Vol.5 No.2 2012
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研究論文:災害救助支援のための情報共有プラットフォーム(野田)−121−Synthesiology Vol.5 No.2(2012)いる。このように、各種シミュレーションモジュールは、条件となる情報を情報共有データベースから取捨選択するだけでなく、シミュレーション結果を情報共有データベースに出力する。これによって、その結果を対策本部のシステム等で被害情報とともに確認したり、別のシミュレーションモジュールで利用することを用意に可能としている。このように通報や各種シミュレーションの連携を単なるデータ連携として扱うことで、確度の高い情報のみの分析や一般市民の通報やシミュレーションの予測を含む確度の低い情報を取り込んだ予測等、さまざまなレベルのシミュレーションを容易に実現できることを、この実験のシステムは示している。見附市実証実験と同様に実証実験後に市役所職員へ評価のための聞き取り調査を行った。その結果として、「被害想定、応急対応需要量、応急対応項目は災害対策本部または災害対策本部員会議で参加者全員が共通認識をもって初動に取り組む際に必要なものであると思われる」、「実験で提案された仕組みは行政機関等が行う情報収集と合わせ有効な手段となりうる」との評価を得た。4.3 通れた道路マップ大災害時における救助救援活動を円滑にするためには、救助隊や物資輸送隊が移動するための道路の情報、特に通行可能な道路の情報が必要となる。しかし、通常、自治体や警察が提供する道路情報は通行不能情報あるいは通行制限情報であることが多く、しかも情報として網羅できているわけではないため、救助隊、特に遠隔地からの救助隊にとって目的地までの経路を確実に見つけることは困難であることが多い。この問題を解決する方法として考え出されたのが、道路の通行実績情報である。これは、一般の自動車の走行データをもとに、発災後のある日、あるいはある時間帯に実際に利用された道路を抜き出し、地図データとして統合するものである。何台かの自動車が実際に走っていることから、少なくともその道路はある程度利用可能であることが期待できる。特に近年は通信機能を有するカーナビを搭載する自動車が増え、特定地域の道路をかなり網羅した通行実績を示せるようになってきている。また、走行実績の台数により道路を分類することも可能であり、基幹道路としての使用可能性を推定することもできる。産総研は、本田技研工業㈱(以下、HONDA)の協力のもと、東京大学の秦康則氏(現山梨大学)らと共同して、2007年7月の中越沖地震の際にこの通行実績情報を「通れた道路マップ」(図11)としてとりまとめ、Webにて情報提供を行った[16]。この「通れた道路マップ」では、次のような手順で各道路の通行実績情報を処理した。まずHONDAの通信カーナビゲーションシステムのセンターには、同サービスを受けている車輛の実走行経路データが集積されている。このデータの内、被災地域にかかっているものを1日分取りまとめ、個人情報の匿名化注5)・ハズレ値や誤差の除去・道路データとのマッチングを行った後、各道路の平均速度を求め、通行状況を3段階に分類する。その結果をGoogleEarth上で地図情報と重ね合わせて表示し、画像データとしてWeb上で公開した。この情報は1日ごとに更新され、日々、前日の通行実績を確認できるようにしてきた。この「通れた道路マップ」作成過程は、減災情報共有プラットフォーム上で実現され、各工程の途中経過はDaRuMa上に保存していた。この処理は発災後に試行錯誤しながら実現していったが、DaRuMa上のデータ仲介DaRuMa表示(GoogleEarth)ノイズ処理解析走行データ図11 中越沖地震で情報提供した通れた道路マップ
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