderでは、手書きの避難者名簿をデジカメで撮り、被災地外のボランティアがテキストデータとして打ち込み、データベースを作り上げた。この単純であるが効果的な方法は、クラウドコンピューティングや高速インターネット等の先端技術に支えられてはいるものの、機能としては単純なもの(デジカメによる撮影、人間による文字認識、データベースの検索)を、画像データやテキストデータで仲介したと見なせる。人間による処理のように時間的に遅れがあっても問題なく連携できているのも、機能ではなくデータで仲介している効果であると言える。4.3節で述べたように、「通れた道路マップ」(道路通行実績情報)も、HONDAやTOYOTA、ITS Japan等から大規模に展開されたが、今回はKMLという国際標準のフォーマットを用いて詳細データが公開された注6)。このため、このデータを用いたさまざまな情報統合の試みがなされた。例えば筆者らはこの通行実績情報を軽量化しつつ、ガソリンスタンド・道路通行止め情報等を統合した地図を作成して情報提供してきた(図12)[17]。また、PC等でしか参照できない通行実績情報を携帯電話等でも参照できる画像ファイルに直す取り組みをしていたボランティアも見られた。このようなさまざまな試みが同時並行で取り組めることは、防災における多種多様な要望に応える一つの解と考えられる。そしてそれを可能とする土台の一つが、汎用フォーマットによるデータを仲介することで処理を組み上げていく点にあることは、もっと注目されるべきであろう。このような草の根的システム開発や、改変・連携を中心としたアドホックなシステム構成は、人命を預かるという重い使命を担う災害対策では敬遠されがちである。しかし想定外を含めた事態への臨機応変な対応が求められることを考えると、このような緩いがしなやかな手法の併用も想定しておかなければならず、その準備として、オープンシステム・汎用フォーマット/プロトコル標準・ダウンワードスケーラビリ図12 東日本大震災で情報提供した通れたマップ

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